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モノクロ写真とスズメとカワセミの子育て

夜が明け始めた頃、僕はまたベッドから起き上がって家の中を歩き回っている。
生まれたばかりの娘に昼夜の区別はないようで、何時であろうと空腹や暑さ寒さなど自身の不快を泣いて主張する。
真夜中に2回、そして早朝に起こされた僕は眠い。とても眠い。

必要な作業を終えるとすっかり目が覚めてしまった。
妻がもう一眠りするというので、許可を得て外出することにした。

先月チョウゲンボウを撮りに行った場所まで行ってみた。
残念ながらイイ感じの写真は撮れなかったので、目についた景色を望遠レンズで切り撮っていく。

眠い目が捉える風景は総じて彩度が低かった。
初夏の日差しは被写体のコントラストを必要以上に高めているように見えた。
こんな日はモノクロで光と影にフォーカスして写真を撮るのも面白い。


公園を流れる小川。
川の上を吹く風が心地よい。涼しげな水音が眠く濁った思考を洗い流すよう。


600mmから更に寄って800mm付近でシャッターを切る。
倒木に謎のキノコの群生。子実体、胞子、菌糸、原木の上で繰り返されるキノコのライフサイクルに自然を感じる




麦畑がある公園。
ビールだ。こんな日は昼からビールを飲もう。
レンズ中央部のコントラストの高さをMTF曲線を見ながら称賛しよう。


稲とは違った造形の美しさ。
稲も麦も昔から栽培されていたにも関わらず、稲にはどこか日本感というか和風のイメージがあり、麦には洋風のイメージがある。
ビールのせいか。やはりビールだ。
無駄に高い中央部の解像感と周辺部の割り切りの良さ。そして味のあるボケ。まさにSIGMAのレンズの良さが出ている写真。ビールを飲みながら小一時間語りたい描写。


大きな構造物は望遠で撮っても面白い。
右側に穴を6つ開けて手帳のインデックスとして使えそうなデザイン。


3m近く離れた葉を透過した光をどうやってここまで鮮明に写すのだろう。
葉脈の解像感、玉ボケの真円、背景ボケのざわつき、写真一枚から“好き”がたくさん見つかる。


カモの行水。
白いTシャツにプリントして着てみたい。確かユニクロにそんなサービスがあった気がする。


スズメの親子。
奥が親鳥で手前が巣から出たばかりの雛(飛ぶのが下手だったので多分)。


雛に餌の獲り方を教えている。
一方の雛鳥は親鳥からミミズをもらえて満足している様子。


まだ警戒心が低いので結構近くまで寄ってくる雛鳥。
尻餅をついて親鳥からもらった餌を咥えている。


雛鳥の周りを忙しなく飛び回る親鳥。
巣を出てから数週間で一人前に育て上げなければならない。スズメの親もなかなか大変だ。

人間は母体の外で生命を維持できる最低限の機能のみを身につけて生まれてくる。生まれて数週間程度では一人で生きていくことはできない。自立までの時間が他の動物に比べて非常に長い。

人類が知能を選択した結果がこの苦労である。僕が多少なりとも知能を持つ者である以上受け入れなければならない。長男が生まれたときにも感じた親の偉大さを改めて感じている。


そしてカワセミ。
鳴き声が聞こえた。
声がする方に視線を向けると青い影が水面付近を飛んでいた。

レンズを向けても警戒する様子は見られない。正面まで歩いて行きシャッターを切る。今までで一番近くから撮影できたかもしれない。
やっぱりカワセミはカラーで撮った方が良い。

カワセミを見ることができるこの川。
近々川床の土砂を取り除く清掃工事が実施される予定だ。しかもカワセミの巣の目の前の区間が対象。
これから雛の巣立ちが始まろうというタイミングで何ということだろう。
とはいえ、カワセミがいるので工事は控えていただきたいなんて言えるわけもなく、梅雨に入る前に治水工事を行うことは分からなくもない(冬の間にやればよかったのにとは思う)。
この川では何度もこのような工事が行われ、その都度カワセミが戻って来ているんだろう。今年の雛には災難だけど、きっとしぶとく生き延びてくれると信じている。
カワセミの子育ても大変そうだ。

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