『今日からできる!小さな会社のSDGs』 村尾隆介著、青春出版社
著者はブランド戦略の専門家として中小企業へのコンサルティング、講演活動および執筆活動を行ってきた。まず、「小さくとも地域・業界で“ブランド”と呼ばれるようなキラリ輝く会社は、総じて社会から愛されているもの。ぜひ“社会モテ”する企業を目指しましょう」とし、これまでの筆者の主張を紹介している。そのうえで、「“社会モテするためのアクション”と“SDGsへの取り組み”は、とても似ています。」とし、SDGsへの取り組みは企業のブランディングでもあると結論づける。
著者によれは、大企業においては、SDGsの複数のゴールへ取り組むことでかえって取り組みイメージが伝わりにくくなっている。1つのゴールに絞り込んだ場合には取り組みのスピードが上がり、社内の意思統一もしやすくなり、社外に向けたイメージの発信に有効であるが、これは中小企業の強みを活かすことと主張する。
本書は、SDGsの17のゴールごとに身近な事例を紹介しながら気づきを与え、取り組みを促していく構成となっている。また、ゴール毎にまとめがされ、取り組むうえでの留意点も記述されており、各章だけを読んでもポイントが分かるように構成されている。
例えば、「貧困をなくそう」というゴールに対しては、日本の現状は「相対的貧困」が増えつつあるとし、中小企業こそ「小さな仕事をつくって“貧困をなくそう”」と訴える。すきま時間にできる仕事、近隣でできる仕事を企業が“創造力をもって切り出し”することが有効であり、アウトソーシングの事例も紹介しながら、既にやっている会社も多いのではないかと主張する。
また、「飢餓をなくそう」というゴールに対しては、日本は世界最大の食の輸入国であることに鑑み、「食べること」に再考が必要ではないかとして食べ残し防止の取り組み、ヘルシーメニューの一定割合を寄付する等の取り組みを紹介している。
本書は、「世界でいちばんハードルが低いSDGsの本!(かも)」とのキャッチコピーのとおり、読みやすく、分かりやすく、これならできそうと読者に思わせる本である。自社に関係しそうな章だけを読み、アイデアの創出や行動への動機付けとして活用することが有効と考える。「日本の中小企業が、ひとつ残らずSDGsに関心をよせ、そしてどんなに小さくてもいいのでアクションすること」という著者の想いが実現することを願ってやまない。
武 宏之