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街にアルビというサッカークラブがある喜びを忘れない〜肩を落とすのはやめよう


新潟にはとても美しいスタジアムがある。
冬には白鳥が飛来する、自然豊かな鳥屋野(とやの)潟という湖沼の脇にそびえる、白いスタジアム。
その名も「ビッグスワン」。
どこから見てもでかいし、映える。とても大好きな建物だ。
2002年に開催された日韓W杯のために建てられた。完成はW杯の前年で、ことし、20周年の記念日を迎えたばかりだ。

さてこのすばらしいスタジアムで、J2アルビレックス新潟が死闘を繰り広げている。
そう、J2は昇格・降格争いがいずれも僅差で、まばたきもできない状態になっているのだ。
9月11日、アルビ(県民の愛称)は白星を逃した。隣県のモンテディオ山形を迎えての大事な一戦だった。
昇格圏内と勝ち点差が2桁に開き、とても厳しい状況になっている。
もちろん勝ってほしかったし、まだまだ行けると思わせてほしかった。
良い場面もたくさんあった。


でも勝負の世界だ。

どちらかは負け、どちらかが勝つ。
私がここでどうしても書きたかったのは、このこと。

「でも肩を落として歩くのはやめよう!」


試合終了後、選手たちが場内をまわって、サポーターにあいさつをする場面がある。
この日、選手たちは結果をひきずってか、肩を落としてうなだれ「あいさつしたくないけどしに行こう」的な雰囲気をまとっていた。
それはあまり見たくない光景だった。
なんだかわからないけど、涙が出た。

私たちは応援したくて、ここに来ている。
ウイルス対策のルールで、声は出せないから、拍手しかできない。
拍手だけを武器に、9,000人ものサポが集まって、勝利を願った。


勝負だから、負ける日もある。
けど、落胆した姿やがっかりした感じを見せるのはなしだと思う。それはロッカールームへ退がってからお願いしたい。
なぜなら、選手達はヒーローだから。ヒーローであってほしいから。
子ども達も見ているし、若い下部組織だってある。
お父さんが子どもに弱いところをみせないように、サッカー選手はサッカー選手らしいかっこよさを、サポーターの前に見せ続けていてほしい。

負けたっていい。


J2リーグを戦うことは何も恥ずかしいことじゃない。
その年の結果が良ければ、J1というとんでもないご褒美が待っているだけで、たどり着けないならまた頑張ればいい。
こんなに愛されているのだから。あなたたちがかっこ悪いわけがない。


私はEスタンドからななめ向かいのビジター席をぼんやりと見ていた。
喜びに揺れる青い旗。アウェーの勝利は格別だ。
とてもうらやましく、素敵な光景だと思った。
みんなと喜びを共有したくて集まる、同じ目的をもつ仲間。
サッカーがなければありえない、仲間の輪がそこにある。

私が最後に山形までアルビを応援しに行ったのは2018年の夏。蒸し暑い会場で、素晴らしい勝利を収めた。見知らぬ仲間とハイタッチで喜んだ。

そのときお腹にいた男の子は2歳半になり、私に連れられてサッカーを一緒に見る。「だんまれ、だんまれ〜(がんばれの意)」と言いながら、応援のマネをしている。


アルビが街にあることで、「週末はホームだから予定いれないでおこう」とか、
「きょう試合だから道が混んでいるな」とか、生活とサッカーが密接した暮らしを送れる。
駅や近所のスーパーにはオレンジの旗が揺れている。
別に好きな色でもなんでもなかったけれど、サポーターにとってオレンジは特別な色だ。
それも、街にアルビがあるから。


試合の日、サポーターはみんな早く来て、スタジアム隣の「スポーツ公園」で憩う。水辺でご飯を食べたりデートをしたり、犬を散歩させたりして楽しむ。行ったことないけど欧州みたいだ。
サッカーがくれた文化が、確かにここに息づいている。


それを見ているだけで、幸せな気持ちになる。憧れていた光景が、目の前にある。

その文化の中心にいる、アルビレックス新潟というサッカークラブ。
とっても愛されている、すばらしい選手たち。
まだ、肩を落として歩く時期じゃない。
まだ、9月中旬。12月までシーズンは続く。
全部見に行くから、最後まであきらめないでほしい。



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