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”走り・盛り・名残” 季節は3回やってくる。

花を活けていると、秋頃から花材がグッと重厚になっていく。
そして、お正月を迎える準備に取り掛かると、金銀・松竹梅や菊などスペシャルムードでラストスパートへ。


年が明けると「初活け」となり、それまでの重たいムードから一転して春の花を活ける。
我が流派では、年明けには水仙の一種活けと決まっており、水仙3本を活ける。
水仙3本、花器に活けるだけなら3分、カップラーメンタイムでしょ?と思ったら大変な間違いの始まりで、水仙3本を無事活け終わった頃には、カップラーメンはノビノビの原形なしラーメンなのだ。


水仙は、まず解体。
水仙は、花の付け根に白根という長ネギの白いところのような筒状の部分があり、「はかま」と呼んでいる。
そのハカマを大事に大事に破らないように外す。
着物の袴の事だと勝手に解釈している。多分正解。


葉を組み直す。
葉と花の高さによって、季節を演出する。
「走りの水仙」の時期であれば葉を花よりも高くするのだ。
花が咲き始めたばっかりですよ、と。


これが「盛り」になると花の位置は高くなっていく。
花が満開で、季節真っ盛り。


最後に「名残」
名残の花は、もう咲き終わって花茎は伸びている。
葉を少し短めにして、もうすぐこの季節は終わり、今は名残で咲いている。


そうして葉組みができたら、最初に取っておいたハカマを再びはめ直す。
これは慣れてしまうと出来るけど、初心者にはなかなか難しい作業で、はかせ直すときに破れてしまうこともあるので、生け花とは思えない悲鳴が多々聞こえる。


花器に活けるにあたり、葉の形を作っていく。
ツンツンと葉があるのは庭に咲いた野生の水仙。
向きを変えたり曲線を作ったり、花の向きや長さ、あらゆる所に神経を行き渡らせて活けていく。
ここでかなり技巧的に葉の形を作る人もいるけど、私は割と自然な曲線が好み。



とても理想的な形。
ちなみに私作ではありません。悪しからず。


長年、年明けに水仙を見るという習慣があったせいで、「年が開けたら黄色い花」という固定観念が出来てしまい、全然生け花でも水仙でもないのに、黄色い花を作らなければ!と黄色い花を買ってしまう。


走りは初々しさがあり、盛りは勢いがあり、名残は寂寥感があり、3段階で季節を楽しむという所に、とても日本的な情緒があるように思える。
「走り・盛り・名残」は水仙に限らない。


こうして、決まり事を踏襲しつつ季節を楽しむと、いつの間にかエラく時間が経っていた・・・という事になるのだ。









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