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チーム・ミス隠しブラザーズ


 「あ。あ」意味のない言葉と共に無線機より送られた妨害電波が、飛んでいたラジコン飛行機を墜落させた。張本人の若者がケラケラと笑う。年齢にそぐわない幼稚な笑い声を、銃声が吹き飛ばした。

 「てめぇ、何てことしてくれやがったんだ! ボスのための腎臓が……クソッ!」

 男は犯罪組織の運び屋だった。病に侵された組織のボスに届けるはずだった、違法に入手した移植用臓器を、ラジコン飛行機に積んでいた。

 「坊ちゃん、やっと見つけ……坊ちゃん!? 死ん……」

 撃ち殺された若者は、大財閥の放蕩息子だった。護衛の目を盗んで悪戯に赴き、護衛がやっと追いついた時には手遅れだった。

 「銃声だ! 敵軍が国境を越えて来たぞ! 反撃開始! 開戦だ……あ?」

 無線に向かって叫びながら現れた軍服の男が、眼前の光景に固まった。国境警備隊長は、今の銃声を敵からの攻撃と早とちりし、戦争の火蓋を切って落としてしまった。たちまち、背後で爆発音と銃声が連続した。

 睨み合う三人はそこで気が付いた。

 「お前、ジェレミー……?」「マークじゃないか!?」「ランドか!?」

 おお、竹馬の友よ。兄弟よ。このような場で再会することになろうとは。ジェレミーは金持ちのバカ息子の尻拭いをさせられ、マークは落ちぶれて犯罪組織に加わり、ランドは国境警備の任の中で胃を削っていた。

 だが、もうそんなクソッタレな日常にすら戻れない。それぞれが致命的なミスを犯した。相手が知らぬ仲ならこの場で口封じという選択肢も取れたが、あれほど親しく付き合ってきた仲間達を、自らの手で殺せるほど非情でもなかった。

 やがて三人は手を握り合い、お互いの事情を話し合った。

 「敵国がクローン技術を開発したって話だ。そこへ行けば、御曹司の身代わりも、臓器の代替品も手に入る」

 「敵側の銃器でも入手すれば、銃撃の証拠もでっち上げられる」

 「やろう。絶対に隠し通して見せよう」

 ここに旧友達は再び集った。失敗を揉み消すために。

【続く】

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