ありのままの自分を解放する:全体性の話

数年前に「アナ雪」が流行った時、「ありのままの姿見せるのよ」という歌詞が大きくフィーチャーされました。
でも実は、「ありのままの自分」がメインメッセージなのは日本語版だけで、英語版は「心を開いて」がメインメッセージだったそうです。

「ありのままの自分」がフィーチャーされた背景には、曲が素晴らしかったのに加え、多くの人が「ありのままの自分」を出そうというメッセージによって共感されたからだと思います。

その背景には、多くの人に

「ありのままの自分を出すことを必要としてるのに、出すことができない」という「恐れ」

があったのではないでしょうか。そこを見事に表現し、共感したのがこの歌詞なのだと思います。

この記事では、アナ雪を事例に「ありのままの自分」「自分らしさ」「全体性」について考えます。

<目次>
1.「ありのままの自分を出す」ことに対する「恐れ」
2.「ありのままの自分を出す恐れ」からの解放
3.「ありのままの自分」は「愛・思いやり」があってこそ祝福される

1.「ありのままの自分を出す」ことに対する「恐れ」

アナ雪の共同監督で脚本を担当したジェニファー・リー氏によると、アナ雪のメインメッセージは「恐れ 対 愛」だそうです。

ここで言う恐れは「ありのままの自分を出す」ことに対する恐れです。

わたし達も職場や学校で本当の自分を出すのはとても恐いですよね。本当の自分を出すと嫌われてしまうのではないか、受け入れられないのではないか。これが「ありのままの自分を出す」ことに対する恐れです。

アナ雪では、エルサの氷の魔力を両親もエルサ自身さえも受け入れることができません。呪われた力とみなしてしまいます。つまり、ありのままの自分を他人だけでなく自分でさえも否定してしまいます。

この「本当の自分」「ありのままの自分」というのは、全人格とか全体性とも呼ばれます。
全体性というのは、1つのまとまりがあるものをいくつかに分離させてしまうとその特性が失われてしまうような性質のことです。全部揃っているところに意味があるということです。

全部揃って意味があるのに、その一部を否定してしまったらそれは意味をなさなくなってしまいます。
エルサの場合はこの全体性を発揮できる場所が全くなかったということです。

2.「ありのままの自分を出す恐れ」からの解放

ある日エルサは氷の魔力を暴走させ、山へ引きこもり、誰にも迷惑をかけずにありのままの自分を出し、一人で生きていく決意をしました。他人へ心を閉ざしたのです。

山へ引きこもる時の感動的な歌唱シーンで、エルサはありのままの自分を出す恐れを克服したように見えました。
あのシーンは見る者を魅了する素晴らしいものなので、「ありのままの自分を出すって素晴らしい!」「ありのままでいいんだ!」と全力で歌詞を肯定してしまいます。

でも、この時はありのままの自分を「自分が受け入れた」にすぎません。「他人に受け入れてもらえるかどうか」という恐れは克服していません。というよりも、むしろ他人のことなどどうでもいいという状態です。

エルサの魔力のせいで街は凍りついてしまいます。ありのままの自分で、一人で生きていこうと決めましたがそれでも他人を巻き込んでしまいます。他人を無視して一人で生きていくことはできないのだと気がつきます。

3.「ありのままの自分」は「愛・思いやり」があってこそ祝福される

最終的にエルサは、「愛の力」によって魔力をコントロールできるようになります。愛とは自己犠牲です。自分を犠牲にしてまでも大切にしたいと思う何かがあるかどうか、何かに気づいているかどうかです。

自分も他人も幸せになれるような選択肢を選べるようになるには愛が必要です。

私たちもエルサのように、ありのままの自分を受け入れ、自分らしさを発揮し、自分とつながり、自分の大切なものをしっかりと認識し、世界へ貢献できるはずです。これはきっと素晴らしい経験だと思います。

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