経済原論概説 第3回 貨幣から資本への転化

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貨幣によってもたらされる商品交換のプロセスは

W - G - W - G - W - G -…

となり、商品Wを売って貨幣Gと交換し、その貨幣で新たな商品を購入することが可能となった。このような形式が発展すると、

G-W-G* G*=G+ΔG   (Δは増加を表す)

例えば、G=100円、W=100円、ΔG=20円とすると、上記式は100円で仕入れたWを120円で販売していることになる。つまり、購入時よりも高値で売ることで利潤が生まれているということである。この時Gは元手=資本として機能することになるのである。

 しかし、全ての人が安く買って安く売ることは不可能である。そんなことをすれば商品の値段は際限なく高騰してしまうし、そもそも高すぎる商品は売れない。これは日常的な感覚で考えればわかりやすいだろう。

 では、利潤はどこから発生するのだろうか。式を見ると、最終的にGが増加しているが、Gそのものの価値がひとりでに上昇したわけではない。そこに置いておいた100円が何もしないのに120円に増えるのはおかしな話である(このような考え方は唯物論的であると言えるだろう)。

 また原論的な考えに則せば、単純な物々交換や買った商品に高い値段を付けて販売する方法では、社会の利潤は恒久的に0である(20円高く売りつけて得をした人がいても、20円損する人がいるため、社会全体の利潤は相殺される)。

 価値が上昇したのはWの過程においてであると考えるのが合理的であろう。つまり、商品に付加価値が加えられたと解釈するのである。生産(過程)Pを考慮に入れて上記式を書き直すと次のようになる。

G - W ⋯ P ⋯ W' - G'       G'=G+ΔG

 先の例と同様に考えると、G=100円、W=100円だが、ここでWに生産活動=労働が加わることで、100円のWがW'となり、その価値を金額で測ると120円となった結果として、ΔG=20円が創出されると考えることができる。

 ΔGの部分を、マルクス経済学では剰余価値と呼び、これが利潤の源であると考える。WにPを加えること、つまり生産的労働によって商品を加工あるいは創造することによって、価値を高めることが可能になるのである。ΔGは、貨幣の価値尺度機能を用いてその価値を金額で測ったものに過ぎないのである。このようにマルクス経済学は、価値を生み出すものは労働であるという、労働価値説に基づいていのである。

次回は労働(P)に着目し、資本主義社会の解析を行う。

次回

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