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歪な呪い

うちの家庭は遡れば祖父母の代から家族の形が歪だった。

一般社会の常識的な部分が最初から存在せず、すっぽりと抜けているのだ。

例えば、結婚し、家庭を持ち、子どもを成して育てる、そこには仕事をするという社会的活動も加わると思うのだが、不思議なことにこの家の誰かは必ず無職か金銭トラブルを抱えてくる。

元父親の家族は祖父が

元父と母、兄と私、弟の時は父が

そして今では弟が、まるでその枠を埋めるかのように同じことをする。

恐ろしいのは弟と父が全く同じ道を辿り、兄と甥っ子がそっくりな行動をとるようになったことだ。

弟は生まれてすぐに親が離婚しているので、父とは数ヶ月に一度から数年に一度、顔を見るくらいしか会ってない。

私の記憶でも元父親が弟を抱き上げてる記憶が全くない。

それくらい関係が希薄なのに、弟はまるでコピーとでもいうように、全く同じ問題を抱えていた。

まず、金勘定ができない、できないから貯金もできない、それなのに両家から頭金を出させて家を買うという暴挙に出た。

金は働かなくても親が出してくれるものという認識だ。

これはうちの元父親がそうなのだが、未だに年金暮らしの祖母に生活費をせびっている。

60超えても新しい依存先を探して寄生して生きる姿に居た堪れなくなる。

次に女性問題にだらしない、これは父方の一族男性みんなそうなのでDNAレベルで刻み込まれているのかもしれない。

種の保存という動物としての本能を遺憾なく発揮しててそろそろ自重して欲しい。

次に甥っ子だ、私も大切にしようと色々手を尽くしたが、弟夫婦と疎遠になってからは全く会わなくなった。

最後に聞いた時は5歳になる弟を顎で使い奴隷のように指示して暴力を振るっているという話だった。

やってることが長兄そっくりで戦慄した。

それを祖母である母は止めていないと知って、膝から崩れ落ちる気持ちだった。

「なんで止めないの!?そんな事させたらダメなんだよ!」

「だって意地らしくお兄ちゃんにお水持っていく姿がね、本当に嫌がっていないように見えないのよ」 

このBBAマジで使えねぇな。

自分の母が本当に嫌いになる日が来るなんて誰が思うだろうか。

曲がりなりにも自分の実母に嫌悪感と憤ることがあるだろう。

私が兄にされていたことを、叔父の顔も知らない甥っ子が5歳の弟に同じことをしていると聞かされた時、そして親である弟夫婦や祖母である母がそれを止めていないと聞いた時は、私は呪いの根底を見た気がした。

子どもにふりかかるあまねく呪いは、大人たちに左右される。

呪いはどこかで止めないと連綿と受け継がれる。
それは呪いを呪いと思えず、間違った行動だと知らず、そのまま見て育った子どもたちが常識だと思い同じことを繰り返しているだけではないのか?という事だ。

この家では必ず子どもが被害者になる。

まるで順番に子どもを生贄にしているような薄寒さがある。

子どもは自分の身に降りかかっていることが虐待だと知らない。

誰も教えてくれないからだ。

大人たちの悪意や言葉を純粋にインプットし、まるで自分の言葉のようにアウトプットする。

その言葉や自分の置かれている現状に何も違和感を抱かない。

何故なら狭いコミュニティの中では比べるものがないからだ。

自分が置かれている環境の不条理さも、自分の身にふりかかる困難も、大元を辿ると子どもには全く非がない。

親を選べない子どもは他に行くところがない

歪さに気づいても何が違うのか比べられないし、知られることが恥ずかしいという気持ちもあって容易に言葉にできない弱さがある。

その言葉にできない弱さに漬け込む。

大人たちはゆっくりと毒を染み込ませるように子どもたちの常識の中に、自分達の非常識を植え付けていく。

殴られている時、どこかの誰かが「そんなのおかしいよ」と助けに来てくれると祈った。

でも閉ざされた家庭という地獄に赤の他人が入ってきてくれることはなく、大人たちは誰も助けてくれなかった。

家を出て、家族を捨てて、外からこの一族を見る。

歪で、不確かな愛情を餌に、非常識をルールとし、子どもの人権を蝕んでいく。

愚かで恐ろしく、野蛮で愚鈍。

間違いだらけでツギハギだらのこの家を、私はこの先もきっと赦せず、愛せないままだと思う。

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