SecureNaviが目指す世界とは。「悲報をなくす」に込められたCEOの想い
「悲報をなくす」をビジョンに掲げて、文系の情報セキュリティ業界に変革をもたらすSecureNavi株式会社。
子どもの頃からコンピューターに慣れ親しみ、中学・高校生時代にはWebサービスを作っていたという同社CEOの井崎友博さん。
大学を卒業した後は、コンサルティング会社に就職。その後は、エンジニアとして転職し、働きながら会社を設立します。
そのビジョンと経営方針には、自身の想いと、これまでの経験が反映されていました。
井崎さんに創業経緯やビジョンに込めた想い、そして会社の今とこれからを語っていただきます。
▼プロフィール
神戸大学卒。セキュリティコンサルティング企業にて、大手から中小企業まで、数多くの情報セキュリティ体制構築プロジェクトを手掛ける。その後、テック系スタートアップ企業にて、Webエンジニアとしてプロダクト開発を行う傍ら、新規事業開発やアライアンスなどの幅広い業務を経験し、2020年にSecureNavi株式会社を創業。情報処理安全確保支援士。
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SecureNavi創業につながる原体験
ー井崎さんがパソコンに触れたのはいつ頃ですか。その頃の思い出を教えてください。
中学・高校生ぐらいの頃には、間違いなく周りの人よりもパソコンをいじくり回していました。居間に置いてあるパソコンを夜な夜な立ち上げて、プログラミングをしたり、ウェブサイトを作ったり、ときにはゲームをしたりして過ごしていた記憶があります。
残念ながら、私の周りにはパソコンやITに興味がある人が多くなかったので、ひたすら1人で没頭していました。私がパソコンに関心をもったのは、周りから影響されたわけでもなく、偶発的な事象だったのかなと思っています。
ー高校生の頃にはWebサイトをつくっていたそうですが、反響があったサービスはありますか。また、パソコンで何かをつくることは井崎さんにとってどんな意味があったのでしょうか。
高校生ぐらいの頃には、趣味の範囲を超えて、みんなに使ってもらえるようなWebサービスを作れるようになっていました。中でも一番多くのユーザーに使っていただいたのが、時間割配信サイトです。
私が通っていた高校では、昼休みに先生方が職員室の前に明日の時間割を掲示し、生徒がそれをメモして帰るという風習がありました。そこで、私はウェブサイトを構築して時間割を掲載し、みんながサイトを見て時間割を確認できるようにしたんです。
当時、ちょうどみんながガラケーを持ち始めた頃です。口コミで広まり、学年の3分の1の生徒がそのサイトを使ってくれていましたね。
当時、校内でガラケーの利用が禁止されている中、私は「パソコンならいいだろう」と教室にもちこんで、昼休みにいじってるような変なやつでした。ただ、それもあって、文化祭で使う音源の編集など、多くの方からパソコンを使うクリエイティブな依頼をされます。その頃から「パソコンを使って普通の人ができないことができる。価値が提供できる」ということが、自分のアイデンティティになっていきました。
ープログラミングの技術はどのように身につけたのですか。
プログラミングは完全に独学でしたね。Webサイトを見ながら勉強していました。それもあって、知識にはすごく偏りがあり、データベースという概念を知ったのは大学生に入ってからです。
高校のときは主にPHPを利用してプログラミングを行っていましたが、PHPは比較的ファイルへの書き込みや読み込みがしやすい言語です。私が作成したWebサービスでは、データを永続的に保存するときに、ファイルを一つ作成して、そのファイルの中にひたすらCSVのような形で書き込むといった方法をとっていました。
独学で得た偏った知識で何とか作りたいものを形にしていたんですよね。今振り返るとよく頑張っていたなと思います。
社会人の基礎を身につけることを重視した進路選択
ー井崎さんは大学卒業後の進路としてエンジニアを選ばれていませんが、当時の就活の軸は何だったのでしょうか。
私は大学生になってからも、卒論のテーマにコンピューターを使った株価のシミュレーションを選ぶなど、コンピューターとは切っても切り離せない生活を送ります。当然、卒業後はコンピューターを扱う仕事につくことも考えましたが、正直エンジニアへの転職はいつでもできるだろうなと思っていたんです。社会人1年目だからこそ、社会人としてのコミュニケーションや、礼儀、マナーといったものを身につけたかったので、クライアントやお客様との接点が多いコンサルティング会社を選びました。
ー1社目のコンサルティング会社で学んだこと・経験してよかったことはなんですか。
多くのクライアントとやりとりさせていただく中で、当初の目的であった礼儀やマナー、お客様との接し方など、社会人としての基礎力が鍛えられました。また、期限をきちんと守りながら、お客様が満足いくアウトプットをきちんとお出しするという仕事の基本的な姿勢も身につきましたね。
