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初めての食べものと出会う時

ー バルセロナ きらきら太陽の真下のカフェで ー

◇このエッセイは二十年ほど前のバルセロナのお話しです◇

 留学していた当時はピソ(マンション)に住んでいた。バルセロナ出身のピソの大家さんマルガリータ、そしてその大家さんから部屋を借りて住んでいたのが、ドイツ人のナタリーと私だった。運が良いのか悪いのか、大家さんも同居だったのだ。
 ある日ルームメイトのナタリーが、満面の笑みで「チェリモヤって知ってる?」と私の部屋の入口でいたずらっ子のような目でそう言った。始めて聞いた『チェリモヤ』が動詞なのか、名詞なのか、いやもしかしたらそれはロックグループの名前なのかさえよくわからなかった。知らないことを伝えると、何やら白いビニール袋からアボカドくらいの大きさで黄緑色のモノを四つほど机の上に出してくれた。どうやらこれがチェリモヤらしい。彼女はそのチェリモヤをすごくおいしいから一緒に食べようと言って、うれしそうに半分に切ってお皿にのせてくれた。指で少し押すといい具合に熟していて、まわりは黄緑色の皮なのに、中は白くて、黒いタネが数個入っていた。スプーンですくって食べてみると、くだものなのに中の白いトロトロっとしたものが、甘酸っぱく、そしてまるでヨーグルトみたいでほんとうにおいしかった。
 ナタリーから教えてもらったチェリモヤを、さっそく翌日市場の果物屋へ行って5個注文をした。店のおばさんは「今日食べるのかい?」というので、そうだと告げると、すごく熟した食べごろのチェリモヤが私の手もとにやってきた。

ここからは二十数年前からヒューッと時間をもどし、現在のことをかきます。

 海外に住むと見たことがない食べ物に遭遇することがある。そしてそのことがたまらなく好きだ。
ついさっきまで知らなかった野菜を知り、それを食べ、おいしいと感じる。これってすごいことだなと思うのだ。
 一ヶ月ほど前に、いつもの八百屋さんでいつも通り野菜を買った。
お勘定をしようと思ってお財布を出している時、「これ、食べて見て」と言われて差し出された、紫色のカブのような形をしたものがレジの横に転がった。
名前を聞いて見ると『Napicolナピコル』と言い、
この単語を分解すると『Nap i Col』 直訳すると『大根とキャベツ』
Napナップはだいこんの意味で
iイは英語でいう&のこと
Colコルはキャベツだ。
生で食べるとシャキシャキとして気持ちいいくらい歯応えが良く、オリーブオイルをたっぷりかけて他の野菜と和えてサラダにするとおいしそうだ。
ネットで調べて見たら、どうやら日本ではカブの一種で、その名も『西洋カブ』。またひとつおいしい野菜を知ってしまった。

ナピコル

それでは今日はこの辺で。良い一日を Bon dia ボンディア!

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