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子ども向けサブスクリプションサービスで起業したきっかけと今

はじめまして、株式会社トラーナの志田と申します。現在私達は子ども向け玩具の提案型サブスクリプション・レンタルサービス「トイサブ!」を提供しており、国内でおよそ2,000世帯のお客様にお使いいただいていています。お客様との継続的なやり取りを通じてサービス提供をしていく「サブスクリプション」が定着し始める2018年より前の2015年、おもちゃのサブスクリプションということでつけたサービス名である「トイサブ!」は様々なメディアで注目いただき大きく成長できています。どんなきっかけや思いでやっているかをまとめました。

一番根底にある、子ども関連分野への起業のきっかけ

私は起業することや社長になることは一切夢見ていない10代を過ごしていました。夢の職業は「樹木医」であったことを覚えています。大学でエネルギーと環境という授業がとても楽しく、環境については考える機会が多かったです。幼少期から10代までは貧しい生活で、中学に途中から行くことが難しくなり児童養護施設に入所していました。そこからアルバイトで高校、大学と学費を稼ぎながら無事大学を卒業出来ました。この幼少期から10代までは家族の触れ合いを感じる機会が少ない中で、他を見ると親と子どもというつながりが必ずある世界に生きている友達を見て私の家族はどこにいるんだろうと思いながら生活していました。今考えると子ども関連の事業を起業したのは、こういった小さい頃のネガティブな経験をなるべく減らしていきたいという思いが自分にあったがゆえに今に至っているのだと考えます。

人生を変えたビジネスとの出会い

私は明治大学法学部に入学後、学内のコンビニエンスストア(明大マートといいます)で働き授業に行き、またそこに働きに戻りながら夜は別のアルバイトをする生活をしていました。大学2年生のころ、夏休みに何かしようと考えて色んな活動を探していたところ、「7泊8日の合宿形式。ビジネスについてチームで議論し社会人に向け最終日プレゼンする、ビジネスに触れる夏」という見出しで参加者募集をしていた「学生のためのビジネスプランコンテストKING2005」というイベントを見つけました。全国から学生が集まるということで非常に興味があり応募、無事参加出来ることになり、はじめてそこでビジネスという単語に触れました。青少年オリンピックセンターで行われた7泊の合宿では今まで会う機会がなかった全国の学生と班を組み議論し、最終日に社会人に向けてプレゼンをしました。その時は「マクドナルドの店舗スペースを保育事業に組み替えられるよう改装し保育事業に新規参入する」という案が最終案でした。今思うと使われていないスペースを有効活用するという当時では新しいアイデアだったと思います。深夜まで議論し、中々進まないときには苛立ちながら、最終日を終えたあとは班のメンバー、企画の学生団体と涙ながらに感動の宴をしていました。これが私の最初のビジネスとの出会いで、翌年のKING2006では企画側として参加し、その後学生起業でこのサークルの友人とデザイン会社を起業しました。この学生団体ではユーグレナの出雲さん、ラクスルの松本さん、他にも数多くの起業家を輩出しています。これが私の人生の転機だったと思います。起業の原体験は友人と作ったこの学生起業でした。

起業のきっかけ

3年程度でこの会社は友人に譲渡し、起業をともにした仲間たちは別の環境を知ることも大事であると会社に就職しました。私も一度は社会人経験をと思いセキュリティソフトウェア開発の会社に就職し、転職をしていく中で、30歳のときに料金システムの会社に勤めることになります。ここで「アメリカは決済システムが進んでいる。その理由はサブスクリプションというビジネスモデルで柔軟な課金システムが求められるようになったからだ」とカナダの同僚に話を聞きました。調べていくうちに、アメリカではサブスクリプションモデルによってお客様に継続的に使っていただきながら関係を作っていくというのが主流になりつつあり、洋服や化粧品、食品分野で非常に進んでいるということを知りました。2014年の頃です。ちょうど第二子が生まれた私は「何かサブスクリプションモデルを日本で展開出来ないか?」と考えるようになります。そこで子どもにおもちゃを買ってあげようと家電量販店に行ったときのことです。「こんなに数があっては選べないし、良さそうなおもちゃはあまり扱われていない」「良いおもちゃは専門店にあるが気軽には行けないし試せない」「家が狭いからあまり買えない」といった課題を考え、私は買わずにお店を出ました。その後先述の学生団体の頃の友人と会話する中で、「おもちゃをサブスクリプションで提供すればいいのではないか」というアイデアが出ました。私はアメリカで先行しているサブスクリプションと課題認識を持っている玩具という組み合わせから、「トイサブ!」を思いつき会社を作り事業を立ち上げることにしました。このときはまだ会社に勤めている副業状態で、夜に帰ってはシステムを組み準備をしていました。最初のお客様の注文は今でも覚えています。注文後に大慌てでプランを作り発送準備をしました。その後大きくお客様が増え、今は独立し事業拡大に邁進しています。

経営するにあたって心がけていること

会社を経営していくにあたって大きく3つの視点で心がけていることがあります。
1.「お客様は常に正しい」
2.「社内では自律と尊重を重んじる」
3.「社外への説明透明度を高める」

