ギャグみたいなデートハプニング（6/19）

フランス語での会話が日常の殆どを埋め尽くしていると、日本語で何か書こうとする時に漫然としてしまって、「今日って一体何をしてだろうか」思考が強まりがちだ。

いや、どちらかというと「作曲している時」だからかもしれない。

曲を作っている時は体内のエネルギーを多く放出しているので、そこに加えて文章を書くとなると本当に莫大な燃料が必要になる。

しかも弊社の場合、最新テクノロジーを駆使したテスラ社さん等に見受けられる最新エネルギーシステム（全然詳しくなくてテキトー）とかじゃなくって、自社ガレージで薪を割って焚べてエネルギーを生んでいる。従業員は皆、煤けた鼻の頭を時々タオルで拭きながら、戦前のスタイルのまま吶々と作業をしているのだ。

そう言いつつもやっぱり仕事をしている時間がとても好きで、個人的な課題と越えたい壁なんかがありながらも有難い気持ちでいっぱい。その都度やるべきことをやれるのは幸せである。

今日はサウンドトラック制作の着地点が見えてきた安堵感もあって、体調不良やら仕事の詰め込みすぎで鬼のようにリスケを申し出ていた人とテラスで珈琲を囲んでお喋りをしていた。遠回しに書いたが、要するにデートである。
流石に何人とデートしてるねん、と言われそうなので遠慮がちに小声で書いてみたってわけ。

期限を決めて行なっている一種の人間活動のようなものなのだが、これが本当に学びになって捨てたものではない。たまに苦痛を感じる相手もいるが（相性の問題なので、ただただ合わないってだけ）相性の良い人間とだけ出会う社会など存在しないので、そんなものとして考えると上出来だと思っている。

とは言え、根本的には真面目で気ままな一人遊び自分の世界大好きタイプなので、色んな人と取っ替え引っ替え会うことそのものはすごく疲れる。

そんな総評はありつつも、今日会った人と、先月から何回か会ってる人はどちらも全く違うタイプだが、この二人は最初から本性丸出しで接していても何の違和感もなく笑って受け入れてくれているところが良かったし、なんなら「フランス来るの苦労したけど、来て良かったな」などと、自分の頭上右の吹き出しマークに呑気なセリフを書いてしまうほど、能天気で単純な爽やかさをふりまきながら帰り道を歩いた。

要は、特に何も望むことのないほど優しい人たちだったのだ。優しい人を相手にすると、望むこととか求めることが消滅するよね。「するよね」と押し付けてしまったが、私はするのである。だから「優しさ」って凄いと思う。

で、今日はそんな良い出会いの雰囲気の中で和やかに会話をしていたら「あれ、ひろこじゃん？」と突然声をかけられた話が面白すぎるので、日記に書いておきたい。

一瞬声をかけてきた人物が誰だか分からず、私は急いで御社のハムスターのケージ（私の通常の守備位置 兼 デスク）に戻って回し車に乗っかった！
それから、激しくカラカラと回りながら記憶を辿る。時間にして８秒くらいだろうか。シチュエーションで考えるとまあまあ長い。

もうとっくに捨てた新聞紙の、何日の朝刊だか夕刊だかも分からない記事に載ってた小さな人物写真の記憶を辿るようにして私はついに見つけたのである！火事場の馬鹿力か。スカーレット・ヨハンソンだったかが出ていた映画にそういうのあったよね。人間は本来の能力の数%しか普段使ってない、みたいな映画。

その人は、もう５年以上前に共通の友人の紹介で知り合って何度か会っていたのだけれど、あくまで私から見ると偽物の優しさが押し売りのようで苦手な人だった。なんというか「自分って優しいですよ。あなたのこと気にしてますよ」がすごくて、そのマウンドに私が足の小指を乗せるスペースすら見当たらないような人なのだ。

フェイドアウトするように連絡を何度か無視したところ、「お前、無視してきてんじゃねーよ！」と日本語で言うとそんな感じの捨て台詞を最後に吐いて疎遠になった男だった。

即座に「これ多分デートだな」の空気を察したのか、わざと「ヒロコの音楽、実は先週もまた聴いてたんだよね。wonderlandだっけ？あのアルバムってイケてるよね！”あれから”ずっと聴いてるよ。ってゆうかビックリしたよ。僕この辺に住んでるんだけど、ヒロコはどこに住んでる？てゆか、パリに移住なんて近々飲みに行こうよ、連絡するする！
（一緒にいた男性に向かって）あ、ごめんごめん、君がなんて名前なのか知らないけど、僕は⚪︎⚪︎って言うんだ。ヒロコのことは前からよく知ってて嬉しくってつい”また”話に花が咲いちゃって」と、まあ、喋る、喋る...！

その時の私の表情たるや。

察して頂き、想像して頂けたあなた、はい、そっくりそのままその顔してました私！！
（なお、デート相手もひいてました☆彡）

というわけで、パリはやっぱり「アムールの街」ということで、Amazonプライムスタジオが『モダン・ラブ Paris』と並行して”逆胸キュンエピソードだけを集めた裏版モダンラブ”を製作することがあれば応募してみようかなと思う。

採用されたら夢の印税生活できるのかな？
そしたらパリにアパートでも買おーっと♪