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【詩】優しい歌

やさしさを忘れたのか
いややさしいからなのか
死体の蹴り跡が増えているのは
思いやりが足らないのか
思いやりすぎるのか
雨の日に死体が臭いを放つのは

子よりも親こそが大事だと思いたい
女よりも我先にシェルターに逃げたい
そんな私は臭い者
殴っても誰も文句は言いません

やさしさを忘れたのか
いややさしいからなのか
死体の傷が増えているのは
思いやりが足らないのか
思いやりすぎるのか
雨の日に死体が腐臭を放つのは

私には口がない
私には弱さも傷もない
そういうことにしました
言ったって無駄だから

害虫が語りかける
妻と親友を殺して
初めて扉の前に立てるのだと
害虫が語りかける
まだ焔はあるのか
親友の首を絞めてでも歩む焔は

優しさが消えたのか
いや優しすぎるのか
血みどろの手を拭っているのは
思いやりが足らないのか
思いやりすぎるのか
返り血が似合うようになったのは

私は青い海の下で
古代魚を眺めていたい
そんな私は愚か者
かつて友と恋人を殺した者

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