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海の上で花を生けている話

花が好きです。

しかし恥ずかしながら花の名前とかは分からなくて、お店の人に聞いても3ヶ月くらいしたらまた忘れています。桃と梅の違いとか、牡丹と芍薬の違いとか、頻繁にインターネットで検索してしまう。

それでも、そんな私でも、部屋の中に花があるというのは、自分以外の生き物がそこにいるという安心感は、海の上での孤独に対してなかなか支えになるものです。

病んでるわけじゃないですよ。昔の船乗りさんだって、犬とか猫とか、鳥とか、魚とか。船の中で飼っていたでしょう?きっと。孤独なんですよ、海の上って。最近はそれが心地いいけれど。

そうそう、そして枯れてきたらそっと、誰もいないときに、海に返します。そんな生活をここ2年ほど続けています。

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海の上で感じる四季はもちろんありますが、陸でしか感じられない四季って、案外多い気がします。お花なら、陸の世界の四季を海の上にも持ち込めるじゃない。

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あんまりにきれいで途中からドライフラワーにしたセルリアです。

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紫陽花を買ってきたときは、花が咲くのが毎日毎日楽しみで…

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2週間後くらいでしょうか、きれいな青い花が咲きました。

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そんな私を見かねて、いえ、気遣って、港で落ち合った友人がお花をくれたことがありました。こんなに嬉しいプレゼントは、かつてもらったことがなかった。

しかもこの日はなんと、私も彼女に小さなブーケを用意していました。こんなことってあるでしょうか。花を持った私と彼女が待ち合わせ場所に訪れたのは今でも頬が緩む思い出です。

そういえば、花は枯れたら寂しくなるから部屋には飾りたくないな、と花を持って歩いてる私に上司が声をかけてきたのともあったな。

ほんとだよね、その通りだよね。でも一度花のある生活を知ってしまったら、花が枯れてしまう寂しさより花のない寂しさの方が勝ってしまうかも。なんとなくだけど。

それに私、花が枯れても海に返すから、不思議と寂しくならないし。

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さて、花は咲く場所を選びませんが、私は活ける場所を選びません。ペットボトルに花を突っ込んでばかりでしたが、この時はころんとしたフォルムの3輪のお花たちがとても愛おしく思えて、なんとかこの形を生かしたいと綿棒の空容器に活けてみました。

ものが限られる海の上、使えるものはなんでも使って面白おかしく暮らさなければならないし、花も美しく活けなければなりません。

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さて、これは最近の写真です。ハイネケンの瓶を手に入れてから私の生活は一変しました。ペットボトルに活ける1億倍美しいのです。なんでもっと早くこうしていなかったんだろう。

外出自粛の影響で、港港で飲み歩く近年の私のスタイルを断念せざるを得なくなった私はマックスバリューでお酒を購入することを覚えました。しかも瓶のお酒を。

たまにこの瓶はハートランドに変わったりもします。

さてさて。そしてここからは今日の出来事。今日中に、この気持ちが色褪せないうちに書いておきたかったこと。

仕事が終わってか、何度か足を運んだことのある港のお花やさんに行きました。港港に男はいないけれど、港港に行きつけのお花屋さんやカフェはたくさんあるんです。あと推しのマスターとか。

本当は紫陽花が欲しかったけれど鉢植えだけだったので、太陽みたいなガーベラを一本だけ購入。

「切って持って帰りますか?どのくらいの長さがよろしいですか?」

あんまり長いと帰り道の自転車で風圧を受けて可哀想だし、短くて瓶の首に花弁が乗っかってしまったら不格好だし…

「あの、ビール瓶に活けてるんですけど…あっでもビール瓶って言っても大瓶ではなくて…」

しどろもどろ説明をすると、店員さんが笑顔で

「わたしも家のお花はビール瓶に飾ってますよ!ハイネケンです!」

「ハイネケン!ハイネケンに活けるといいですよね!花も映えるような気がします…」

「一輪挿しにちょうどいいですよね〜、ハイネケンサイズで切っておきますね」

そう言ってもらい私の可愛い本日のガーベラはハイネケンサイズになりました。

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あ、いまはハイネケンではなく誕生日に入手したEFESなんですけど。とにかく可愛い。お部屋がパッと明るくなったみたい。花瓶のEFESもトルコの太陽を運んでくれているような気分になります。

店員さんとそんなやりとりをして、わたし、なんだかとても嬉しかった。花を活けることは花と私だけの、閉鎖的で完結した空間での話だと思っていたから。

素敵な花屋さんでお花を売ってくれた笑顔の素敵な店員さんが、私と同じようなおうちでビール瓶に花を一輪活けている。それだけで、もう、このガーベラと私だけの世界じゃなくて、少しだけ外の世界に、陸の世界に繋がっているんですよね。

そうだよ、だって素敵な友人にちいさなブーケをもらった時だってそれは一緒だったじゃない。

そんな出来事があって、これは今日のうちに絶対に日記にしておきたかった。だって明日の朝起きたら変にクールぶってまた花と私だけの世界に戻ってしまうかもしれないから。明日の朝見たら、なんじゃこれって恥ずかしい気持ちになるのも目に見えているんだけど。

太陽みたいな小さな私のガーベラが、嬉しい気持ちを部屋まで運んでくれたこのガーベラが、いつもよりちょっとでも長生きすればいいなと願ってやみません。

そしてきっと私はこれからも、少しキコキコと言う自転車を漕いで、忘れた頃に新しい花を買って帰ってくる生活を続けるでしょう。

散文にお付き合い頂きありがとうございました!


追記

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実家の勉強机に鎮座しているひょうちゃんです




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