社内SEの事件簿①・・・デジタル化の功罪
「仕事にならないんだけど!!」
年に何度か、この手の連絡が携帯を通じて我が耳に届く。
昨今、デジタル化を強く推し進めた結果、人間の記憶力は確実に落ち込んでいる。
「昔はお客様の電話番号や無数の商品コード、丸暗記してたんだぞー」
・・・と、ある部長に自慢されたのが懐かしい。
また、手書きのお客様情報・資料・伝票はパイプ式ファイルもしくは段ボールへ格納・・・どこに何が保管してあるか、全て頭に入っている・・・そんな人はとても重宝されただろう。
しかし2021年現在、落ち込み傾向にある人間の記憶力や膨大なペーパーを省エネ化するデジタルツールが猛威を振るっている。
情報は全てクラウドへ・・・
人間の頭の役割も変化している。ただの記憶に頭を使うのはもったいない。記憶なんてものは得意なサーバー達に一任し、人間の頭のリソースは想像力やコミュニケーション、洞察力に消費されるべきだ。
それにペーパーだって保管するにはスペースいるし、インク代、コピー代のコストだって積み重ねりゃ莫大だ。全部データ化してクラウドに上げ、必要な時にパソコンの画面に表示されればそれでいい。職場はスッキリ!経費もスッキリ!
めでたし、めでたし・・・
・・・ってなるはずなのだが、人間の記憶力削減とペーパーレス化の代償として、年に数度必ず起こる危機に、人間は大パニックとなる。
たった1個のトラブルで・・・
「仕事にならないんだけど!!」
デジタルに頼り切った人間の、魂の叫びだ。
■ネットワークトラブルで全てが終わるビジネスモデル
年に数度は起こるネットワークトラブル、原因は様々だ。
〇停電・・・デジタル機器にとって致命的
〇大規模ネットワーク障害・・・社内SEにはどうすることもできない
〇電柱から伸びてる線、物理的に切っちゃった・・・社内SEにはどうすることもできない(無理)
・・・etc
お客様の情報の在りかは分かってんだよ!あそこにあるんだ!空の上!でもね、そこに辿り着けねーんだよ!ネットワークが駄目になると・・・どんな技を駆使しても無理なんだよ、ネットワークが死んじゃうと・・・
普段、デジタル化だのIT化だの興味ねー、ついていけねーなんて言っている皆さんも、この時ばかりはこぞって言う。
「パソコン使えねーから仕事になんねーんだけど!」
普段の言動と矛盾してるな~、気持ちいいくらい矛盾しまくってるな~
でも・・・その気持ち分かるな~すごく分かるんだよな~
だって本当に何もできない・・・
人間って無力なんだな~、停電起きると
社内SEって何にもできないんだな~、インフラ業者がトラブルと
人間の限界って案外すぐそこにあるんだな~、電線切れるだけで
デジタル化を強力に推し進めた結果、年に数度必ず起きる危機に直面したとき、人はな~んにもできなくなるという能力を身に付けてしまったのだ。
■危機は必ず来る・・・大事なのはその時何をするか準備しておくこと
二重化、冗長性、バックアップ・・・便利な言葉はたくさんあるけど、いざトラブルが発生したとき、駄目になる時は駄目になる。
今後、どんなに技術が発展したとしても、それ相応のネットワークトラブルは間違いなく起こるだろう。責任者は二度とこんなことが起こらないように・・・そんな言葉を言わざるを得ないが、でも間違いなくトラブルは起こってしまうもの。
責任をもって絶対にトラブルの起きないシステムを構築してください!・・・もしそんなことを言う人がいれば、その人は間違いなくITの世界を分かっていない人だろう。
もちろんトラブルは起きて欲しくない・・・でもトラブルは必ず起こる・・・
ならば、トラブルが必ず起こるものと認識しておけばいい。そうすればその時の対処法も予め準備しておくことができる。そうなってしまったとき、どうするか・・・を。
トラブル発生した時に、
〇代替案としてこんな風に仕事を進めようと予め決めておく
〇その環境下でこんな仕事をするためには、普段どんな準備をしておかなくてはいけないかを考えておく
〇パソコン使えなくなったら、これをやろうと決めておく
・・・etc
担当部署によってやることは変わるが、どの部署にも共通して言えるのは、トラブル時に備え、予め準備しておくということ。
また、こんなこと困った、こうしておけば良かったと、トラブル時の経験値は今後の糧となるだろう。
ある時、停電でパソコン使えなくなった時、ある人が、
「せっかくの機会だから、身の回りお片付けしようっと」
そう、”のほほ~ん”と言ったのを聞いて、妙になるほどな~と思ったことがあった。人間、どんな状況でも考え方次第でポジティブになれるものだ。
デジタル化によって生み出された新たなる課題、それにどう対処するかを考えることも、デジタル化・IT化・DX化に必要な作業の一つなのだ。
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