1000万円て何ですか?

穏やかな午後の昼下がり、家でゲームをやりながらまったり過ごす至福の時間。

ピーンポーン

郵便物も宅配もUberEatsも頼んでないのにインターフォンが鳴る。

言ってて悲しいが突然訪ねてくるような友人もいない

画面越しに確認すると、そこにはオカンがいた。

とりあえず中に入ってもらう。

「どうしたの?」
「うん」

暫しの沈黙。

あ、これはあかんやつや…

こういう時は大体良くない報告がくる

「弟夫婦が喧嘩して…」

なんだよ、いつものことかよ…そう鼻で笑いながら「何が原因だったの?」と優しく問いかけた。

「借金300万」

3万ではなく??0が多くないか??

300万?何に使ったの?女?

クズ弟は以前ネットで知り合った女とやりとりして嫁にブチギレられ、逃走するという前科があった。

「違う、何とかってアプリ」

ネットに疎い母からの情報だと、どうにも理解できない。

「課金?」
「違う…何とかってアプリで女の子にプレゼントを送ってたんだって」

投げ銭のことか?


ここ最近そういう機能があるとかないとか、母並みにネットに疎い私もうっすらと聞いたことがある。

アイドルの卵だかに入れあげてひと月で300万投げたらしい。

何の話をされているから分からないでしょうが、私も何の話をされているのか分からなかった。

「え?投げ銭で、見知らぬ女に300万も…?」
「そう…それで「どうするのよ!」って奥さん怒って」

当たり前だわ、真っ当な怒りですわ。

お母さんが立て替えたの

なんて?

なんて申しました??

今、300万をお母さんが立て替えたと、申されましたか!?

「は?なんでよ?なんで、そこにお母さんが出てきて立て替えてるのよ」

「だって無いって言うんだもん…仕方ないじゃ無い

出た、母の伝家の宝刀「仕方ない」

仕方ないのか?

闇金に手を出して、友だちどころか隣近所から金を借りると言う話をテレビで観たばかりの私は震えた。

推しを応援したい気持ちはとてもよくわかる

私にも推しがいるから

でもそれは、自分で働き稼いだ金でできるだけ還元率の高いグッツを買うことで推しを応援する。

それは人の金でやるから意味があるんじゃない

自分の金でやるから意味があるのだ


「300万だけか?」

疑念が私の心を侵していく

「他には…1000万

言葉がなかった

嬉しくて嬉しくて言葉にできないんじゃない

死ぬまで聞くどころか、見ることのない金額だからこそ驚いて言葉にならなかったんだ

「い、1000万…何に出したの?」

弟夫婦が家を買うって言うから、頭金を…あっちの親がうちが出すなら出すって…言うから」

「だから、あいつら毎月の家の支払いが5万で済んでいたの?」

「そう…頭金両家合わせて2000万…」

バッカじゃなかろうか!?

子どもが家を買うから頭金を少し貸して欲しいと言う話は私も聞いたことがある。

でも別にそれは悪いことではない。

その金も母の退職金なので好きに使ったらいい。

でもやり方が酷かった。

「ちょっと出かけよう、と言われて連れて行かれた先が不動産屋だった。聞いていない!と言ったが雰囲気に押されて支払いにサインしちゃったの」

絶句。

言うことが何もない

弟のやったことは詐欺まがいの行為だ。

そして母は山奥に連れて行かれたわけじゃないから「聞いてない」と言ってその場を立ち去る事もできた筈だ。
納得できないまま1000万を支払うのもどうかしている。

1000万に続き、投げ銭で300万

言いたくはないが母にバチくそにキレた。

何故そんなにキレたかというと私が絶賛養育費不払いで奨学金という借金コツコツ自分で返している途中だったからだ。

そんなくだらない事に使われるくらいなら、私の残りの奨学金に使ってくれよ!!

「お母さんが自分のお金をどう使おうと関係ない、それはどうでもいい。出すと決めたのは自分なのだからもう愚痴るな、兄貴には実家をあげて、弟には家を買ってあげた、もうそれでいいというなら二度と愚痴るな。」

自分でもこんなにも冷たい言葉が出るのかと驚く程、淡々と告げた。

「本当なら300万は自分で片をつけなきゃいけない事なのに甘やかして払ったなら、もうその話は終わりだ。私の前で二度とするな

私に冷たく言われた事が気に入らなかったのだろう。
好きで払ったわけじゃない!」とキレられた。

「でも結果払ってるじゃん、そこは自分でケジメつけるところだよ?それなのにお母さんが払って終わりにしてるじゃん。返すアテもないんでしょ?」

「返すって約束で、貸したの」

「じゃあ返ってきてるんだね?」

「まだ返ってきてない」 


「ほらみろ、踏み倒されて終わりだよ」

しばしの沈黙。

親子間の金の話なんて、聞かされても知らんがな。

貸したのか、あげたのか、選択したのは母

騙したのか、そのつもりがないのか、それがクズの祖である元父のDNAがなせるワザなのか分からない

ただ、子離れも親離れもできない、馬鹿な親子だなと…急激に家族に対して冷めていく自分を客観的に見ていた。

金は人を変える

家族でも、友人でも、仕事でも、悲しいけれど金が全ての世の中だ

人情だの、優しさだのは金があって心にゆとりがある人間ができる事だから。


「どうしたらいい?」

しばしの沈黙のあと母がぽつりとつぶやく

しらねぇわ

好きにしろよ

「兄貴にしても、弟にしてももう自分で生きる力をつけさせたほうがいいよ。私はもう関わらないし、寄りかかられても困る。だから自分で考えて生きれるように、手を離す時なんじゃない」

響いたのか、どうかは分からないが母は「分かった」といい、そっと家から出て行った。

何かなければ親は子どもより先に死ぬ

そして親に甘やかされた子どもは子どものまま大きくなり、周囲に迷惑をかけながら生きていくことになる。

レベルアップしたモンスターは自分がモンスターだとにづかず大きくなる。

その迷惑は、兄弟がいれば負担は兄弟にくる

私はそれを知っている

だから、この家族から離れようと決められた。

この日記もその記録のため書き始めた。

正直、母に対してここまで突き放したことはなかった。でももう限界なのだ

自分でどうにかできない時だけ私のところに来る

私を都合のいい何かだと思っているのだろう

自分の味方でいると思っているのだろう

残念だが、金が絡めば話は変わる

実家は兄貴が、金は弟が、私には何が残る?

そう天秤にかけた時、不用品として分別できた

だから表面上、家族として接して欲しいなら接するが、もう根底は家族ではない。

もし、不倫なり、虐待なりしてる人で取り戻せる所に家族がいるなら、その方々は頑張って取り戻す努力をした方がいいと思う。

私のように諦められたら、もう2度と繋がることはできない。

相手が自分に対して何か怒っているのであれば「答えを教えて!」「言わなきゃわからない!」ではなく一度考えてみた方がいい。

大体が金かだらしなさか、相手に寄り掛かりすぎていたか…何かしら出てくる筈だから。

崩れた信頼を取り戻す事は容易な事じゃない。

それが辛いなら、そのまま離れていってあげるのが良い。そういう存在は相手の負担でしかないからです。

家族だから許されると思い上がらない方がいい。

こちらはいつでも、捨てる覚悟はできている。

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