清く正しく美しく
馬鹿なりに真面目に生きてきたと思う。
興味のある事にはとことんハマるけど、興味のない事には心底感心が持てなかった。
相槌は上手く、今も会議など会話の端々の重要な部分だけはちゃんと聞き取れるものだから、たいして聞いていなくても理路整然と答えることができていた。
別に器用なわけじゃない。
「本当頭悪いな」「馬鹿じゃねぇの」「役に立たねぇな」
そう言われて育ってきたのだから、きっとそうなのだと思う。
自分がもっと賢くて、法律にも詳しくて、器用に物事をこなせる人間だったら、今が変わっていたのだろうか?と思うほど、不器用な方だと思う。
でも言葉で傷つけられた分、相手が言われたら嫌だと思うことは分かっている。
そして、相手の痛いところがどこかも、瞬時に判断できる。
本能的にできるのか、クズの血を受け継いでいるからできる芸当なのかは分からないが、私の言葉は力を持ちやすい。
スピリチュアル的なことで言えば「呪詛」で相手を追いやることができる。
だからできるだけ、言葉を発しないように気をつけていた。
私の言葉で傷つけてしまうのではないか、それは結果的に兄や父と同じ人間になるのではないか?
そう思い、恐れた。
問題事を起こせば「片親だから」「可哀想な子」だからと全く関係のないことで後ろ指をさされることが当時は怖かった。
だから、問題ごとも起こさず、常に誰かの後ろで存在を消しながら生きていた。
清く・正しく・美しく
そうすることで余計なトラブルを遠ざけようと努めた。
けれど、不思議なものでトラブルはいつも向こうからやってきた。
全く関係のない事で連帯責任とばかりに責められたり
一生懸命取り組んでいたことを突然無かったことにされたり
後ろ指をさされないように黙っているだけなのに、存在している事を否定された。
本当はタトゥーを入れたかった
本当はピアスももっと開けたい
本当は髪の毛を派手に染めたい
本当はジェルネイルだってしたい
沢山の「本当は」を飲み込んで生きてきたのに
兄は好き勝手に生きる子供部屋おじさん
弟は母から1000万を貰って家を買い
父親は自分都合で何も不利益を被ることなく自由に生きて
不倫相手は今でも弁護士会で役職について、弁護士をしている
そして母も母になりきれず女のまま自由だ
清く・正しく・美しく
ちゃんとルールを守って生きている自分が酷く惨めに思えた。
誰かを罵倒したこともない
誰かを殴ったこともない
誰かのものを奪ったこともない
誰かを意図的に傷つけたこともない
それなのに、私には何もない。
私が欲しい「普通」はどんなに努力しても手に入らず、どんなに頑張っても遠のいていった。
何がいけなかったのか自分でもわからない
私は何を間違えてしまったのか分からない
でもきっと間違えたから今この結果があるのだろうと思えてしまう。
清く・正しく・美しく
そんなルールに縛られて、法律守って、吐きながら学校にもちゃんと行って、働いて、税金を納めて、自分の力だけで成り上がってせっかく役職にもついたのに。
出張から帰ってきたら「会社が倒産寸前」だと言われた。
しかも、それもやはり私の知らないところで、私の関係のない話で倒産寸前だというのだ
こっちは毎日業務に明け暮れて、長期休みも取れない中で必死に売り上げを伸ばしていたのに。
倒産寸前?
笑うことも出来なかった。
親ガチャも仕事ガチャも本当に引が悪い。
唯一引きがいいのは友人たちに恵まれている事だ。
これだけは、誇れる。
でも、たまに思う。
清く・正しく・美しく
そうせずに生きてきたら私の人生は少しはマシになっていたのだろうか。
例えば反社会的なデモに参加するとか
例えば反社会的な行動を起こすとか
例えば自分の幸せのために誰かを踏み台にするとか
そういう、普通を捨てた生活を追い求めたら
もっと今が変わっていたのだろうか…と
でもきっと、これから先もそれはない
思うだけ、考えるだけ夢に見るだけで
何が清く・正しく・美しく、だ
そんなもの守って何になるんだ?
反社を擁護する気もない
間違った人や犯罪者を肯定する気もない。
でも、これからも、この先も
私は人としての道から逸れる事なく、普通の人生を追い求めて生きていくのだと思う。
正しく生きているつもりなのに、何ひとつ見返りはなく、何ひとつ事態は動かない。
だから、自分で必死に立ち上がり
進むのだ。
前へ
前へ
いつか自分が相手を赦せるその日まで。
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