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ヨーロッパ文化教養講座(「欧州と世界の貧困史ー古代から現代の貧困政策 その3)

2023/07/14

ヨーロッパの貧困史 その3

D. 産業革命
産業革命により都市化が進む。都市部の工場労働者が増加し、長時間労働、児童・年少者労働、劣悪な労働条件が問題となり、社会政策が必要となる。

1802年 工場法が成立。
綿糸紡績業では9歳以下の子どもの雇用が禁止、18歳以下の労働時間は12時間以下に制限。
1833年 工場法改正
児童労働者禁止、労働時間規制、工場監督官の配置義務化
1847年 10時間労働時間法
1905年 失業労働法->公共職業安定所設置
1909年 最低賃金制度導入

防貧としての社会保険の登場
ドイツ:ビスマルク
1883年 社会保険3制度導入
1883年 疾病保険 1884年 労災保険 1889年 老齢年金保険

英国:ウェブ夫妻の提言により導入
1890年 労災保険 1908年 老齢年金 1911年 国民健康法

スウェーデン:
1913年 国民年金

その後、ヨーロッパ各国で労災、医療保険、年金、失業保険の順番で社会保険が導入され、失業、貧困が個人の道徳の問題ではないと捉えられるようになった。

E. 世界大戦と福祉国家への道

第一次世界大戦後のベルサイユ条約で、1919年ILO(国際労働機関)が設立

米国:
1929年の世界恐慌 ->ニューディール政策
1935年に社会保障法をスタート

ニュージーランド:
1938年 世界で初めての包括的社会保障制度を確立

英国:
1942年 第二次世界大戦後のヨーロッパの福祉国家の基礎となる、「ベヴァリッジ報告(1942年)」。
ドイツの「戦争国家」に対抗して、「福祉国家」への道を示した。
「5つの悪の巨人」である、「窮乏(want)、疾病(disease)、無知(ignorance)、不潔(squalor)、怠惰(idleness)」
を克服するために、児童手当・完全雇用・包括的な保健医療システムの整備を前提とした所得保証を国家責任とする。

ベヴァリッジ報告の多くは、労働党政権で政策として実現された。
1948年 国民扶助法が成立し、300年以上続いた救貧法が廃止された。

ベヴァリッジ報告は各国の社会保障制度に影響を与え、戦後の福祉国家の理論的な支柱となった。
その背景には、先進国に共通した戦後復興のなかでの経済成長、完全雇用、性別役割分業の定着があった。

政府の総需要政策による完全雇用を前提としたこの時期の福祉国家は
「ケインズーベヴァリッジ報福祉国家」と呼ばれることもある。

*放送大学 「貧困の諸相」(駒村康平・慶應義塾大学教授、渡辺久里子・神奈川大学助教)第5章 欧州と世界の貧困史 より

to be continued


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