見出し画像

1.1 コロナと医療

新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、日本の医療はどのように影響を受けているのでしょうか。


「コロナにかかって体調悪くなったら病院に行くんだから、もちろん医療は影響を受けているでしょ?」

そう思いがちですが、具体的にどのように医療従事者の方々が、物資が、病床数が、もともと通院していた方々が、病院の経営状況が影響を受けているのか知っていますか?
私はよく知りませんでした。
私のように意外とよく知らないなと思った方へ!
今回は日本の医療がどのようにコロナウイルスの影響を受けているのか調べてみたので、大きく3つに分けて紹介します。

①医療崩壊のリスク

はじめに、医療崩壊がどのように定義づけられているのか、医療崩壊とは何なのか見てみましょう。
神奈川県医師会はこのように医療崩壊を定義しています。

救急医療や手術を始めとする「本来あるべき医療ができない」こと


<もし医療崩壊が起きてしまったら?>
- 病床数の不足
- 人工呼吸器などの医療機器の不足
- 医療従事者の不足
などが医療崩壊が起きた時に考えられる主な影響だそうです。

たとえ医療機器が十分に確保できたとしても、人工呼吸器をつけている患者さんには看護師が4人、人工心肺をつけている患者さんには看護師が最大10人も必要となります。医療従事者が不足していては機械の供給が十分でも、その機械を使った医療の提供はできないのです。
ここからわかるのは、何かひとつでも足りていなければ医療現場は回らないということです。

②病院経営の悪化

2019年4月の時点で赤字だった病院は約半数ですが、2020年4月時点で赤字の病院は7-9割ほどに増えているそうです。
このデータが何を意味するのかというと…
日本国内の多くの病院が新型コロナウイルス流行前から赤字なのにも関わらず新型コロナウイルスの流行によってさらに多くの病院が減収している。 

いわゆる“経営悪化”です。

<なぜ新型コロナウイルスの影響で経営が悪化しているの?>
①収益の減少
- 感染予防の為もともと来院していた患者さんの手術や入院の予定が延期された為
- 患者さんが感染予防によって来院しなくなった為
②コストの増加
- 感染予防用の備品購入をする必要がある為

また、新型コロナウイルスに感染した患者さんを受け入れた病院の9割が赤字状況にあるといいます。

<病院の経営が悪化するとどうなる?>
閉院してしまう病院が増え、病院が減ってしまう。これは、受けられる医療が制限されてくるということにもつながります。現在もひっ迫している医療の状況をさらに悪化させる要因にもなります。


③他疾患への影響

新型コロナウイルス感染症の方に意識を向けがちですが、パンデミックが始まる前から他の疾患で通院していた方や、パンデミック中に病気を発症した方もいること、忘れがちだと思います。(恥ずかしながら私もその一人でした。)

※これから話すことはアメリカの実例になってしまうのですが、日本含め世界で共通して起こり得ると懸念されている、また、起こっていることだと思うのでそれを踏まえて読んでいただけると幸いです…

アメリカでは、新型コロナウイルスの流行が深刻化するにつれて脳梗塞、心筋梗塞、心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、虫垂炎、肺炎などの命に大きく関わる疾患の入院患者数が減少しているそうです。
これは、患者さんが新型コロナウイルス感染のリスクによって受診を警戒しているからだけではなく、病院が新型コロナウイルスの対応によってこれらの疾患への対応が十分にできていない為でもあります。
また、アメリカでは新型コロナウイルスの流行以降、がんの診断数も減少しています。

<これの何が問題なの?>
脳梗塞、心筋梗塞、心不全、COPD、虫垂炎、肺炎、がんを患った患者さんの人数が突如減少するわけはないので、それらの疾患の治療がきちんと受けられていなかったり診断を受けていない患者さんがいる、そしてその人数が新型コロナウイルス流行以前より多いということになります。

= 本来受けることのできた医療を受けられていない人が増えた 
ということになります。

実際に日本でも集中治療室の病床数確保の為、緊急性のない手術は延期されているそうです。これって「医療崩壊」なのでは…

さいごに

新型ウイルス感染症の流行という経験したことのないことばかりに気を取られがちですが、世の中の疾患はコロナウイルス感染症だけではありません。「新型コロナウイルス感染症」という新しい未知の疾患のために他の疾患に苦しむ人たちが十分な医療を受けられない。これは医療従事者の方々のせいでも、新型コロナウイルスに感染してしまった人のせいでもありません。医療従事者の方々は、今ある物資と病床数の中で最善の医療を提供してくれていますし、その為にたくさんの努力もしてくれています。いくら万全な感染予防をしていても、感染を100%防げるわけではないので、感染したことが完全にその人のせいとも言えません。

ではこの場合はどうでしょうか。マスクを正しく着けず、不要不急の外出を控えることなく外出し、密な環境に自ら足を運ぶ。その結果新型コロナウイルスに感染してしまった場合。感染予防を徹底していない結果の感染です。感染予防を徹底すればある程度の感染リスクは減らすことができます。自分のできる最善の努力をしないことで、防ぎ得たかもしれない疾患のために十分な医療を受けられない人たちがいる。

このように考えれば日頃から自分のできる最善の感染予防をしていくことでどれだけたくさんの人が救われることになるのか想像できると思います。

この文章を書く上でリサーチをしていて自分や周りの人たちが必要な時に適切な医療を受けられるように、そして医療従事者の方々の負担を少しでも減らすことができるように、防げる感染は私たちの努力で防いでいきたいと思いました。

そして医療従事者の方々に限らず日々新型コロナウイルスという未知の存在と最前線で戦ってくださっている方々に感謝をしていきたいと思います。


私が読んでハッとした記事です。是非読んでみてください。


参考文献

“TOP.” 公益社団法人 神奈川県医師会, 22 Dec. 2020, kanagawa-med.or.jp/corona_news/%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B/.
忽那 賢志. “新型コロナによる医療崩壊で何が起こるのか(忽那賢志) - Yahoo!ニュース.” Yahoo!ニュース 個人, Yahoo!ニュース, 24 Nov. 2020, news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201121-00208818/.
“新型コロナによる病院・医療現場への影響――今私たちに何ができるか.” 良質な慢性期医療が日本を強くする!慢性期.com, 22 July 2020, manseiki.com/news/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%97%85%E9%99%A2%E3%83%BB%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E2%80%95%E2%80%95%E4%BB%8A.
“新型コロナの影響で全国の3分の2の病院が赤字転落、東京都のコロナ患者受け入れ病院では9割が赤字―日病・全日病・医法協: GemMed: データが拓く新時代医療.” GemMed, 7 June 2020, gemmed.ghc-j.com/?p=34311.
日本放送協会 . “新型コロナウイルス‘第三波’ 迫られる‘命の選択.’” NHK クローズアップ現代+, 3 Dec. 2020, www.nhk.or.jp/gendai/articles/4491/.
日本放送協会 . “緊急性低い手術延期など緊急要請 集中治療室確保で 神奈川県.” NHKニュース, 2 Dec. 2020, www3.nhk.or.jp/news/html/20201202/k10012743001000.html.
森下記念病院 . “BLOG第3回 新型コロナウイルス感染拡大で懸念される医療崩壊について.” 森下記念病院, 23 Apr. 2020, www.morishita.or.jp/wp/update/2020/04/199.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?