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声劇台本「愛されたいバレンタイン」

Twitter連動バレンタイン特別企画・声劇台本です。

今回、Twitterで募集していた、バレンタインに向けて声劇台本を書くという企画に参加しました。共通の縛りは……
① 男女各1名。
② 尺は10分。
③ テーマは「バレンタイン」
④ タイトルは「愛されたいバレンタイン」

ということで執筆いたしました。以下、台本になります。
私としては、いつもと違う、チャラい男子!を描いてみました。

果たして……!?

とにかく、楽しんでいただける嬉しいです!

タイトル「愛されたいバレンタイン」

作 : ササキ タツオ

《登場人物》
勘太(20)大学2年生
由紀(20)大学2年生

《あらすじ》
愛されたいけど誰からも愛されない。そんなチャラい男子が一途な女の子に恋をした。バレンタインをめぐる、1年間の青春ドラマ。

《本編》

勘太「俺、ユキちゃんのことが好きだ。付き合ってください!」

勘太のMO「2月。バレンタイン。粉雪が舞う東京の片隅で、俺はユキちゃんに告白した。フラれっぱなしの20年の人生で50人目の告白! 今度こそ彼女を作るんだ!」

由紀「無理です!」
勘太「なんで?」
由紀「カンタくん。気持ちは嬉しいけど。私、カンタくんの事知らない」
勘太「付き合ってください!」
由紀「だから、無理です!」
勘太「大学入って、同じ学部で、ずっと気になってて、だから、俺!」
由紀「私が知ってるカンタくんは、軽い男で、チャラ男で、ウザ男」
勘太「ひどいな」
由紀「彼女欲しくて、女子に片っ端から告白して回ってるんでしょ? 最低だよ、そういうの!」
勘太「ち……違うよ!」
由紀「事実だよね? 好きでもないのに告白してる。誰でもいいなんて、ホント、最低!」
勘太「俺は真面目にユキちゃんの事が」
由紀「カンタくんの真面目って何?」
勘太「それは、俺の彼女になってくれたら、俺、全力でユキちゃんのこと大事にするってことで!」
由紀「信じられない。私が失恋したばかりだって事、カンタくん、知ってるんでしょ?」
勘太「そ、そ、それは……」
由紀「だから今まで眼中にもなかった私に告白してきた。私なら、簡単に落とせると思った。違う?」
勘太「……俺が癒しになるから!」
由紀「私、男ならだれでもいいなんて女じゃない」
勘太「俺だって!」
由紀「カンタくんの恋愛と一緒にしないで! 相手が誰でもいい恋なんて、恋じゃない。本当の恋したことないくせに」
勘太「俺の恋だって恋だよ。本当の恋ってなんだよ?」
由紀「じゃあ、聞くけど、私じゃなきゃ絶対にダメな理由ある?」
勘太「俺は……」
由紀「上辺だけの想いはいらない。一途に一人の人のことを想えないヤツが恋を語るな!」
勘太「どうしてたら信じてもらえる?」
由紀「うーん。1年!」
勘太「1年?」
由紀「1年間。一人の人のことずっと思うの。そうすれば本当の恋がわかるから」
勘太「わかったよ! 一年、ずっと俺、ユキちゃんのこと好きでいるから! 俺、いい加減じゃない。軽い男でもない。俺の気持ちが本当だって事。証明する。だから、来年の2月にもう一度、俺のこと考えてくれ!」
由紀「私の気持ちは変わらないと思うけど」

勘太のMO「俺はむきになっていた。俺は、それからユキちゃんのことを四六時中考えるようになった。そして、春休みが終わり、大学の授業が再開した。俺はいつもユキちゃんの視界に入る席を選んだ。季節は5月になっていた……」

由紀「カンタくん。最近授業中、私の方ばっかり見てるよね……?」
勘太「正解! だってユキちゃんのこと気になるから。ユキちゃんも俺のこと気になるの?」
由紀「は? チラチラって、なんか気持ち悪いからやめてほしいんですけど」
勘太「俺、そんなチャラチャラしてない。真面目にユキちゃんのこと見てる」
由紀「あのね……」
勘太「俺、真面目!」
由紀「じゃあ、私が席替える」
勘太「そんな避けなくても」
由紀「じゃあ、やめてくれる?」
勘太「気になって仕方ないんだよ」
由紀「あのね、まだ私を落とせると思ってるなら、大間違いだから」

勘太のMO「ユキちゃんのことがもっと知りたい。俺は同じ学部の友達にリサーチした。かつての恋人は、中学からずっと付き合っていた事。最近、浮気されたのが原因で別れたこと。彼女の一途さ。何事にも一生懸命なところ。お酒を飲むと辛口になること。などなど。俺の頭は本当にユキちゃんで一杯になっていた。だから、夏休みになって。思い切って、デートに誘った。もちろん断られたけど!」

