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長期データ保管においてオンプレミスがクラウドより安価になる理由

IT業界でよく議論される話題の1つに、データ保管にかかるコストの違いがあります。
「クラウド」と「オンプレミス」、どちらの方がお得なのでしょうか。

一般的な認識としては、クラウドの方が安価で手軽に利用できると考えられがちです。

しかし、長期的な観点から見ると、必ずしもそうとは言えません。

5年以上のデータ保管

初期投資としてはクラウドの方が低コストで済みます。しかし、5年間で比較するとオンプレミスの方が賢明な選択肢になります。

5年以上にわたってデータを保管する場合、オンプレミスの方がクラウドよりも数千万も安くなる可能性があります

クラウドストレージには、データ保存料金ダウンロードの料金が発生し続けるのが一般的です。毎月の金額は高額ではありませんが、年月を経るごとに徐々に積み重なっていきます。

一方、オンプレミスではサーバー機器の初期投資が必要になります。しかしそれ以降は、電力代やメンテナンス費用だけを支払えば良いため、むしろクラウドよりも長期的なコストを抑えられるわけです。

身近な例

例えば、身近な例として外付けHDDとDropboxを想定してみましょう。

Amazonで探してみると、3TBの外付けHDDは10,478円で売っています。

一方、DropboxのEssentialsプランを見てみると、月額2,200円です。


初期投資はクラウドのほうが1/5で、断然HDDのほうが高いですね。


しかし1年間トータルで見ると3TB HDDのほうが逆転し、Dropboxのほうが2倍以上になります。

1年間の費用比較

さらに、5年間だと約13倍になります。

5年間の費用比較

このように長く見ると5年間ではかなり費用差が出ます。

これは企業向けも一緒で、オンプレとクラウドでは2倍から30倍ぐらいの費用差というのは普通に出ます。

5年間トータルで計算する理由は?

オンプレミスでサーバーなどの機器を購入する場合、一般的に5年程度の減価償却期間が設けられています。つまり、資産の取得価額を5年間で費用化していくことになるのです。

この減価償却費用をオンプレミスのコストに適切に織り込んでいくためにも、5年程度のデータ保管期間を想定するというのが一般的。

途中でやめる想定をすれば安いんじゃないか?

その通りです。
しかし考えてみてください。途中でデータ保管をやめることはできますか?

ユーザが保有するデータは企業が存続する限りは半永続的に使い続けるわけなので、実際にはやめるという想定はありません。

やめるとしても次のデータの置き場を探さないといけないので、実際には解約したくとも解約できないのです。

自分のお客さんでもすぐに辞めれるからという理由でクラウドを採用しているお客さんがいましたが、数年経ってもやめられず、むしろ円安を理由に値上げされており、辞めるに辞められない状況になっています。

電気代が含まれていない?

その通りですね。では電気代を想定してみましょう。

先ほどのIOデータのHDDの電力量は公式で8.2Wとなっていました。

これを電力計算サイトで計算してみました。

-消費電力 : 8.2W
-1日の使用時間 : 24時間
-使用日数 : 30日
電気代 : 216円

となりました。
電気代はざっくり5年間トータルだと、12,960円かかります。

これを加味した表だとこちらです。

電気料金を加味した5年間の比較

これでもまだ相当な差がありますね。

でも保守とか運用とかって含んでないよね?

その通りです。
ただ、実際問題クラウド上に置いたからと言って、人がなくなるわけではなく、一定の管理はしないといけません。

経営者の中には「クラウドに行ったら保守とか人件費下がるよね」というクラウドベンダーの言葉をうのみにしている人をたまに見かけますが、実際にはそうはなりません。

「クラウドに行ったから、情シスをなくす」ということは実際にはできなく、人件費は削減できません。

なので、クラウドにしても人件費はかかるわけです。

ネットワーク機器は必要だよね?

これもその通りです。
ただ、これも人件費と一緒で、ネットワーク機器がない企業なんてないのでクラウドにしても費用は掛かります。

じゃあ、クラウドに行ったらダブルでかかる?

その通りで、クラウドオンリーにするとトータル費用は増加します
私の見てきたお客さんだと必ずそうです。

なので、クラウドファーストではなくオンプレも視野に入れるべきだと思います。

まとめ

というわけで、クラウドとオンプレの費用感をまとめてみました。

結構情シスの方でもクラウドの方が費用が安いと考えている人がいますが、それは誤りです。
現実的にはすぐにデータ保管をやめることはできないことを考えればオンプレに置く方が安上がりになることが多いです。

情報システム担当者の皆さんは、このようなデータ保管コストの違いを熟知しておく必要があります。初期投資額のみを気にするのではなく、長期的な視点を持つことが重要です。丁寧な検討を重ね、データの保管期間に応じて最適な選択しましょう。


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