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狂乱のマリオネット

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両手にナイフをもった操り人形が繰り広げる物語。骨董屋のショーウィンドウに閉じ込められてしまった彼はどのように生き、どのように自滅するのか。順序は上から章立てしております。
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#小説

時計の回想録

私は時計である。もしも、人ではなく時計が、君たちの〈人生〉を語ることが許されるのだとすれ…

プロローグ 〜古い小屋の中で

私たちは、曇った小窓がひとつしかない暗い物置の中にいた。マリオネットは私より新入りだった…

プロローグ 〜月の光

満月の夜のことだった。アルプスの麓の混じり気のないそよ風に揺られ、青い草の光沢はまるでさ…

マリオネットの回想録 〜骨董屋で

月はすっかり西の山々の尾根に重なって空はひどく暗くなった。と同時に、数多くの1等星、2等…

マリオネットの冒険 〜自我の目覚め

黄色のまばゆいばかりの照明が顔を照らし、操り人形の性(さが)というべき本能を呼び起こした。…

マリオネットの冒険 〜自由の目覚め

日が沈んでも、照明はさらに明るく輝いてショーウィンドウを照らした。外の夜道は薄暗く、ショ…

マリオネットの冒険 〜時計とオルゴールと

マリオネットは、ショーウィンドウに飾られた一つひとつの売り物に近づいた。呼び名も知らないひとつひとつに、虚勢を張って語りかけた。 「『君たち』は、何のためのものなのか。君らだけにできるのは何なのか」 まず時計に近づいた。正確には、それが時計であるとはマリオネットには分からない。丸いもの。立ち上がった自分の腰よりも少しだけ背が低く、平らな面の中央で三本の針が束ねられている。二本は細長く、そのうちの一本はとりわけ長く、もう一本は短く中央が太くなっている。うしろには鍵のようなものが

マリオネットの考察 〜「売りもの」の宿命

その時、ショーウィンドウの外から革靴の足音が近づいてくるのが聞こえた。マリオネットはとっ…

マリオネットの冒険〜壊れたオルゴール

かくしてマリオネットは、世界の秘密を暴く冒険を始めた。 まずマリオネットは、まだ音の鳴り…

マリオネットの冒険 〜もうひとつの人形

そのときマリオネットは、自らが愛を知らない道化でしかないということを理解した。しかし同時…

マリオネットの冒険 〜闇と光を生きること

絶えることなく内側を駆け巡る思考からマリオネットを連れ戻すのは、またもショーウィンドウの…