お気に入りの時計を無くしてしまった
お気に入りの時計を無くしてしまった。
いつなくなったのかも正直覚えていない。
もしかしたら家にあるのかもしれない。
でもどこを探しても見つからない。
大学生の時からずっとつけていた。
大学時代に彼女とデートした日も、初めての職場で出勤した日も、地方から上京した日も、何もかもうまくいかない日も。
おそらく一番自分と一緒にいたモノが、確かに無くなってしまった。
大学生時代。
当時バイトはしていたけど、貧乏な生活だった。菓子パンや安い肉を炒めて食べるような生活をしていた。
でも楽しかった。大学に行けば一緒に笑う友達がいて、私を見つけるとうるさく絡む後輩がいた。自慢じゃないが恋人もいた。
そんな時に、近くにあったショッピングモールの時計屋での出会い。一目惚れだった。
見つけた時に、思わず見入ってしまった。もしかしたら本当は数秒だったのかもしれない。でも確かに心を奪われた。身につけたいと心の底から思った。
それから何度も時計屋に通った。行くたびに同じ時計の前で、時計を見つめる。
今思うとやばいやつだったかもしれない。
でもそれだけの魅力がその時計にあった。
そしてバイト代や、貯金を切り崩してその時計を買った。心の底から嬉しかった。
もう毎日身につけていた。どんな場面でも、いつも左手にいる相棒のような存在だった。
身につけると気持ちが少し締まって、今日も頑張ろうと思えた。
そんな相棒を亡くしてしまった。
今は寂しい。
でもいつまでも寂しい気持ちでいては前に進めない。
前に進むために、たくさんの感謝を今は伝えたい。
ありがとう。
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