中年ニートが事件を解決?横溝正史「呪いの塔」
1932(昭和7)年8月に刊行された、横溝作品の中ではさほどメジャーではない推理小説。
長編で、ページ数は約400P。
80年前近い!古い!
が、コレがかなり面白く、今でも十分、探偵小説として楽しめます。
こんな方が、読者にピッタリ
(1)横溝正史に1ミリでも興味のある方
(2)横溝正史のメジャーな小説は読んだが、それ以外はあまり読んでいない方
(3)おどろおどろしい小説が読みたい方
あらすじ
雑誌社の編集者である由比耕作は、著名な探偵作家の大江黒潮に招かれ、軽井沢を訪れる。
黒潮はドス黒い作風で有名だったが、実際はいたって好人物で、耕作は彼のどこからあの作風が出てくるのだろうと、日頃から不思議に思っていた。
軽井沢に到着してまもなく、黒潮の別荘近くに、通称「バベルの塔」なる建物があることを知った耕作は、黒潮や彼の知人らとともに赴くが、塔の内部で黒潮が不審の死を遂げてしまう。
黒潮に同行し、彼の親友であった白井三郎は、この状況に大きな疑念を持つが、ほどなくしてまたも塔内で第2の殺人が勃発。
警察も事件の解明ができず、事件関係者は解放されるが、その裏では東京で次なる惨劇の芽が生まれていた・・・
面白さのポイント
(1)中年ニート=白井三郎が探偵となり、事件を解決
引きこもり気質の人間が、探偵として活躍。
他の小説でもそうですが、横溝正史の小説は時代を先取りしています。
引きこもり系ではないですが、他にも横溝の作品では「八つ墓村」「真珠郎」など、気弱な男性の主人公が、金田一耕助や由利麟太郎に助けられる話があります。
今でいう非リア充の男性を主人公に立て、シンプルに物語として面白い話を構築するのが上手い!
ストーリーテラーの一端が見て取れます。
(2)犯人の真の恐ろしさ
物語の最後では当然、犯人が明かされるのですが、殺害という行為ではない、犯人の真の恐ろしさが明らかになります。
(3)大江黒潮の正体
物語の最後で、大江黒潮の正体が明かされます。
加えて、それに関連した驚きの事実が明らかになります。
(4)白井三郎がニートな理由
白井三郎は、大江黒潮からの仕送りを主にして、生計を立てていました。
親友とはいえ、なぜそんな状態なのかは話の序盤で語られていますが、物語の最後で、やる気の出なかったwまさかの理由が、さらっと明かされます。
まとめ
「呪いの塔」は、横溝とは切っても切り離せない盟友である江戸川乱歩の「陰獣」をモチーフにした小説で、そこかしこに乱歩ネタが散りばめられています。
横溝が30歳の時に刊行され、彼の小説家としてのキャリアでは初期に当たる作品です。
探偵小説・推理小説としても良いですが、単純に物語として面白く、そして文章が軽やかで非常に読みやすい!
サクッと読めてしまうので、興味のある方はぜひご一読を。
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