1はお客様は神様ですという言葉のように見えるかもしれませんが、全くそうではありません。お客様がサービスを通じて満足したこと、不満に思うこと、それは常に事実であり、事実は常に正しいという考えです。お客様とは私達のサービスを選び、お金を払っていただいている方です。もしそのお客様に対して何か違うなと経営者が思うとき、それは経営者が思っている世界観を正しく伝えられていないときです。そういったギャップが生まれないように、常に経営者は自分の実現したい世界を、Webサイトやサービスのデザインによって伝えていく必要があります。私は考えられる限り表現しているつもりで、その結果お客様とお会いすると「なんていいお客様なんだ」と思うことしかありません。私達も完璧ではなく、稀にサービスに対する不満を仰るお客様もいらっしゃいます。至極まっとうなご不満であることが殆どで、そのときも「なんていいお客様なんだ」と思います。

2は長い時間海外に本社を持つ企業で働いてきてずっと感じている、大事にしたい価値観です。自律は自分で考えることを促す意味で、その上で行動してもらったことは尊重し否定や批判はいったんお休みして事実が出るまで待ちます。基本的に私は社内のメンバーが言ったことに対してなるべく「いいんじゃないですか」と言うようにしています。それは意味がないですとか、根拠ない否定批判は言わないことを心がけています。意見をくださいと言われれば意見をしますが、ご本人が決めたと思っていることはそのとおりやってもらうようにしています。「こうする・こうしたい」は覚悟だと思っており、覚悟をもった言葉は何よりも強く、強い言葉には実現可能性が伴っていると感じます。自分の言うことはよく否定されますが、仲良し内閣でチームを作っていない、良い結果であるといつも思います。経営としては誰かがやりたいと思ったことが取れるリスクの範囲内で実現してもらえるようリソースを確保出来る体制、こうしたいと思ってもらえる・発信しやすい・それを個人的な感情で潰す人がいない環境を作っておくことが大事だと思います。こうするという覚悟が違う覚悟とぶつかってしまったときには事実に基づいてどう納得して妥協するかが大事だと思っており、アメリカのニュース番組で”compromise”という言葉がたくさん出てくるように、良い妥協を組織の中で見つけてほしいと思っています。

3は当たり前のようでとても難しい、やりがいのあることです。社外とはお客様も、投資家も、取引先も含めます。透明性というのは言うには簡単ですが、例えば「解約方法がわからない」であったり「どんなタイミングでどんなものが届くのかわからない」といったサービスに関することもそうですし、「事業で最重要なKPIとその現状、課題と解決プラン」「財務状況におけるキャッシュフロー計画」といったものもそうです。わかりやすさとかシンプルとかそういった言葉を述べることは簡単ですが、言語化しすぎても文化によってはイラストのほうが伝わりやすかったり、文字に不慣れな世代が出てきたりと時代によってわかりやすい説明は違います。また数字にしていく過程も簡単ではありません。

経営における良いこと、辛いこと

良いことはチームのみんなが会話して笑っていることです。本当にすごいと思うのですが、最初は他人同士だった人たちが会社を通じて繋がって会話し、自分がいないところで笑顔で話をしているというのは何にも勝る嬉しいときです。逆に誰かが誰かを個人的な感情で否定・批判しているときは悲しくなりますし、そういう環境をなくせるよう努力していかなければならないなと思います。また当然のことではありますがお客様にサービスを満足してお使いいただき、ブログやSNSに上げていただいているのを見るのも、自分の世界観が世に受け入れられて世の中を良くしている気持ちになります。自分に感謝されるよりも自分のアウトプットに感謝がされているのを見るのはとても嬉しいことです。

辛いことは幸いにもそんなにないと思っています。一つあるのは子どもたちから「パソコンと結婚すれば?」と言われることです。経営者は会社に対して多額の資金投入と個人による保証、第三者から資本提供いただいた際には大きな結果責任を伴います。事業の伸びが少しでも悪くなると長時間寝られなくなり、「今何か出来ることはないか」とパソコンを開いてしまい、子どもと向き合う時間が明らかに減少しているのは少しつらいです。この前娘の夏休みの絵の中でお父さんだけいない状況になっており、大きく反省しました。

今後の展望

まずはこのトイサブ!事業を大きくすることです。私は事業とは短い間に大きく投資しすぐに撤退するものではなく、意固地になって取れるリスクの範囲で粘るものだと考えています。その先にはどんな世界を作ろうか、まだ不透明です。ただ自分の幼少期のような、親子の関係がない・希薄である世帯をなるべく減らすような社会を作っていくための事業にチャレンジしたいです。小さい頃、親と釣りに行ったりキャンプに行っている友達はとても羨ましかったです。他には旅に行ったり、カラオケに行ったというようなこともいいなあと思っていました。会社のビジョンは「幸せな親子時間を作ろうぜ」というのを標語にしています。それを実現できるようならどんな事業にもチャレンジしたいと思います。親子時間とは余暇の過ごし方にあるようにも思っており、そこに次の事業の種が埋まっているように思います。まず自分の子どもと余暇をきちんと充実して過ごすようにして、事業のことを考えていくのが親として、経営者として必要だと考えます。自分で作った会社の標語を広め具体化する中で、よりよい社会にしていくことが自分の経営者人生の長い目標になっています。

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