『地球の限界』を考えてみよう。それは・・・(22)

車好きの皆さんには、少し古い情報も織り交ぜながらになりますが、
その経緯を知って戴きたいので、既存情報をお読みください。

3)インド/
急速にEV(電気自動車)化が進むインド~モディ政権のEV推進で3輪、2輪が先行(前)
2020年10月29日 11:00
 
 インド・モディ政権は、貿易赤字解消のための石油の輸入減や大気汚染の解決などを目的に、電気自動車(EV)推進政策を実施。インドの自動車(4輪)市場は、中国、米国、日本に続く世界第5位(2019年)の規模を誇り、政府はEV普及率を30年までに30%に高める方針を掲げており、なかでも需要が高い2輪・3輪車のEV化が先行している。
 
インド政府のEV普及宣言
 モディ政権は、インドの貿易赤字約16兆円(19年度)を改善するため、輸入高1位である年間約14兆円の原油・石油製品の輸入を低減し、ガソリン車の利用を控えるためEV普及を推進。インドの自動車普及率は4輪車3.2%、2輪車12.3%と中国やASEAN諸国と比べて低く、これらが普及すると石油の輸入が増え、貿易赤字が拡大することが懸念されているためという。また、EV推進により、インド都市部で深刻な大気汚染を解消することを目指している。

インドでは、なかでも世界最大級の市場である2輪車(バイク)、3輪車(タクシー用途)のEV化が進んでいる。現地で主に近距離タクシーとして使われる3輪EV、Eリキシャ(制限時速25km)の販売台数は年間10万台。一方、中~長距離の3輪ガソリン車のオートリキシャ(時速40~50km)の販売台数は年間50万台。3輪車の販売台数のうち約6台に1台がEVと予測されるが、インド政府は24年までに3輪車をすべてEV化すると宣言している。

イントで使用されるモビリティ

左から、Eリキシャ(3輪EV)と電動バイク(2輪EV)

インド モビリティの種類

テラモーターズ(株)代表取締役社長
上田 晃裕 氏
 また、中流階級の通勤などの個人移動に使われるインドの2輪EVの販売台数は年間15万台。ガソリン2輪車の年間2,000万台と比べると圧倒的に少ないが、政府は25年までに2輪(150cc以下)をすべてEV化すると発表している。
 加えて、年間販売台数が440万台(18年)の4輪自動車はまだほとんどがガソリン車だが、政府は30年までに30%のEV化を宣言している。

これらの実現可能性に関して、インドで3輪EVを展開するテラモーターズ(株)代表取締役社長・上田晃裕氏は、「石油の輸入や大気汚染は切実な問題だ。EV化は計画より時期が遅れるだろうが、インド政府の政策実行力は高いと現地経験から感じており、時間がかかっても実現される可能性は高い」と話す。
 またインド政府はEV普及に向けて、減税やガソリン車規制を強化している。ガソリン車の消費税28%に対し、EV車の消費税を5%に下げたほか、大気汚染を考慮し、2000年から導入していた排ガス規制BS4をBS6に強化した。
インドでEV需要が見込まれる理由
 日本では新車販売台数がこの30年弱で約3割減少し、EVの販売台数もあまり伸びていない。上田氏は「日本の都市は電車やバスが発達しており、公共交通機関を使えば移動に困ることはほとんどない。一方で、インドでは都市でこそメトロ(地下鉄)が発達しているが、国土が広く駅から目的地までは4~5kmの距離があるため、駅からのタクシーが必要になることが多い。また、農村部ではバスなどの公共交通やウーバーがない場所が多い。移動手段として自動車が必需品であるため、EV需要が必然的に伸びやすく、日本よりEVが早く普及する可能性が高い」と指摘する。
 一方で、インドでの4輪EVの普及について上田氏は、「長距離を走る4輪に必要な充電ステーションなどのインフラがまだ整っておらず、インフラ整備が必要。また、4輪車は中~長距離の移動にも使われるため、1回の充電で長い走行距離を走れるようにリチウムイオン畜電池を多く積む必要があるが、リチウムイオン畜電池は高価なため車体価格が上昇し、庶民の手に届かないことが課題。さらに、EVのフル充電に早くても2~3時間かかるため、急速充電できるインフラ整備が欠かせない」と語る。
 
 スズキは2025年までにインドで低価格の電気自動車(EV)を投入する。同社が得意とする小型サイズのEVで市場を開拓し、約50%の高いシェアの維持を図る。同国政府の購入補助などを差し引いた価格で100万円台を目指す。
 
同社が主力とする軽自動車、小型車の技術を活用し電動化戦略を進める。EVはまずインドに投入し、その後、日本や欧州にも投入する方針。6月の株主総会で25年までにインドにEVとモーター走行も可能なストロングハイブリッド車(HV)を投入する方針を示していた。資本提携するトヨタ自動車との協業も合わせて電動化技術の開発を加速する。
 
インドではデンソーや東芝と設立した合弁会社が、HV用リチウムイオン電池の工場を、スズキのクジャラート工場(クジャラート州)の隣接地に建設している。21年中に稼働する計画。

また、パナソニック エレクトリックワークス社は、7重点事業の1つにもなっている海外電材におけるインドの取り組みについて説明した。7つの工場と30の営業拠点を構え、製販一貫体制を強みに、インド全域で事業を展開している。
 パナソニック株式会社では、空質空調設備、海外電材、エネルギーソリューション、CO2冷凍機、国内電材、ショーケース、国内白物を7重点事業と位置づけている。中でも成長領域の1つである海外電材は、売上高で24%(2435億円)、EBITDAで41%(304億円)を占め、インド、トルコ、ベトナムの重点3カ国で、計画を上回る実績だという。

 インドは、人口が14億756万人(2021年調べ)と日本の約11倍で、国土も約329万平方キロメートルと日本の約9倍。「これだけの規模感と成長が同時に実感できる場所はなかなかない。中国がかつて描いた急成長カーブをインドも描くのではと注目されている。人口ピラミッドも若年層が多く理想的。労働力があり、中所得者層が増えている」(Panasonic Life Solutions India Deputy Managing Directorの加藤義行氏)と分析する。
 
 
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