【声劇台本】077「高所はどうでしょう!?」

「高所はどうでしょう!?」
《人物》
東山健(17)高校2先生。
大野あかり(17)高校2年生。

《本編》
東山のMO「誰にも言えない、俺の悩み。それは、高いところが苦手だと言うこと」

あかり「東山君。東京タワー行ってみない?」
東山「え。いや。俺……」
あかり「ダメ?」
東山「ダメ、じゃないけど……」
あかり「けど?」
東山「わかった。行こう!」
あかり「やった!」

東山のMO「あかりの笑顔を前にして、つい、いいと言ってしまった。俺は自分の苦手を克服する決意を固めていた」

あかり「東京タワーって、下から見ると、大きいね」
東山「高さは333メートル。ちなみに、正式名称は日本電波塔で、あくまでも東京タワーって愛称なんだって」
あかり「東山君。詳しい」
東山「スカイツリーはこの倍くらいあるらしいけど」
あかり「私、スカイツリーより、東京タワーが好きだな。なんか、昔から頑張ってる感じしない?」
東山「完成したのは1958年」
あかり「それじゃあ、もうおじいちゃんだ」
東山「だな」
あかり「東山君、予習してくれたの?」
東山「え?」
あかり「すごい詳しいから」
東山「まあ……これくらい」

東山のMO「必死でイメトレをした成果だということは黙っていた」

あかり「よし! それじゃあ、上にいってみよう!」
東山「(意を決して)よ、よおし!」

東山のMO「だがその時、俺の足はすでに動かなくなっていた……」

あかり「どうしたの?」
東山「あ。やっぱ、俺、ここで、いいかも」
あかり「えーなんで? せっかく来たのに?」
東山「ご、ごめん!」
あかり「えー。なんで? 行こうよー」
東山「いや。でも……」
あかり「なんなの! 行こうよ! 行こう!」
東山「俺……実は、高所恐怖症なんだ!」
あかり「えーっ!」
東山「ホントゴメン。黙ってて、ゴメン!」

東山のMO「俺は、自分の足が、震えているのがわかった」

あかり「そっか。東山君、ずっと私に気、つかってくれてたんだね……。ありがと」
東山「いや、ホントごめん……」
あかり「じゃあ、見上げるだけで、よしとしよう!」
東山「でも……」
あかり「一緒に来たかったからこれで満足だよ。その代わり、パフェおごりね!」
東山「ええっ……」

東山のMO「そして、俺とあかりはもう一度、赤色の鉄塔を一緒に見上げた」

(おわり)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。