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ベンツはメルセデス(4/25)

都会の星屑( a.k.a ゴミ)を顔面に受けながら、自転車道という名の路駐レーンをひたすら走る。東京の仮住まいは、電車に乗ってしまえば新宿へのアクセスが大変良いので「新宿は便利」という刷り込みがされている。実際には50分以上爆裂に漕がなければならないのに自転車を走らせてしまったのだから仕方がない。新宿高島屋さんに到着する頃には額がテカテカと発光していた。

新宿高島屋さんは駐輪場が無料だ。私の自転車が大変世話になっているので、進物を調達する際には率先して高島屋さんで検討したい。

今日は新宿を起点として活動されているワールドワイド・英子・イシバシに会うためにお蕎麦屋さんへ伺った。全く、高島屋館内のお店ではない。

「納豆蕎麦」という、あったらだいたい頼んでしまう献立があったので、二人して頼んだ。(石橋さんは、とろろ添え)「ジャズドラマーであればこれでスネアドラムを叩いたでしょうね」とみまごう藁に包まれた納豆が届いた。両端を縛っている紐を解いて、納豆を器へと滑り入れるシステムのようだったが、本日の担当さんが納豆縛り研修で間違ったことを教わったか、間違ったままメモしたか、紐が解けないというハプニングが発生。ただただ藁人形を握りしめた作曲家が二名着席している形となった。

店員さんにハサミで切って貰い、本来原始的に自然界に存在するもの(藁)と私たちの肉体だけを使った共創の時間だったものが、一気に新宿のド真ん中的な雰囲気を醸し出す。それでも藁に入った納豆の美味しさには感動した。

昨日のセブフロー案件でスタジオ録音が急遽入ったため、サクッとミス・イシバシと別れた。ミス・イシバシとは地球のあらゆる場所で交差していく気がするので全く寂しい気持ちにならず、むしろ未来の方向だけを見ている感じがする。
これからイタリアへ向かうとのことだったので、そのエピソードも印象に影響しているかもしれない。

西麻布のスタジオに向かう前に、少しだけ、東京の仮住まいを紹介してくれた不動産仲介業者の林恭兵氏と落ち合った。何の話をしたのか殆ど記憶にないが、だいたい面白い話をしていることだけは覚えている。

出会った頃は長髪だったが、今や磯村勇斗氏似の短髪で爽やかな出立ちになっていた。色々とお世話になった人だったので、渡仏前に少しだけでも会えて良かった。
わざわざ時間を作って足を運んでくれる人たちが有難い。

さて、そんなエモーショナルな時間を過ごしている間に、目の前で自転車の駐車違反警告書のシールが貼られていることに気がついた。
ずっと視界に入っていたはずの自転車が、いつの間にか取り締られていたのである。これだから港区は怖い!
そういえば、港区女子になりたいならベンツのことはメルセデスと言えって教わったことがあったな。

新宿から西麻布まで自転車を漕いだことと、スケジュールを詰め込む毎日のせいで、スタジオでピアノを弾き始めたら楽曲のテンポを超えそうなほど前のめりに演奏してしまった。何度か録り直し。

「え、てゆうかバリ下手やん!世武とか下手すぎてマジでビビるんやけど!」

あまりの自分の下手さにビックリしすぎて、普段脳内で会話しているものが思わず声に漏れ出ていたようだ。全部マイクで拾われてコントロールルームの人たちに筒抜けだった。どこの輩が紛れ込んだかと心配されたことだろう。作ってる音楽とのギャップが凄いですね、とよく言われる。

「言葉(意味)を持つコーラスももっと入れて欲しい」と先日リクエストがあったが、これだけナレーションの文字数が多いのだから、さらに言葉を入れると情報量が多すぎて散漫になると思います、と率直に伝えていた。

本日、最新版の方でもコーラスを増やしてもらえないかと打診があった。こちらからはナレーションの録り直しのことについて尋ねたら、エルムホイさんにお願いする予定ですとの返答。

思わず「ホイかい!」となりながら、「だったらなおのこと、彼女と私の声の質感は結構近いので、はっきり言ってこれ以上私のコーラスを足したら邪魔になると思いますね。"働く私たち"の目線でナレーターを選ぶだろうと想定していたんですけど、"現象"側の声=ホイ、を起用するなら余計にその辺り考えてやらないと」と言ったら、皆さん「なるほど!」と柔軟に納得してくれて、コーラスは現状のままとなった。

忘れているのか、他の作家は誰も気にしていないのか、そこまでは伝えなくても良いやと思っているのか分からないが、情報は多い方が的確な作業ができる。モノづくりなんてそれが大基本。何のために作っているのかという起点と着地点を考えたら明白である。私が情報開示を求めるのは、それが故だ。魂は細部に宿らずしてどこに寝泊まりするというのか。野宿させるわけにはいかんだろう。

まあ、あんなピアノが下手だったやつに言われても説得力はないが....

すっかり暗くなった街を、今度は45分くらいかけて戻る。自転車を漕ぎながら、自分が舌を鼻につけられる人間かどうか把握していなかったことに気づいた為、何度か鼻を目掛けて舌を伸ばしてみた。

あまりに自分を買いかぶり過ぎていたようだ。鼻どころか上唇を少し越えるのがやっと。そもそも口笛も吹けないほど舌が分厚いので、己の鼻を舐めることなど出来るわけもなかった。

春の交通週間かゴールデンウィーク匂わせか、信号が青になって渡ろうとしたら、対岸に交通系のお巡りさんがじっと構えていた。こちらは舌を鼻につけようという最もフレンドリーな状態で目が合った。いよいよ近づくぞというところで、親しみが膨らんでいき、思わず軽めに両眼でウィンク(それはただの まばたき)をして微笑んでみた。お巡りさんは終始無表情だった。

水くさいやつだ。もっと楽しそうにしたら良いのにさ。残りの夜道もぐんぐんと漕ぐ。

こうして、トライアスロン全チャリ部門を終え、前太腿の張りを誇らしくも思い、夜中1時を過ぎて本日(もう昨日か)の録音物のMIXが届いたので、今から確認して気分よく寝ようと思う。

あ、私のメルセデスに こびりついている駐車違反警告書を、切って剥がしておかないと!

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