見出し画像

人間の白い目は協調性の証?霊長類の目の色の進化に迫る

人間の白目は動物界においてあまり見られない珍しい特徴です。なぜ人間だけが進化の過程で白い目を獲得したのでしょうか?最近の研究は、霊長類の目の色の進化と社会行動との間に興味深い関連性を指摘しています。

英国ケンブリッジ大学などの研究チームは100種以上の霊長類を対象に、目の白さと社会行動の関係を統計的に分析しました。その結果、目が白い霊長類ほど仲間と協力的な行動を多くとること、また、仲間同士で致命的な攻撃が少ないことが明らかになりました。

これまで、霊長類の白い目の進化については大きく3つの仮説が提唱されてきました。

1. 自己家畜化仮説:
人間は、家畜化された動物と同様に、攻撃性を抑制し社会的な協調性を高める方向に進化してきたと考えられています。この過程で神経堤細胞と呼ばれる細胞の働きが変化し、体毛の減少や顔立ちの変化など、様々な形態的特徴が現れます。白い目もこの「家畜化症候群」の一環として、偶然に生じた副産物である可能性が指摘されています。

2. 協調的な目仮説:
白い目は黒目に比べて目の動きが分かりやすく、視線の先を仲間に伝えやすいという利点があります。共同注意や協力行動を円滑に行う上で、白い目は重要な役割を果たしている可能性があります。特に、人間のように高度な協力社会を築くためには視線によるコミュニケーションが不可欠であったと考えられています。

3. 視線隠蔽仮説:
一方、多くの霊長類は暗い色素を持つ目を持っています。これは、競争の激しい環境において、視線を隠蔽し意図を悟られないようにするための適応である可能性が考えられています。

今回の研究結果はこれらの3つの仮説全てを支持するものでした。霊長類の目の色はそれぞれの種が直面する社会環境に適応した結果であると考えられます。

引用元

Mearing, A.S., Burkart, J.M., Dunn, J. et al. The evolutionary drivers of primate scleral coloration. Sci Rep 12, 14119 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-18275-9

URL : https://www.nature.com/articles/s41598-022-18275-9

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?