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「飛切」を選んだらお節ドミノ倒しが始まった

2023年の11月、Amazonで「飛切」を買った。
黒豆である。
「飛切」とは、黒豆の最大サイズのことだ。
しかも、ただの飛切ではなく、丹波黒豆の飛切を買った。

話は2023年1月に遡る。
幼馴染と新年祝いにカジュアルなフレンチレストランで食事をした。食事の最後、ガトーショコラの皿に黒豆が添えられていた。

何故か黒豆を煮ることが好きな私は、毎年年末に黒豆を煮ることを楽しみにしている。
しかしそのレストランの黒豆は、私の煮る黒豆より10ランクは上の美味しさだった。
ふっくらと芯まで煮えているのは当然のこと、見た事もないほどの大粒で、ふんわりとブランデーが香る。
流石プロの仕事は違う、と唸りつつ、ひとつの思いが滾った。

これ、私も作りたい。

その思いは11ヶ月消えることはなかった。

最高の黒豆を煮るには、最高の素材選びからだ、と思い「黒豆 大粒」と検索する中で、飛切の存在を知るに至った。
その価格、300グラムで約2,000円。
個人の経済感覚に拠るとは思うが、我が家経済圏ではかなりの高級品ではある。
高級品ではあるが、一切の迷いなくカートにinし購入した。

そして、さらにもうひとつの思いが滾った。

飛切の丹波黒豆煮を受け止めるに相応しい、お節という舞台を用意したい。

かくして、2023年末大お節製造祭りが開幕した。
そして、お節準備にかこつけた手間と金かけドミノ倒しが始まった。

超オシャレなお重が欲しい

黒豆の舞台といえばお節、そしてお節の舞台といえばお重である。
当初は、「運動会のお弁当にも使える蓋付きのプラのお重でモダンなものがあるといいよね〜」と考えていた。
しかし、「物を買うなら選べる選択肢全てを見て決めたい」という性格ゆえ、各種通販サイトで、おそらく日本で入手出来るほぼ全てのお重をチェックした。
その結果、分不相応にめちゃくちゃ目が肥えてしまった。

「もう、木製か漆塗りのお重以外考えられない」

2,000円の黒豆を(高っ)と思った人間が、3万円のお重を買うことを検討し始めていた。
冷静沈着な夫に「落ち着こうね」と諌められ、最終的に、オークションサイトで新品未使用の博多曲げ物の重箱を大変お得に入手した。
それがこちら。
滅茶苦茶オシャレだから見て。

この上ない可愛さ

木の香りが素晴らしいが、油や醤油が付けば一発でシミになる。
出品者は持て余して売りに出したのだろう。
私も現在進行形で持て余している。


お節といえば伊達巻だろ。銅の卵焼き器が欲しい

某究極のグルメ漫画に偏った食志向を育まれた私は、お節料理対決でおチヨさん(仮名)が「美食倶楽部(仮名)では、伊達巻を炭火と銅の卵焼き器で焼き上げる」と語っていたシーンが脳に深く刻まれていた。

流石に一般家庭で炭火は厳しいが、銅の卵焼き器は予算的にも流通的にも余裕であった。
それがこちら。

焼き入れ後なのでもうくすんでいる

こちらは全く持て余していない。
抜群に美味しい出汁巻きが作れるので全ガスコンロ民にオススメしたい。


伊達巻は絶対ギザギザであるべき。鬼すだれが欲しい。

鬼すだれ。

伊達巻以外に使い途ないやつ。
100%持て余すやつ。
でも、100歳まで生きたらあと60回以上使うから減価償却出来るだろ。
当然持て余している。


栗きんとんは手抜きでいいや、売ってる焼き芋で作ろ〜って安納芋の焼き芋パック売ってる〜

焼き芋で栗きんとん。私はこれが大好きだ。
邪道中の邪道ではある。だが、考えてみて欲しい。
売ってる焼き芋、信じられないくらい甘い。
完全に好みだけど、香ばしさもプラスされて美味しい。

スーパーの出来たて焼き芋で作ったろーと意気揚々と年末のスーパーに繰り出すと、焼き芋のあの……何?銀の、四角い、焼き器?焼き芋マシーン?の隣に、真空パックされた安納芋の焼き芋(1,000円)があった。
方やスーパーの焼き芋マシーンの焼き芋は200円。

飛切の丹波黒豆のチームメイトに相応しい奴は、どちらなのか。

一瞬躊躇したが、安納芋焼き芋をカゴにinした。
これは、完全に正解だった。
家族で皮を奪い合うくらい甘く衝撃的に美味かった。
色はくすむので、濃いめに煮出したクチナシシロップを加えて色鮮やかにした。


