GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係5 ~課題探究的な授業を作る~
《読了6分》
前回の続き。私が「課題探究的な学習」の授業が上手くいっている状況として、航空機の「オートパイロット」「自動操縦」に喩えました。
これは、「動機付け」がしっかりと根付いて、授業導入からの課題設定が子ども一人一人に内在化された結果、教師の支援が無い状況でも「子どもたちが主体的に学習を進めている状況」のことをいいます。
1 用意するモノ
・教科書
・その教科の「札幌市教育課程編成の手引き」 *札幌市の教員のみ
・その教科の「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料
・その教科の学習指導要領解説
・独自の「探究ノート」 *「授業のネタ帳」だと考えてください
2 「課題探究的な学習」の考え方の方法論
(1)その教科であなた(先生)が好きな領域は何ですか
・課題探究的な学習は、楽しいから学ぶモノです。
・指導者が、楽しくない、苦痛に感じる領域は生徒にも伝播します。
・ですから、まず指導者が楽しいと感じて教えることが「課題探究的な学習」の一歩です。
(2)その領域で、生徒に「ここが理解されると、楽しく学べる」要因を吟味する
・学習ですから、ある程度の知識や技能が身につけることは必須です。
・しかしながら、基礎基本的な知識・技能が身について、はじめて「楽しさ」を感じることがあります。
・一定の基礎基本を基盤としながら、学ぶ楽しさの理由がどこにあるかを明らかにします。
(3)その「課題探究的な学習」を終えたあと、どんな生徒になってほしいのかを確認する
・「教科が好きになる」「少し興味を持って欲しい」など何でもいいのです。
・欲を言うと「この課題探究的な学習がきっかけとなって、別な学習にも「主体的に取り組む」ような生徒になることが理想です。
・特に、日常生活にあてはめて考えたり、活用できるようになると最高です。
3 具体的な準備作業
(1)まず、「好きな箇所」の教科書を熟読し、内容を確認する
・法令として「指導すべき学習内容」を押さえる → 指導要領解説参照
・その領域の目標、育むべき資質・能力を押さえる → 指導要領解説
・その評価観点を「どのように見取るか」を決める → 学習評価資料
・課題解決のために「働かせる見方・考え方」を確認する → 指導要領解説
(2)授業の導入を考える(動機づけを生み出す方法)
・どのような「語り」「画像」「動画」ではじめるか
・その領域全体の学びをつらぬく「課題設定のための問い」を検討する
・「問い」から「学習課題」までの生徒の立場に立った思考に無理がないか検討する
・ポイントとなる文章、画像、図を吟味する
・原則「学習課題」を設定後は、教師による「指導・指示的発言」は無くすことができるように考慮する。
*「生徒が主体的に学ぶ」のは「学習課題を解決したい強い思い」がある。指導は不要
4 生徒の課題解決に必要で、かつ適切な教材・教具を検討すること
(1)ある程度の生徒の自由度を保障する
・基礎・基本が揺らがない状況で、自由な発想が許容できること
・自身の試行錯誤する活動があって、他の仲間の様子を随時比較できること
・様々な資料を組み合わせることで、「正解ではなく、最適解」が導き出されること
*便利で、すぐ解決につながる教材・教具はダメ(そもそも課題設定が低すぎ?)
(2)想定される生徒が活用すると思われる道具に制限を設けない
・ICT 機器(タブレット端末)利用
・資料(教科資料、図書館)
・インターネット web 検索
・観察、実験を伴う場合は、器具や計測器
*生徒自身が必要に応じて選択できる状況にする
5 思考整理の方法を周知しておくこと(思考ツール)
・ノート、ワークシート、付せん
・Y,X,W 分類図
・マトリクス表
・ベン図、チャート図
*これらについて、日常授業で活用する訓練があるといいです
6 探究の過程をメタ認知的知識をもとにメタ認知することを促す
・課題解決の途中で、「学習したことが使える」「ここまでの取組に自信がある」「この手段で説明できる」「他者の考え方が参考になる」などの「簡易質問紙」あるいはGoogleclassroom経由で「スプレッドシート」に記録させる
・上記の記録は「課題探究の最後の振り返り」の材料になる
・総合すると「生徒の振り返り」と「教師の主体的に学習に取り組む態度」の評価として指導と評価の一体化がはかれる
7 発表方法の検討
(1)発表アイテム
・ホワイトボード ・ワークシート ・タブレット端末(スライド)
・教材提示装置
(2)発表形態
・グループ内交流 ・個人から全体 ・JamBoard などの ICT 交流
8 思考の多様性が許容される学習集団の雰囲気と教師のスタンス(+研究倫理)
・探究の過程での失敗や間違いもお互いの貴重な情報共有として扱える指導者のスタンス
・「やってみて失敗する」ことが「課題解決に役立つ」ことを個人も集団も認知して、
お互い自由な意見交流ができる学習集団であること
・「間違いや失敗を笑わない」ただし、「研究倫理・不正は許さない」日常指導
いかがでしたでしょうか。
学校現場は、「働き方改革」が叫ばれるほどに多忙な現実から鑑みると、ゼロから「課題探究的な授業作り」は、どうしても億劫になります。ですから、先行実践例があればどんどん真似してやってみることの方が効率がよいです。さらに、「とりあえず、やってみる」ことで、新たな発見もありますし、自分なりの改善点が明確になります。
*「とりあえず、やってみる」という考え方については、私がよく参考にする高橋一也氏のnoteの記事があります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係5 ~課題探究的な授業を作る~」を終わります。次回は「GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係6~GIGAスクール構想での課題探究的な授業~」を予定しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?