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【0319】SDGs✕Tech(食):Indigo Ag〜業界破壊企業ランク1位のサステナビリティ〜

アメリカのCNBCが毎年発表しているDisruptor50という、業界を破壊する企業ランキングがあります。その2019年に1位に輝いた企業が「食」にまつわるテクノロジーでビジネスをしています。

Indigo Ag

その名も「Indigo Ag(インディゴアグリカルチャー)」。
何をしているかというと、「農業」の分野において微生物テクノロジーを使った種子の販売と、画期的な料金システムで業界を破壊しうる企業に成長しているそうです。
※たぶん本当はもっと色々やっているっぽいのですが、英語サイトでむつかしい。。

↑Disruptor50のサイト

↑インディゴアグリカルチャーのサイト

ちなみにDisrupter50に2019年時点で過去5年間ランクに入り続けた企業は3社のみで、AirbnbとHouzzとSoFiだけ。Indigo Agは2014年創業で今年が初めてのランクインでいきなりの1位です。

◯微生物テクノロジーでめちゃ育つ種

農家の収入を上げる方法として簡単に想像がつくのは、「収穫量をあげる」ことだと思いますが、その方法として着目したのが肥料や土や栽培方法といったものではなく、植物の種子に元々存在していた「微生物」だそうです。その微生物の中から、植物の成長に好影響を与えるものを突き止め、あらかじめ種子にその微生物をコーティングしておくことで、成長しやすい状態を作っているのだそうです。

微生物を生きたまま種子にコーティングする技術
https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/impact/files/2005-01.pdf

というものは上記の通り、日本でもすでに存在はしていたようで(ファイルNoからたぶん2005年)、Indigo Agがすごいのは、「成長に寄与する微生物を見つけた」ということだと思います。おそらくは植物ごとに違うと思うので、それぞれの植物ごとに見つけていく作業が必要そうですが、AIやその他解析のための技術向上も手伝って、今の時代で成立しているのだと思います。

◯たぶん業界破壊度が大きいのはビジネスモデル

微生物を種子に生きたままコーティングする技術はすでにある。
微生物が種子の成長に影響があるという研究も実はすでにある(模様)。

↑このあたりの研究で、そんな可能性が書かれてるっぽい。うん、ぽい。

もちろん、研究レベル・テクノロジーレベルはめちゃくちゃ高いのだと思います。で、この二つが手に入ったとしてどうするか、まあたぶん「よく育つ種だよ」って売ると思うんです。

そこが業界破壊企業は一味ちがう。「農作物の収穫量に応じて課金」というビジネスモデルにしているのだそうです。
得体も知れない企業の種子を買うか悩んでいるところ、「いいっすよ、収穫量次第で」と言われれば、「ほな、一回ためそかな」と思えてしまいます。しかも、その年、本当に収穫量が増えるという事実つき。

◯業界破壊者のサステナビリティ

Indigo Agが取り組んでいるものにterraton initiativeというものがあります。

名前の通り、テラトンつまり1兆トンのCO2を空気中からなくすぞ。という取り組みです。

どうやって空気中からCO2を減らそうとしているかというと、「地中に貯める」のだそうです。植物の力・農業の仕方によって、地中内のCO2(炭素)貯蔵量を今の1%から3%にすることで、1兆トン減らせるはずだという(野心的な)目標を持って活動しています。

どんな方法やねん。なんですが、

このページにある通り、

■Cover Cropping:被覆作物,間作物
 除草剤を使わずに雑草から作物を守る農法で、作物の間に別の作物を植えると被害が出ないそうです。
■No- or Reduced Tilling:不耕起栽培もしくは減耕栽培(で合ってる?)
 農業と言えば耕すのは基本な気がしますが、あえて耕さない土地で農業をすることで、「土壌が回復する」「作物が強くなる」という効果もあるそうです。※代わりに空気に弱い病原菌を死滅させられないことでの病気の流行などのリスクはあるそう。
■Crop Rotation:輪作
 単一の作物を同じ土地で作り続けるのではなく、違う作物を育てる。
■Reducing Synthetic Inputs:合成肥料の削減
 化学肥料等によって土地に無理やり栄養を追加するのをやめ(減らし)、土地の力のみで作物を育てる。
■Animal Integration:動物の統合?
 農地に放牧をすることで、糞尿や踏み硬め?のおかげで土地を肥えさせ、強くさせるそうです。

というのをやることで、地中に炭素をより多く留めることができるのだそう。振り返ってみてみると、新しい技術ではなく、手間ひまをかけた古くからの良いとされている農法を守るということに尽きるのかもしれません。
(不耕起栽培は日本ではあまりされていないそうですが、アメリカでは研究結果も出ているらしい)

これ、すごいのは、この方法で農家がCO2を削減したら、それをカーボン・オフセットとして買うそうです。

環境に貢献して、自分の収穫もあげて、しかもカーボン・オフセットで収益も出る。持続可能な農家にキミもなれる!
と言われたら、はじめてしまいそうですね。

ちなみに、地中に炭素を貯め込むのだ!という方法、パタゴニアのroot beerも同じ考え方で多年生穀物を使ったビールを作っています。

◯プラットフォームも

Disruptor50のサイトですが、これによると生産者と購買者をつなげるマーケットプレイスというものも作ったそうです。バリューチェーン全体への影響も今後大きくなっていくかもしれません。

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