当時は就業時間なんて気にせずに、オフィスに泊まり込んでクライアントの成果物を仕上げるなど、仕事に対してはかなり熱心に取り組んでいたと思います。
ーSecureNaviは非常に働きやすい環境が整っていると感じます。ハードな働き方をしていた井崎さんが考える経営観についてお聞かせください。
当時は無理な働き方をしていました。その分、身につくものは多かったのですが、持続可能な働き方ではなかったと思っています。
少し話は変わりますが、スタートアップにおいては、組織の中で失敗を重ねてきたメンバーが「長く」在籍することは、組織の中で同じ失敗を繰り返さないためにも、また、強固なカルチャーを作る上でも、非常に重要です。濃く短くではなく、メンバーに長く働いていただくことを重視した経営がしたいと思っています。
エンジニアへの転職とSaaSビジネスへの想い
ー2社目でエンジニアへ転職されますが、どのように活動されたか教えてください。
社会人3年目の時に転職しました。幸いなことに転職活動はそこまで困りませんでしたね。
Webエンジニアとしては、趣味でかじった程度の知識しかなく、実力としてそこまで高くありません。それでも、1社目で身につけたコミュニケーション力や社会人としての基本的な姿勢が備わっていたので、第2新卒としてギリギリ取っていただけるレベルだったのかなと思っています。
ー転職先では、エンジニアとして何を担当されましたか。
主に担当していたのは、バックエンドとフロントエンドです。バックエンドはRuby on Rails、フロントエンドはJavaScriptベースのReactという言語を使って、Webアプリケーションの開発を行っていました。このRailsとReactの組み合わせは、いまだに好きで、とても愛着をもっています。
ー実際にエンジニアとして働いてみてどうでしたか。
自分の趣味と仕事内容が一致するというのはこれほど楽しいのかと思いました。
一方で、元々クライアントワークをやっていたので、お客様と話すことができないもどかしさを少し抱えていたと思います。それもあり、その会社でのキャリアの後半は、新規事業の開発担当エンジニアとして一からプロダクトを作るのに加え、お客様先を訪問して営業やCSも担当させていただきました。
「SecureNavi」をつくりあげた原動力
ー「SecureNavi」のプロダクト構想を思いついたのはいつ頃ですか。
会社の立ち上げ前に「こういったプロダクトがあればいいな」と少し考えていましたね。
2社目の会社で、SaaSのプロダクトを作りお客様に販売する難しさを感じる一方で、SaaSビジネスのお客様本位な考え方にすごく感銘を受けたんです。
例えば、コンサルティングビジネスと違って月額費用でスモールスタートができたり、お客様の好きなタイミングで解約ができたりといった点ですね。1社目のコンサルティングビジネスで感じていた課題感を、SaaSの技術を組み合わせることによって解決できるんじゃないかなと思い立ったのがきっかけです。
そこから、上長に相談して許可をいただき、会社を設立しました。当時は、2社目の会社で正社員として働きつつ、土日や夜の時間で自分の会社のコードを書くという日々でした。
途中から知り合いにも手伝ってもらったのですが、当時はお金がなかったので貯金から報酬を支払い、個人の口座がほぼゼロになったことを覚えています。
ー私財をなげうって、本気で進められたのは、最初から勝算があったからなのでしょうか。当時の思いを教えてください。
売れるから、会社が儲かるからやったということではなくて、単純に自己表現の一部でしたね。
私にとって、プログラミングは自分の世界を表現する手段です。作曲家が音楽を作ったり、画家が絵を描くように、私はプログラミングを通して自分が作りたい世界や、自分が考えていることを表現するんです。そして、それをお客様に喜んでいただけることが、高校の時から自分のアイデンティティになりました。
自分のつくりたい世界をつくり、自分もお客様もwin-winになる。それが人生の意義で、仕事というよりは人生をかけてやっていくものだと思っています。
ー井崎さんにとって、創業初期のフェーズはどういう期間でしたか。印象に残っていることを教えてください。
すごく楽しかったですね。もちろん体力的にはすごくしんどくて、何本ものエナジードリンクを消費する日々を送っていました。
それでも、やはり自分がプログラミングを通して自己表現したものが、実際にマーケットやユーザーに受け入れられているという体験は何物にも代えられないものです。それは、大変さや辛さをかき消すぐらい、強烈でとてもインプレッシブな出来事でした。
初めてのお客様がサービスの利用を開始されて、およそ4ヶ月後に認証が取得できたと聞いたときは本当に嬉しかったです。お客様先から駅までの道を、ニヤニヤしながら歩いて帰ったことを今でも覚えています。
ビジョンに込められた希望と決意
