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ある日のチャレンジのお話

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皆さん、こんにちは。いつもコラムを読んでいただきありがとうございます。S.C.P.Japanの井上です。
私は、S.C.P. Japanでは運動を通じて価値を学ぶプログラムのファシリテーターをさせていただいています。その中で最近印象に残った出来事を今日は書きたいと思います。私達のプログラムは、普通のスポーツ指導者や教育者とは違う関わり方で子ども達に接しているので、もしかしたら多くの人と印象に残るポイントが違うかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

それでは、はじまり、はじまり。

ある日のセッション。勝ち負けに拘るあまり、負けてとり乱し、別の子と大喧嘩になってしまったタイチ(仮名)という子がいました。今回はそんなタイチのお話です。

別のある日のセッション。突然スイッチが切れて「やらない」と言い出したユウ(仮名)。みんなでチャレンジするゲームで、1人だけやらないと言ってる状況。私は「ユウを含めてみんなでやるのか、ユウを除いたメンバーでやるのか、それともみんなやらないのか」どうするかを子ども達に決めてもらうことにしました。

以前勝ち負けで負けて泣いてたタイチ、今日は途中で外れたユウに必死で声かけをしています。「やろうよ。ユウがいないとクリアできないよ。ユウが必要だよ」と。
それでもなかなか切り替えられないユウを、今度はみんなで説得しにいきます。他にも色々試すけど、ユウはのってきません。

子どもの発想が好きなだなと思ったのは次の一手です。

「みんなが一生懸命チャレンジする姿をユウに見てもらって、やりたいと思わせよう」という意見がでました。

"見ている人に活力を!"という発想は、もはやプロスポーツ選手のマインドだと微笑ましく感じてしまいました。笑

そんなこんなで、なにかのタイミングでふと戻ってきたユウ。みんなで団結してユウのために行動したら、うんともすんとも動かなかったユウの気持ちが動いて、感動的にユウがやる気になって、戻ってきた、、みたいな美しいストーリーは起きなくて、こっちが見てないタイミングでひょこっと戻ってきたユウ。大人の価値観に当てはめ、感動シーンを少し期待してた自分にハッとし、反省した私。

短い1時間のセッションでも毎回色々な事件があります。揉めれば揉めるほど、その分濃厚で充足感に溢れる時間になります。いつもセッションの最後には振り返りの時間があります。

「今日色々あったけど、最後に、これだけはみんなに伝えたい、っていう感想ある人教えて」

と私が聞くと、その日はタイチが恥ずかしそうに、でも、力強く手を挙げました。

「タイチなに?」と聞くと

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
やってみないと、わからない」

タイチは絶妙な「間」の後に、そうやって答えました。そして顔を真っ赤にして膝を抱えます。恥ずかしくて、でも自分が誇らしくて、そんなふうに見えました。

タイチは勝ち負けにとてもこだわるタイプです。負けるのは大嫌い。負けるのが嫌いすぎてチャレンジしたがらない時もあります。だってやったら負けるかもしれないし、負けたら辛いから。

けど、そのタイチが「やってみないと分からない」と、チャレンジすることの大切さを口にしました。途中「やらない」と言い始めたユウへのメッセージだったのかもしれませんが、半分は自分自身に送った言葉のように見えました。だから、自分がとても誇らしくて、顔を真っ赤にしながら膝を抱えたんじゃないかなと私は思いました。

学校現場でも、世間一般的にも、「チャレンジは大切だ」とよく言われます。そんなの頭ではわかってること。でも、自分がチャレンジするかしないかを決断し、更に、どうしたらみんなでチャレンジが出来るかを考える、そうした実体験を経てでた言葉には全く違う重みがあります。
言葉の重みは、「偉いから」とか「スゴイから」とかで出るのではなく、実際にそれを身を持ってやったから出るのです。タイチの一言にはまさにその重みがありました。

一言で「チャレンジ」という価値にも、一人一人違うストーリーがあり、その一人一人にあわせて多様な意味がこもっています。
私達は「チャレンジするか・しないか」を自分で決められる場、そしてそういった価値観を試して経験できる場、をスポーツ・運動を通じて創っています。

ここから有料記事となりますが、多くの人に発信するほどではないけど、「細々と思う小さく短い一言」を有料部分に記載しています。内容自体は無料部分で全てカバーされています。本記事を読んで、「新しい視点を得られた」、「S.C.P. Japanの活動を少し応援したい」、と思っていただけたら、有料記事を購入いただけますと幸いです。よろしくお願いします。

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