可哀想な銀行マン
いつだったか、隣の部屋から、
ペテ子の大きな怒鳴り声が聞こえてきた。
「引き落としが出来てないってどういうこと!?
あんたらのせいで、こうなっとるだでね!わかっとる?
わかってないだろ!!
おい、お前と喋っててもしょーもないわ!
上のもん連れてこい!」
うわ~~、キレてる~。超クレーマー。こわ~。
今日も相変わらずキレ散らかしてるね~。と思い、
しばらくすると、玄関からペテ子の大声が聞こえる。
今度は何事?と、TVインターフォンの画面を付けると、
ペテ子がまた怒鳴り散らかしている。
もちろん、隣の部屋なので姿は見えないが、
声はしっかり聞こえてくる。
「大変申し訳ございません。こちらお詫びに・・・」
どうやら先程、苦情の電話の相手をしていた担当者が、
「上のもん」を連れて来て、
「上のもん」さんは、菓子折りを持って家まで来たようだ。
よりによってペテ子にミスをするとは、銀行マンさんかわいそ。
その後もキレるだけキレまくり、
一通りキレ散らかして、私の部屋が揺れるほど、玄関のドアを強く閉めたペテ子。
やっと静かになった。
銀行マンが言葉も交わさず帰っていく姿を、私はインターフォン越しに見ていた。
その手には、菓子折りはなかった。
貰うもんは貰うんだ~。ほぉ~ん。と思いながら、TVモニターを消した。
この頃から、外で大声が聞こえると、
もしやまた怒ってる!?と、
TVモニターを付ける癖がついてしまった。
そして、ペテ子の行動にいちいち反応してしまう癖がついてしまった。
誰かにペテ子の話をすることで、笑ってもらい、
自分の中にあるネガティブな念を発散するようになっていった。
じゃないと、大きな音や声が苦手な私は、耐えられなかったのだ。
おかげで、周りから隣の人最近どう?
なんか面白い話ない?
と催促されるほど、
注目されるようになってしまって、
今も転がってくるネタ探しに、
インターフォンは必須アイテムになってしまった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?