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太平洋序曲 -山本×海宝×立石-

開国を迫られた日本。
その様子や、その事件に翻弄される日本人たちを、西洋のクリエイターが描く。

私は、この作品の上演が今回発表されるまで、これまでの上演歴を知りませんでした。
純粋に、「面白いな」と興味を持ち、キャストも好きな方々いらっしゃるので、チケットを取りました。

満員御礼


日生劇場名物

私が観た回は、以下の組み合わせ。

狂言回し:山本耕史
香山弥左衛門:海宝直人
ジョン万次郎:立石俊樹

他のキャストも観たかったし、他の組み合わせも観てみたかったです。
ただ、3月の観劇オタクは忙しい……。
一度のみとなってしまいました。
これ以上ねじ込める余白がないのです。

観に行けそうなそこのあなた、良かったら私の代わりに観に行っておくれ!



場所を同じくして

日生劇場にて、1幕モノの1時間45分。

先日の『バンズ・ヴィジット』と全く同じじゃないですか!

さらに、観てきてから感じた共通点もありました。

  • キャスト全員にスポットがよく当てられている

  • ストーリー展開やサイズ感を考えると日生劇場は大きすぎる?
    と思いきや、演出、音の響きという点ではやはりこのキャパで正解

  • 国と国の出会い、人と人の出会い

  • その国を表す音作りがなされている

  • 照明の使い方が「分かってらっしゃる〜!」と唸ってしまう

  • 2回観ればしっかり入ってくる
    (太平洋序曲もきっとそうなんじゃないかなと思う)


ここからネタバレを含めて書いていきますね。


キャストの全力

アンサンブルというワードがプログラムで使われていないので(カンパニーメンバーズ)今回は敢えて使いませんが、とにかく全キャストの力がすごい。
冒頭から終盤まで、キャストの皆さんの一体感がすごい。
和装のまま、すごい勢いで跳躍したり、そこから早替えしたり。

大好き可知寛子さん

老中の威厳もすごいのだけど、老中から香山の後妻へチェンジするんですね。
その変貌っぷりがすごい。
可知さんはついつい目で追ってしまう魅力がある……。

メアリーからたまてへの変貌

びびさんこと、綿引さやかさん演じる、たまて。
『ジャージー・ボーイズ』ではフランキーの妻メアリーを演じてらっしゃいましたが、今回は香山の妻です。

たまては、当時の日本女性を象徴とするような佇まい。
物語が動いている中、上手側で香山とたまてが釣りをするシーンがあるのだけど、そのときのほっこり感が束の間の平和。

演出でハッとさせられたのは、たまての死の場面。
赤い布が流れるようにたまての体に巻き付けられている。
それを、香山が抜き取っていく。
その一連のシーンが美しくて、息を呑みました。

そこにいる全員の物語

その時代に翻弄された当時の人たちと、狂言回しを中心とした現代のコレクターたちによる、全員の物語だということがわかる。

狂言回しはエリザのルキーニのようだと思いましたが、狂言回しなんだからそりゃそうですね。
出ずっぱりでした。


香山弥左衛門とジョン万次郎

私がこのキャストでチケットを取ったのは、海宝さんと立石さんで観たかったからです。

まず、立石としくん、声がいい。
発声がいい。
エリザのルドルフで衝撃を受けたのが記憶に新しいのですが、すごく聞き取りやすい声なので、感情の乗せ方も、観ていて分かりやすい。

海宝先生の香山は、コメディ要素も少しあって驚きました。
ただ、それは前半だけなんですよね。

(それにしても海宝先生は双眼鏡越しでも目が合うなぁ……)


この2人が掛け合いのように歌う「俳句の歌」(Poems) が面白かったです。
このときのやり取りがあるからこそ、後半の変化に響く。

後半は真逆の道を辿っていく、香山と万次郎。
西洋化していく香山。
日本らしさを取り戻していく万次郎。
この対比。

これもきっと、キャストや組み合わせで見え方が全然違うんだと思います。

この対比を、西洋のクリエイターが描いた。
それを、今回は日本人キャストで、新たな切り口から描く。
とても興味深いです。


ソンドハイムマジック

ソンドハイムのナンバーは、ハマれば天国、ハマらなければ地獄だと思っています。
いや、もちろん楽曲そのものはすごいんですけど、歌いこなせなかった場合の違和感がありませんか?
ノリでできるものではないし。

そういう意味で、今回は実力のあるキャストたちがハマらせてくださいました。

ものすごい大ナンバーもあるので、観る側にも集中力が必要とされるんです。
だけど、上手いことハマれば、いつのまにか集中しているんです。
それがソンドハイムマジックなのかな。


今の時代に上演される太平洋序曲

この作品、かつては2幕モノで上演されていた過去があるのですね。
今回のバージョンを観て、1幕でちょうどいいなと思いました。
2幕で、あの大ナンバーが繰り広げられることを思うと、中だるみしてしまうんじゃないかなって。

終わり方も好きです。
「さて、めでたしめでたし」ではない。
もちろん、色々なことが起きて、色々なことが変わったけれども、その時代を描くだけに留まっていない。
今を生きる我々に問いかけているんです。

Next……Next……Next……

この、“客に投げかけて終わる”感じ、私の大好きなMA(マリー・アントワネット)みたいだな〜!と思いました。
※もちろん新演出ですよ

観終わってから、「たのしかったー!」だけじゃない。
何か、一瞬の間を感じるんです。
それを上手く言葉にできればいいのだけれど……
できなくても、“何かを感じた”という経験は残る。

きっと複数回観ていたら、もう少し具現化できたのかもしれません。
でも、一度でも観ることを選んで良かったな、と思った作品でした。


おまけ

私が行った日は梅芸の貸切回!

入場時に千社札頂きました。
これ、グッズで売られているものとは違って日時もしっかり入っております!

千社札

追記 クロネコチャンネルさまさま

西川大貴さんのクロネコチャンネルで、私が思ってたことほぼ全て西川さんが話してくださっています!!!
まじで。

やはり、実際にソンドハイムの楽曲を歌われたことのある方だと説得力が違いますね。
色々なことが腑に落ちました。
西川さんありがとうございます。

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