【映画祭の作り方】候補は世界中に?ヨコハマ・フットボール映画祭の作品が決まるまで
みなさん、こんにちは。ヨコハマ・フットボール映画祭で、作品選定・字幕製作チームのKAMEです。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン第47回では、私たちのチームがどのようなプロセスで上映作品を準備しているかをご紹介します。
まず初めに、サッカーに少しでも関連する映画をリストアップしていきます。IMDb(インターネット・ムービー・データベース)のような映画情報が集まっているサイトを検索したり、各国の映画祭ネットワークで情報を共有したり、さらには海外のサッカー映画ファンのブログやニュースなど、様々なソースを当たります。
一番活用しているのはベルリンで毎年行われている『11mm』というフットボール映画祭です。こちらに出品された映画は、新作で興味深いものが多く、毎年ここから多くの映画をピックアップします。いずれは『11mm』のように、現役のサッカー選手をゲストに呼んでみたいというのが個人的な夢です。
その後、それぞれのプロダクションや配給元を調べ、スタッフで手分けして、スクリーナーを取り寄せるためのメールを書きます。スクリーナーというのは、映画を売り込む側が試写用に準備している映像です。メールは基本英語で、すぐに返事が返ってくるところもあれば、3か月くらいたって、別の会社から連絡がくることもあります。もちろんメールの返事が返ってこないこともよくあるので、送り先を変えて再トライしたりします。
取り寄せたスクリーナーは、できるだけ全員が試写します。残念ながら、面白い映画ばかりとはいえず、途中で寝てしまいそうな単調なものもあります。しかし一言にサッカーといっても、本当に幅が広く、特にドキュメンタリーはこれまで全く知らなかったことを学ぶ機会も多いです。上映はされませんでしたが、モーリシャス近くにあるチャゴス諸島の独立問題を扱ったドキュメンタリー(『Another Paradise』)が、今も記憶に残っています。地味だけど映像の美しい映画、小品で心温まる映画。世界にはサッカーに関する映画が信じられないくらいたくさんあります。
スタッフにはそれぞれに好みがあって、私はこの映画が好きと思っても、他の人は全く興味を示さないこともしばしば。何に関心を持ち、どこに共感を覚えるかは、人の数だけ違いがあるということを実感します。それだけに最終候補となる映画は、バラエティに富み、サッカーというテーマを軸に、こんなに多様な内容が集まってくるのかと驚きます。今後、作品選定に参加してみたいという人々の年齢層が広がり、興味の対象が異なってくれば、さらに幅のある映画祭になる可能性も秘めていると思います。
映画の候補作を少数に絞ってからが、本格的な交渉の始まりです。映画祭には当然予算があり、1本の映画を招聘するにあたり、払える上限が決まっています。きちんとした映画配給元は、独自の金額設定を持っているところも多く、こちらの提示する金額との乖離にめまいがすることも。その中で、何としても上映したいという熱意を示して、折り合いのつく金額を模索しながらまとめていくのが、交渉の醍醐味だと感じます。そうはいっても、値段でまとまらず、断念した作品も数えきれないくらいあります。
他の候補作が決まりそうだったら、現在の交渉先とは良い関係を保ったまま、徐々に撤退モードに移行します。絶対に上映したいと先方に言い切って、後に引けなくなると、自分が精神的に苦しい。そのあたりのさじ加減がなかなか難しいです。同時進行で何作か決定していかなければならないので、定期的にZoomでチームミーティングをし、進行状況を確認しながらみんなで上映作品を決めていきます。
2021年の映画祭では、私はロシア映画の「VOY!光と影の冒険」と、イギリス映画の「ポーツマスFC-破産からの再生-」の取り寄せを担当しました。特に後者は、映画祭後のオンデマンド・ビデオ化も含めて、非常に長い期間、連絡を取り合いました。この映画の製作には、ポーツマスFC再建に力を尽くしたサポーターグループも深く関わっています。2021年の映画祭で、彼らが「ベストクラブ賞」を受賞したと知らせた時は、ものすごく喜んでくれました。受賞のニュースはポーツマスFCの公式サイトでも報じられたほどです。メールのやり取りは数が多く大変でしたが、この映画を担当をできて本当によかったと感じた瞬間でした。
私たちのチームは、ここまでに紹介した以外に、映画の字幕製作も担当しています。以前に同じチームのメンバー2名が、インタビューで説明をしていますので、こちらも一緒にお読みください。
2022年のヨコハマ・フットボール映画祭は6月4日と5日に東神奈川のかなっくホールで開催します。今回も興味深いラインナップが揃ってきましたので、ぜひ見にいらしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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