新たな方法が開発される補聴器ーー「軟骨伝導補聴器」の紹介

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2022.7/22 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、補聴器の中の骨伝導補聴器、そして新たに発見された軟骨伝導方式の補聴器についてご紹介します。

◾骨伝導補聴器とは何か

以前お伝えしたように、難聴は認知症に関連があり、難聴予防の重要性、またすでに難聴であっても音を聞き取りやすい環境が必要なため、補聴器の意義について紹介しました。

また、日本では補聴器が欧米に比べて普及率が低く、メンテナンスや販売体制等の問題があることも指摘しました。同時に、AIを用いた補聴器など、最新の補聴器についても紹介しています。補聴器については、昨今は骨伝導補聴器、さらに軟骨伝導補聴器というものが登場しています。

骨伝導については以前も紹介しましたが、簡単に説明します。音の伝わり方は、一般的には音の振動を鼓膜でキャッチし、内耳で電気信号に変換して脳に伝える「気導音」があります。一方の骨伝導は、その名の通り、内耳につながる側頭部の骨に振動を伝えることで、骨を通じて音を聞く「骨導音」という方法です。

補聴器についても、骨伝導を利用した補聴器が登場しています。これは耳の入口から鼓膜までの外耳道がふさがってしまう「外耳道閉鎖症」等の患者さんには、骨伝導補聴器が用いられます。それだけでなく、骨伝導補聴器は耳を塞がないため、気導補聴器に比べて圧迫感や締付け力が緩められる部分も、利便性の面からも注目されています。

◾軟骨伝導と軟骨伝導補聴器

とはいえ、骨伝導補聴器であっても、機器の大きさや、骨を圧迫することによって痛みが生じるなどの問題も指摘されています(気導補聴器は耳の入口を圧迫しますが、骨伝導補聴器は骨を圧迫するということです)。

そんな中、2004年に奈良県立医科大学の細井裕司教授らが、耳周辺の軟骨を利用して音を聞く「軟骨伝導」を、世界ではじめて発表しました。この発見をもとに開発された軟骨伝導補聴器は、従来の骨伝導補聴器よりも振動させるのが軟骨なため小型化が可能となり、圧迫感が抑えられます。また、品質についても骨伝導と同等の効果を与えるということです。2017年に実際に発売され、現在も改良版が販売されています。

もちろん、補聴器は人によって適性があり、また補聴器にも様々な特徴があるため、利用の際には様々なタイプを試してみることが必要です(例えば軟骨伝導補聴器については、通常の補聴器よりもハウリングが生じる条件が異なるため、フィッティングには慎重さが求められます)。また、いずれにせよ、補聴器は全体としてまだまだ価格やメンテナンス等について課題を抱えていることは、以前お伝えした通りです。

軟骨伝導は2004年に新たに発見された聴覚経路であり、まだまだ研究が必要です。ですが、逆に言えば音の届け方にはまだまだ発展が期待されるということでもあります。また、補聴器を必要としない人も、音の品質だけでなく、使いやすさや耳へのダメージなど、多様な観点から「音の聴取環境」について考えていただければ幸いです。

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