勘太「ユキちゃんはどういう人がタイプ?」
由紀「カンタくんには答えない」

勘太のMO「後期の授業が始まっても、ユキちゃんは俺に対しては冷たかった」

勘太「そんなこと言わないで。一言で言うとタイプは?」
由紀「軽くない人」
勘太「俺、重いタイプ。超重い!」
由紀「どこが?」
勘太「ユキちゃんだけしか見えない」
由紀「あのね! しつこい男は嫌われるって知らないの?」
勘太「俺だって、冬にフラれて傷ついて、悩んで考えて……でもユキちゃんと話すと、癒されるっていうか」
由紀「私を癒しに利用するな」
勘太「そういう意味じゃ……」
由紀「じゃあ、どういう意味?」
勘太「俺は、ちゃんとした恋がしたいんだ。お互いをわかり合うような、その相手がユキちゃんだと思う」
由紀「言葉は綺麗だけど、私の心は揺れないから。カンタくんは恋愛対象じゃない」
勘太「俺、諦めないし。まだ一年経ってないし! 絶対に諦めない!」

勘太のMO「彼女は呆れていた。でも。それでもいいと俺は思った。俺は今の自分の気持ちに絶対の自信があった。他の子はもう目に入らない。俺は、一途にユキちゃんの事を思っていた。一途に思うと、時間が経つのが、遅くなった。苦しい、苦しい、苦しい……! そんな時だった!」

由紀「カンタくん。私、彼氏とヨリ、戻そうと思う」
勘太「え?」
由紀「だから。その。片想いも。もう終わりにしてくれない?」
勘太「ヨリ戻すって、本気なの!?」
由紀「うん……この前話し合って、私しかいないって言われた」
勘太「でも、ユキちゃんの事裏切ったやつだろ!」
由紀「そうだけど……誰にでも過ちはあるし。私の事、嫌いになったわけじゃないし」
勘太「何言ってるんだよ。意味わかんないよ」
由紀「カンタくん」
勘太「俺は裏切らない。俺、ユキちゃんの事だけを見て来た。だから……」

勘太のMO「俺は、思わず、ユキちゃんの事を抱きしめていた」

由紀「カンタくん!」

勘太のMO「ユキちゃんが俺を突き放した」

由紀「そういうカンタくんの身勝手なところ、私、ホント、ダメ!」
勘太「その元カレだって、同じだろ……。自分勝手にユキちゃんを傷つけて……ダメだよ。ユキちゃん! 元に戻るなんて」
由紀「私が、まだ好きだったんだ。それが全てだよ。ゴメン」

勘太のMO「ユキちゃんはそう言って、走り去っていった。俺は立ち尽くすしかなかった。そして、年が明けた……。学期末のテスト期間中に噂でユキちゃんが本当にヨリをもどしたらしいことを知った」

由紀の言葉リフレイン「私がまだ好きだったんだ。それが全てだよ。ゴメン」

勘太のMO「そして、2月、バレンタインを迎えた。俺は、ユキちゃんに時間を作ってもらった。これが最後になる。それがわかっていても……俺は……どうしても彼女に伝えたいことがあった!」

勘太「ユキちゃん……俺……」
由紀「カンタくん。もう、知ってるよね? 私、彼氏とヨリ戻した」
勘太「知ってる! でも、俺……! ユキちゃんの愛が欲しい! 愛されたい!」
由紀「私、愛の安売りはしない。カンタくんが私のことを想ってくれたみたいに、私は、彼氏のことを思ってるから」
勘太「俺、愛されたかった……」
由紀「ごめん……」
勘太「ユキちゃんのことがずっと好きで!」
由紀「気持ちに応えられなくてごめんなさい」
勘太「……俺の方こそ、今まで、しつこくして、気持ち悪い男で……本当にゴメン!」
由紀「うん。気持ち悪かった。普通の女子ならドン引きだよ。これからの恋愛では十分に気を付けるようにしてください」
勘太「ごめん……」
由紀「でも。カンタくんはもう変わったよ。一年前の軽い男じゃない。私が言うのもなんだけど、今度は本当のちゃんとした恋ができるんじゃないかな」
勘太「本当のちゃんとした恋……」
由紀「相手のことを一途に大切に思いやる。そんな恋……」
勘太「また、恋できるかな……」
由紀「できるよ。カンタくん。こんな私のこと一年間も思ってくれてありがとう。選んであげられなくて、ごめん」

勘太のMO「彼女はそう言って、小さなチョコを差し出した。俺はそれを受け取った。初めてのバレンタインチョコだ。そして俺とユキちゃんは別れた。粉雪が降り始めていた。去年と同じ。でも違う。心が壊れるように、俺は、一人、泣いた。【一途】の言葉の意味がようやくわかった……」
       

             (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。