見出し画像

くるはらきみ|私の軛は負いやすく

00_共通MS_Xmas_TitleBar

Text|KIRI to RIBBON

 聖夜が近づくにつれて、ここスクリプトリウムの空気はいっそう澄み渡り、蝋燭の灯りも温かさを増してゆくようです。廻廊を抜けて、今日もくるはらきみ様の画室にやってきました。
 森を望む窓辺で静かに画布に向かう画家の姿は、祈りの姿そのもの。筆使いに込められた祈りの風景を一緒に辿ってみましょう。

新作のご紹介
《2》
——私の軛は負いやすく——

私の軛は負いやすくs

画像2

私の軛は負いやすく_額

 タイトルは、マタイによる福音書11章30節「私の軛は負いやすく、私の荷は軽いからである(聖書協会共同訳)」より。

 キリスト教をテーマにしたきみ様の画業は信仰告白そのもの——
 信仰告白それ自体はとても個人的な営みですが、こうして一枚の絵画となって私たちの元へ届いた時、きみ様という個人を超えて、時間の海を脈々と流れてきた普遍性のある何かが、確かさを持って心に響いてくるのを感じます。

 様々な画家により宗教画は現代まで伝えられていますが、きみ様の絵画を体験する時、一枚の葉がひらりとてのひらに舞い降りるような感覚を覚えます。声高ではない、囁きに似た祈りが、やさしい軽やかさを持って心に舞い降り、同時にその出会いは決して偶然ではなく、まっすぐに私の元へやってきて寄り添ってくれる——そんな安堵に包まれるのです。

 長年の画布への誠実が澄み切った瞳に宿る静謐な一作は、聖夜の灯火となることでしょう。

 ここで少し個人的な余談をお話することをお許し頂きたいのですが、この作品とタイトルを拝見した時、とても驚いたことがありました。
 私自身が「信仰のイメージ」として抱き、聖書を手にした際に一番最初に印をつけた箇所が、本作タイトルの直前に記されているマタイによる福音書11章28節「疲れた者、重荷を追う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。(新共同訳)」だったからです。
 
 当時住んでいた都内の家の近所にあった英国国教会の教会。以前から音楽や絵画、建築などキリスト教文化に強く惹かれてはいたものの、何度も前を通りながらなかなか訪れる勇気がなかった或る日、お散歩の途中ふいに訪れてみようという気持ちに。ちょうどその時期は、治療の難しい病を宣告された時期でもありました(とはいえ、宗教にすがろう的な発想ではなく、先が見えないのなら、大好きで興味のある世界に躊躇せず飛び込んでみようという心持ちでした)。

 入り口のちいさなロビーにこの一節が慎ましく掲げられ、積極的なウェルカムや干渉、慰めではなく「休ませてあげよう」という柔和な言葉が深く深く心に響いたのでした(そうしてそののちご縁あって、同じ教会で洗礼を受けることに。また、奇跡的に病も克服できましたので今こうして元気にしております。が、とても悲しいことに、実はその教会が今月末で閉鎖されることとなりました)。

 余談の方が長くなってしまい恐れ入りますが、本作がディケンズの『クリスマス・キャロル』のような温かな「クリスマスの奇跡」をもたらしてくれたことを、きみ様への敬愛を込めて、お話してみようと思いました。そんな余談を挟むことを許してくれる優しい季節がクリスマスですもの・・・ネ。

——ビリチス追想——
玉田優花子 & 霧とリボン
ヴァレンタイン共同企画展
《ミス・モーヴ、ビリチスに会いに行く》
前期美術展
2019.2.9〜16

画像14

菫色の小部屋に棲むミス・モーヴが、歴史や小説の中に分け入り、ひとりの特別な女性/THE WOMANに会いに行くシリーズ企画の第二弾。今回のTHE WOMANは、ギリシャの詩人ビリチス。ギリシャ古詩の翻訳として発表された『ビリチスの歌(1895年)』は、実際はフランスの詩人ピエール・ルイスの創作でしたが、当時、多くの人々がビリチスの実在を信じたといいます。
……展覧会DMより

 霧とリボンの常設作品「Nos poupees」をご紹介します。

ビリチスs

画像13

 2019年2月開催「ミス・モーヴ、ビリチスに会いに行く」展にて発表された、ピエール・ルイス『ビリチスの歌』に捧げられた一作。古代ギリシャのアルカイックが目の覚める美しい色彩で描写されています。

 お人形をはさんで、お人形然とした少女がシンメトリーに配された構成も素敵。仲睦まじいふたりの少女の物語が菫色の小部屋で交わされた当時の光景を懐かしく思い出します。

 画家であり人形作家でもあるきみ様の魅力が詰まった絵画作品。見つめ合う二人を見るたび、幼い頃の自分に戻ってつい微笑んでしまいます。

ビリチス_額

00_通販対象作品

作家名|くるはらきみ

作品名|私の軛は負いやすく


油彩・アルシュオイル紙
作品サイズ|約22cm×15cm

額込みサイズ|約28cm×24cm
制作年|2020年(新作)

税込価格|50,000円

私の軛は負いやすくs

私の軛は負いやすく_額

00_通販対象作品

作家名|くるはらきみ
作品名|Nos poupees

油彩・キャンバス
作品サイズ|22cm×22cm
額込みサイズ|29cm×29cm×4cm
2019年(常設作品)
価格|税込66,000円

ビリチスs

ビリチス_額

00_MSmap_ラスト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?