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昔の同人誌がどうしても読みたい
同人誌が「入手できるチャンスを逃すともう手に入らない」とはよく言うが、もしノーチャンスだった場合、どうしたらいいのか。
後世の人間からの叫び。
この同人誌、超気になる!
趣味で同人誌を描く都合から、昭和末期~平成初期くらいの古本をみかける度に手に取っていた。
25年ほど前の鉄道雑誌をパラパラ眺めていた時の事
(旅と鉄道 95'春の号より)
雑誌巻末の方によくあるニュース欄を眺めていて目に入ったこの書影。
大垣夜行がまだ本数も多かった平成初頭に書かれた同人誌であった。
大垣夜行とは、先日廃止になった東京~大垣の夜行列車「ムーンライトながら」の前身。要するに東名・東阪間を安く旅行する手段として用いられていた昔の夜行列車の事である。
今割と調べているので超気になってしまった。欲しい!
読みたい! しかし……
冒頭に述べたが、任意の同人誌を後世で入手もしくは閲覧するのは極めて難しい。以下に理由を列挙する
1.そもそも刷られた数が少なすぎる
一般の書店に並ぶような本(商業の本)は数千、時には数万~数十万部刷られているという。そうやって「すごい数」刷られて初めて、5年、10年経っても書店や古本屋、ネットオークションで見かけるようになるのである。
が、同人誌はそれに比べて刷る数が極めて少ない。現在では30部どころか1部から印刷所へ発注できる。
しかしここまで手軽になったのは最近の話で、件の本が出た90年代中頃、印刷所へ頼むのはハードルが高いものだった。とはいえ、1ロットは100~500部からだろうと推測されるので、商業の本に比べたら遥かに少ない。
件の本は当時としてはかなり好評で「重版4刷」までは確認できた事から、もう少し刷られてると思うが、それでもなお数千部には遠く及ばないものと推測できる。
2.中古の販路がなさすぎる
ご存知とは思うが、同人誌はほとんどの古本屋で買取どころか引取すらしていない。バーコードどころか、ISBNコードという商業本に必ずついている管理コードが付いてないからである。
昭和20~30年代くらいまでの商業本にはそういうコードは付いてないので、それらと同じ扱いという事だろうか。
もちろん需要あるところに市場は生まれるもので、同人誌に強い古書店は存在する。有名所だと「駿河屋」「まんだらけ」だろうか。しかし前述のように刷られた数が少なすぎるので、そういったところへ入荷する事は、極めて稀である。
さらに買取時にほとんどプレミアが付かず二束三文(1冊10円付けば高い方らしい)な事も多いようで「持ち込む送料の分だけ損をする」という言説すらある。
最近ではネットオークションやフリマアプリも全盛だが、やはり出品する手間と価格が釣り合ってないと言われている。
こういった事情から、中古同人誌はほとんど廃棄されてしまう。
3.図書館でも読めない。
同人誌の場合、コミケに参加していれば見本誌として提出され、米沢嘉博記念図書館という所へ保管される。件の本を出していたサークルもコミケへ参加(鉄道系サークルとしてはかなり黎明期にあたる)しており、ほぼ確実に保管はされていると推測される。
しかし、この図書館の本は読む事ができないのである。
直近の開催で提出されたものは「見本誌閲覧会」として機会が設けられるが、それをすぎると永久保存するべく保管へ廻ってしまうようなのだ。
趣旨を考えれば仕方ない。
どうしたらいいのか
以上のように「如何に入手が難しいか」を列挙してきた訳だが、ここで自分が今後取りうる選択肢も並べる。
a.作者本人に融通を打診する
「いきなり凸とか何考えているんだ?」と思われそうだが……
冒頭の雑誌で掲載されていたものには続きがあり、作者の個人情報が平然と記載されているのである。
現在のように書店委託(メロンブックス等)通販が一般化するまで、個人情報を交換して融通する「自家通販」が極めて一般的で、それしか方法がなかったのである。僅か25年前の話だが、今や信じ難い事である。時代の変化が早すぎると言える。
しかしそんな昔の住所では「もう住んでない」という可能性もかなり高い。
以上から、これは2021年現在からしたら取りうる手段ではない。
b.市場に出てくるのを待つ
前述の同人誌系古書店や、ネットオークションへの出品を待つというものである。どちらも過去に存在した形跡があるので、取りうる手段としては現実的なものであるが、かなり長い目で待たなければならないだろう。
c.所持している人から譲ってもらう
この同人誌むっちゃ気になるんだよなーコミケ鉄道島の歴史にあるサークルの一つ……如何せん同人誌は後から手に入れるのがほとんど不可能に近い pic.twitter.com/xpZZabMqmn
— しーさいど (@SeasideExp) February 17, 2021
結論から言えばこれも現実的でない。
先の「この同人誌読みたい!」をTwitterに書いたところ多くの反響があって、今もなお持ってるという人や、そもそも表紙のイラストを描いた人も判明するに至った。
しかし、同人誌は内輪で作られるものである事を思えば、当時を知る人々の手で今も大事にされている本は「極めて幸せ」であり、そこに入る余地は自分には存在しない。
自分の同人誌を出している側なので、これは本当によく分かる。
おわりに
閲覧させてくれるという方がいれば「見せてもらいたい!」とは本音であるが、大事にされてる本はそのままで居て欲しいとも思うわけで、極めて難しい問題である。
「本が手に入るのは縁である」とも言うので、自分としては市場に出てくる、あるいは古書店で見かける機会を待つ構えであるが・・・
追伸
今こういう「読みたいのに読めない」という状況に自分が陥っているので、もし後世でどうしても読みたい人が居た場合に備え、自分の同人誌は国会図書館へ納本(寄贈)している。
納本(金銭収受を伴わない寄贈)に関しては他の方もTipsを書かれており、同人誌を出している方なら決して高くないハードルなので、オススメしている。
追伸2
ご縁がありました
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