でも数の子の皮向いたりはしたくないし、極力手作りするものは減らしたいよね〜。お取り寄せ散財

間違いないメンバーを紹介するぜ。

・一生ご飯とこれだけで生きていけるーー鮭のルイベ漬け


・誰に贈っても喜ばれるーー合鴨ロース煮


・どうせルイベ漬け買うし佐藤水産でまとめて買ったら滅茶苦茶美味しかったーーたら子昆布巻き&数の子入り松前漬け

アフィでは無いので安心してリンク踏んでほしい。
そしてどれも間違いなく美味しいので是非ともご賞味頂きたい。


推しが年末生配信で本当の意味でのドミノ倒しするのを観ながら、ねじり梅を切る

大晦日の正午から推しことKing & Princeさまが生配信するということで待機。
開始早々、「僕達は年越しまでドミノを3万6千個並べます」宣言。
うーん、いい年越しだ。ファン一同一切予想してなかった。
収録済みのゲーム企画の映像、その右上にちっこいワイプで黙々とドミノを並べる推し達が映っている。まさか生放送部分がワイプだとは。
しかも2時間半。好き。

黙って口開けて観てたら物理的に日が暮れるので、観ながらねじり梅を作っていく。
お節ガチ勢の皆様からしたら「ねじり梅ごときでドヤ顔(笑)」だろうが、こちとら飛切買わなければ、なますと煮物とエビうま煮くらいしか作らない、お節トーシロである。
ねじり梅でドヤ顔くらいさせてくれ。


勢いでれんこんも花型にした。偉い。
切れ端は夕飯のスープに入れた。


干し椎茸は年末年始の通貨。我が県ナンバーワン&オンリーワン百貨店で冬菇を買う。

上のねじり梅と花型れんこんは筑前煮用である。筑前煮といえば干し椎茸。
そして当地では、いやよその家庭はどうか知らんが、年末年始の挨拶回りは高級干し椎茸・冬菇どんこが通貨の如くやりとりされる。もうそんなに行ったり来たりさせるなら各自で買えばいいのに、と言うくらいあっちからもこっちからも冬菇合戦。
そういう訳で、冬菇のない年末は考えられないので、我が県唯一のデパ地下で自宅用ならこれで十分、でも気分はハイソサエティ位の冬菇を購入。


紅白歌合戦の勝敗が出るまで重箱に詰めていた。

悪いけど完全に推しの配信が長かったせい。
いや、せいって言っちゃダメだよね。
推しが沢山配信(4時間半)してくれたから、つい手がお留守になっちゃって、気付いたら18:00になってたよ。

必死で詰める。
手抜きでお取り寄せした分も、カットは自分でしなければならないので、大分時間はかかった。
立ったり座ったりを繰り返していたので、ふくらはぎが完全に筋肉痛である。
私と同じレベルのお節トーシロ勢に教訓として伝えたい。
お節は料理が出来上がってからが本番である、と。


そして出来上がったお節がこちらです。

これは……頑張ったと言っていいのでは?
作ったのは
・黒豆
・栗きんとん
・伊達巻
・筑前煮
・エビうま煮
・紅白なます
だけだけど、買ったものも切り分けのサイズや配置に滅茶苦茶苦労してるし。

ことの発端の黒豆だが、間違いなく過去最高の出来だった。なお、サイズが大きいだけあって丸三日かかった。

何より、年始から家族の賞賛を一身に浴びて、新年初ドーパミンである。
夫も子供たちも、黒豆をパクパク食べてくれる。何ならおやつも黒豆でいけた。
どう考えても食べ切れない量ができるので、両実家にお裾分けしたが、ここでも賞賛を浴びて新年二発目三発目のドーパミン分泌祭りだった。

なお、子供たちに
「どれが一番美味しかった?」
と聞いたら、
「サーモン!!」
と即答された。
ルイベ漬けの美味さは世代を超える。ぜひご賞味頂きたい。


おわりに

2023年末、軽率に「飛切」を選んだお陰で、えらい出費と手間になってしまった。
しかし、年始を自己肯定感ピークの状態で迎え、さらに家族の賞賛を浴び、かつ美味い
飛切という踏切板のお陰で、市販品を半分近く使いつつも、我が家なりのお節を作るという経験を出来た。

自分の性格的に、おそらくあと10年は、毎年同様のお節を作るだろう。別に子供たちに、君たちも大人になったらお節を作りなさいと言う気は毛頭ない。むしろ買いなさい、と言うと思う。
私は単に、年始から最高のドーパミンを得る、それだけの為に今後お節作りを続けると思う。

発端というものはどこに転がっているか分からない。踏み出す、というほどの大きな選択でなくてもいい。
親指1本でできる気まぐれの通販、そんな小さな選択が、自分にとっての一大プロジェクトになることを知った2023年の年越しだった。




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