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インド人と仕事をするときに(その2)


魅力(?)その2:お金好き

語弊がありますが、インド人って、お金の話が好きです。

インド人の会議に行くと、経営系の会議はもちろんのこと、技術者の会議であろうが、人事系の会議であろうが、議論の中で必ず「いくらもうかんねん!」「どんだけお金かかんねん!」みたいな話が出てきて、そこは必ずいろんな人がいろんなことを言いだして、めちゃくちゃ盛り上がります。そして必ずみんな電卓を取り出して、わんさか数字の計算を始めます。

日本人だと生々しいお金の話ばかりするのは憚られるところですが、どうも、インドにおいては、コストや利益などはどんな場合でもネゴシエーション、議論が絶対に必要なもの。むしろお金についてのワイワイガヤガヤやるのが当然みたいな感じです。

ムンバイのオフィスでかつての同僚たちと。右端が筆者

例えば以前、数百万円の超急ぎの会計コンサル案件をインド本国に持って行ったことがあります。提案したコンサルタントは日本人だったので、金額がさほど大きくないことから、値引きを想定せずに(本音ベースで)提案してきたのですが、インド側は(きっと彼らにとってはとても小さい金額だったと思いますが)意外と、非常に厳しい交渉を挑んで値引を迫りました。結果的にコンサルタントも渋々あきらめて多少の値引きは実現し、しかしそんなこんなのやり取りで1か月程度仕事が止まったので、この場合は冷静に考えると機会損失のほうが大きかったのですが、インドのカウンターパートは

「俺のおかげで40万円も値引きできたぞ」

と大変得意げで、正直ずっこけました(40万円も大事ですが、こちら側は時間が経つとより大きな案件がぶちこわしになるかもしれないと焦っている場面だったので)。

思い返すと、道端の商店での買い物から、このような上流のビジネスーシーンまで、インド社会のあらゆる場面で、ネゴシエーションが繰り返されており、それには大変なエネルギーと時間が費やされているように思います。

以前ムンバイに行ったときに、運転手さんが(勝手に)土産物屋に連れて行ってくれたのですが、その中の絨毯屋さんが必死に絨毯を売り込んできました。「うちのは超高級品、とんでもなくハイクオリティなので、ほかの店では何十万円もするけど、うちは産地とコネクションがあるから、特別に5万円で売ってあげる」と。

我々日本から来ているので、そもそも絨毯など持ち帰れるわけはないのですが、おもしろいので、「2000円にして」「いや4万円」「5000円」「3万円」といったり来たりの交渉をやってみて、でも流石に絨毯を持ち帰りはしたくないので「ごめん、やっぱり買えない」といって立ち去ろうとすると、物凄い勢いで引き止められました。「他の店では絶対にこの値段で買えないよ」「ほら、この生地は本当にクオリティがいいから。ムンバイ中どこを探しても見つからないよ」「この柄が気に入らなければこっちはどうだ。あんたのワイフも気に入るに違いない」「ほかの店では何十万円もするけど、うちは特別なコネクションがあるから、すごくに安いよ」「あっちの柄はどう?あんたのお母さんに。まとめて買うとディスカウントするよ」

エンドレスでなかなか離してくれなかったのですが、この執念は本当にすごいと思いました。日本人なら5000円のものを5万円で売ろうとすること自体、交渉のやり方としては大変。買う側も売る側もものすごく時間と労力が必要で、日本人ならば、まあ限られたケース(たとえば秋葉原や日本橋で電気製品を買うとき以外は・・・まあ、これも今どきは現地で情報を得て、ネットで購入する人も多いのでしょうが)を除いては、ほどほどにしないと無駄じゃないか。と思ってしまいます。

しかしながら、インド人にとって、ネゴシエーションの過程そのものが文化的に必要なもの(たとえは悪いですが、イギリス人にとってのユーモアのセンス、日本人にとっての礼儀正しさ)として組み入れられているようにも思いますし、「取れるところから取る。妥協せず取る」という徹底した姿勢はビジネスシーンでは日本人には若干欠けているところではあるので、その意味では見習う部分も多々あると感じます。

きっと、インドから見ると日本人がお金に対しあっさりしすぎて、面白みがない。不思議とみられているのだと思います。

会議で訪れたゴアのホテルで





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