ーSecureNaviのビジョンである「悲報をなくす」に込めた井崎さんの想いをお聞かせください。
この「悲報をなくす」というビジョンは、私の想いをすごく反映させたものになっています。
私は、悲しいニュースや出来事に対してすごくセンシティブに捉えてしまう性格の持ち主です。例えば、ニュースで殺人事件が起きたというニュースが流れると「技術がこれだけ発展している21世紀で、なぜ悲しいニュースはなくならないんだろう」という世の中の不合理さに対して、そして、まだそんな不合理な世界を改善するために自分がコミットできていない不甲斐なさに物悲しくなります。それはもう仕事が手につかなくなるほどです。
私がそういうセンシティブな人間だからこそ「自分が年老いたときに、少しでも悲しいニュースを見なくても済む世の中になっていてほしい」という想いで「悲報をなくす」というビジョンを掲げました。
私の自己表現方法の一つであるソフトウェアの開発提供を通して、この世の中の悲報を少しでもなくしていく。それが自分の人生の意義であり、自分の人生を賭してでもやりたいことだと思ってます。
ー悲報をなくすために、SecureNaviでは現在どんなことに取り組んでいますか。
私たちは情報セキュリティ、特に文系セキュリティの領域を通して、世の中の悲報をなくすことに取り組んでいます。
文系のセキュリティとは、ファイアウォールやウイルス対策などの技術的なセキュリティではなく、社内規程の整備やリスクアセスメント、監査や第三者認証の取得といったものが該当します。この領域に企業が取り組むときに、今まではコンサルタントに依頼をするという選択肢しかなかったのが、日本のマーケットの現状です。
そもそも、世の中のセキュリティ事故は、ウイルス対策ソフトやファイアウォールの未導入が原因になるものは少ないと考えています。むしろ、そういった対策はしていたのに、設定ミスや情報の持ち出し、マネジメントの失敗など、人の行動が原因で起こることが非常に多いのです。
私たちはこの文系のセキュリティ領域において、コンサルティングという人間による支援ではなく、ソフトウェアを使った支援という全く新しい方法で、日本国内の文系のセキュリティをDXしています。
ー情報セキュリティにおける課題や、SecureNaviが達成したいことについて教えてください。
私たちのテーマは、情報セキュリティの世界からWord、Excelをなくしていくことです。
世の中には便利なSaaSツールがたくさんあります。例えばソースコードの管理は「GitHub」、タスクの管理は「Jira」、デザインの管理は「Figma」で行えますよね。また、エンジニア領域以外にも目を向けると、顧客の管理は「Salesforce」で、人事労務の管理は「SmartHR」で、会計とか財務の管理は「freee」や「マネーフォワード」など、こうしたサービスを使うのが一般的になってきています。
そのような中で、情報セキュリティの分野では、いまだに規程をWordで、台帳をExcelで管理しています。これまで、文系のセキュリティ領域をソフトウェアでDXをしようというプレイヤーが日本国内にいなかったので、Word、Excelを使うという古くからの慣習が残っているのです。
エンジニアの視点で見ると、WordやExcelの中に記載された情報は、非構造データであり、分析できません。情報セキュリティ担当者のアウトプットを分析して活用できないのであれば、担当者の活躍が日の目を見ることはありません。昨今のデータ活用のムーブメントからも阻害されてしまいます。それは非常に残念なことです。
私たちは、まず情報セキュリティの領域からWord、Excel運用をなくし、データを構造化して分析可能な状態で保管することによって、より効率的なセキュリティ管理を実現したい。そして、セキュリティ担当者の活躍が社内でも認められるようにしたいと思っています。
ーSecureNaviがこれから取り組んでいくこと、今後の展望についてお聞かせください。
今、文系のセキュリティ領域において、ソフトウェアで挑んでいるプレイヤーは日本国内では弊社だけです。私たちには、情報セキュリティ事故を大きく削減し、それを情報セキュリティ以外の領域にも広げていくという明確なビジョンがあります。
私は、SecureNaviの活躍が、この世の中の悲報をなくしていくための重要な鍵を握っていると確信しています。
そのためにも、採用を強化して組織を作っていくことがCEOとしての非常に大きなミッションです。
また、私は新規事業室の室長も兼務しており、リーダーとして現在の主力製品である「SecureNavi」に続く第2のプロダクトの開発を進めているところです。私自身もコードを書くことで、全体の成長スピードをあげていきたいと思っています。
プロダクトへの責任とこだわり
ー井崎さんのプロダクトへのこだわりを教えてください。
SecureNaviは、私自身の「お客様の課題を解決して満足していただけるプロダクトを作りたい」という想いをモチベーションとして作った会社です。
