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プライスシティ・ウォー

 「やはりヒック、殺すしかないと思うのだがウィーック」

 今期の自治会会長、全身にぶら下げた輸血パックから直接血管に酒を流し込んでいる男、泥酔酒屋のガルゴールが漏らした。

 「賛成」「そうだな」「やっちまおう」「よし、殺そう」

 全員が口々に同意し、顔のど真ん中にバカでかい口だけがある異形肉屋のハルズマンが立ち上がると、拘束されていたヴィールス・カンパニー営業の首を肉切り包丁で切り落とした。

 「チクタク。他の連中にも回覧板回さないと。ボーン。営業野郎の首は誰があいつらのとこに届ける?」

 置かれていた柱時計の文字盤が開き、中から時計屋のヴォークの顔がところてんめいて押し出されてきた。

 「あたしが行くよ。玄関先に投げ捨ててくればいいんだろ?」

 生首美容師のジョギーが、手足代わりの髪の毛を触手のように蠢かせて営業の首を拾い上げた。

 「首だけ女が生首お届けってか! ガハハハハ!」

 鰯の魚屋フィレオが二足歩行ロボットの頭部に据え付けられた金魚鉢の中で笑ったが、笑っているのはフィレオだけだ。

 「ヴィールスの奴らがすぐにも刺客を送り込んでくるだろう。各々、準備を怠るなよ」

 和尚の仏滅坊が錫杖を鳴らし、剃り上げ過ぎて剥き出しになった脳髄を覆う保護カプセルを、神経質にコツコツと叩きながら締めくくった。

◆◆◆

 「社長。営業三課社員のコープスの首がエントランスに」

 秘書のサン・ドバッグが虚空から垂れ下がったフックで宙吊りになりながら報告すると、早速鉄拳が飛んできた。ドバッグも慣れたもので、激しく揺れながら平然としている。

 「やろうってんならやってやろうじゃねえか、『二束三文商店街』のゴミどもが! ドバッグ、地上げ一課を向かわせろ!」

 ヴィールス・カンパニー社長、寄生生物インブルズは、太りすぎて死んだ宿主の太鼓腹に人面疽を浮かび上がらせて叫んだ。ここに第何次かわからないプライスシティ・ウォーは勃発した。

 【続く】

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