市場の分析から、マーケットニーズに合わせてプロダクトを作るというアナリティカルなものではなく、目の前の困っているお客様の課題を解消して、それを抽象化していくようなプロダクトの作り方をするというのが、SecureNaviの初期の頃から考えていることです。
顧客の課題解決の手触り感を大切にしていくプロダクトの作り方を今後も続けていきたいなと思ってます。
ーUIやデザインにおけるこだわりはありますか。
プロダクトのUIには、かなりのこだわりがあります。
UIにこだわることは、プロダクトを意図した通りに正しく使ってもらい、価値を100%提供するために欠かせません。私たちが提供しているのは、情報セキュリティのプロダクトです。もし、正しく使われないことがあれば、お客様の情報セキュリティ事故を引き起こしかねません。正しいテキストを書き、ボタンの配置にも神経をとがらす。私たちが1ピクセルにこだわることが、お客様の情報セキュリティ事故をなくす、すなわち弊社のビジョンである「悲報をなくす」ためにもすごく重要なことなのです。
SecureNaviの働きやすさの秘密
ー井崎さんはエンジニア出身ですが、そのことが経営に生かされていると感じるのはどんなところでしょうか。
会社の福利厚生がその一例です。
エンジニアの方は、集中して業務ができるように、働く環境を整えることへの感度が高い方が非常に多い印象です。私自身もそちらの部類なので、SecureNaviは創業当初から、各個人が最大限パフォーマンスを発揮する働き方ができるよう、福利厚生の制度を設計しています。
例えば、弊社ではフルフレックス、フルリモートという働き方が標準で、デスクや高級チェア、大きなモニターが会社から貸与され、技術書を初めとした書籍の購入は制限なくできます。こうしたエンジニアの方でも満足いただける福利厚生は、エンジニア出身の創業者ならではものではないでしょうか。
ー井崎さん率いるSecureNaviにはどんなメンバーが集まっていますか。
現在のSecureNaviは、すごく優しいメンバーが集まっています。
弊社のコミュニケーションは基本Slackを通して行われているのですが、メッセージを見ると「ありがとうございます」「すみません」のように、相手を思いやる言葉で溢れています。私のように悲しい出来事やトゲのある言葉が心に刺さってしまうようなセンシティブな人間でも、気持ちよく働くことが可能です。
こういったコミュニケーションは、組織の心理的安全性を担保する上でも非常に大切です。これはSecureNaviの良いカルチャーなので、今後も引き続き維持していきたいと思っています。
SecureNaviで活躍できる人材とは
ーSecureNaviのエンジニアとして必要なマインドやスキルについて教えてください。
一つ目は、技術を目的ではなく、手段と捉えられる人です。エンジニアの方の中には、技術が好きで極めていきたい、それを仕事にしていきたいと思う方と、技術を使うことによってお客様を喜ばせたり、世の中に対して新しい価値を提供したりすることに喜びを感じる方がいらっしゃると思います。両者は両立できるものだと思いますが、SecureNaviでは後者の考え方がすごく大事で、私も高校の頃からずっと心の中にあることです。仮に、後者の思いが全くない方だと、弊社で活躍するのは難しいかなと思っています。
二つ目は、自分が伝えたいことをきちんと正しく伝えられる能力です。弊社はフルリモート、フルフレックスなのでテキストコミュニケーションが主流になっています。ファクトを正しい日本語で簡潔に伝えることはもちろん、きちんと自分の感情や思いも込めて伝えられることが、SecureNaviの中で気持ちよく働く上で必要になってくるでしょう。
そして、これは言わずもがなですが、ビジョンへの共感です。世の中の悲報をなくしたいという思いに共感していただいていることが大切だと思います。
ーSecureNaviの人事ポリシーについて教えてください。
SecureNaviが人事ポリシーとして重要視しているのが、会社の利と個人の利を合わせることです。会社の利益や都合で、一方的に従業員の皆さんに業務をお願いをするのではなくて、各個人が何をやりたいかを尊重し、会社の利と個人の利を合わせた業務をお願いしています。
自分の利を会社の中でも実現していきたいという思いのある方、また、エンジニアの個人の利、つまりキャリアの育成や、エンジニアがやりたいことを実現できる組織の運営に興味関心を持っていただいてる方には、是非とも入社していただきたいと思っています。
SecureNavi採用強化中です!
SecureNaviは2023年11月にシリーズAの資金調達を行い、複数のポジションで採用を強化しています。開発サイドでも以下のポジションを募集しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください!