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重力がはたらく2物体の相対速度

💡この記事の目標
① 重力を受けて運動する2物体A・Bについて、AからみたBの運動(相対運動)が等速直線運動になることを理解する。
② いくつかのシチュエーションで①を確かめる。
③ 相対運動では『2物体の共通している部分を除いた差の部分だけ』で考えると楽に議論できることを理解する。

この記事では相対速度について考えます。相対速度の考え方って難しいですよね。

いつも「$${\overrightarrow{v_A}-\overrightarrow{v_B}}$$だっけ?$${\overrightarrow{v_B}-\overrightarrow{v_A}}$$だっけ?」。とわからなくなる人は次のように考えてみてください。

  1. 「Aに対するBの相対速度」という部分を「AからみたBの速度」と言い換えてみる(あくまでBの速度という意識をもつ)

  2. 図のようなイメージしやすい$${\overrightarrow{v_A}}$$と$${\overrightarrow{v_B}}$$を書き、Bがどのように動いて見えるべきかを想像して、$${\overrightarrow{v}_{A\rightarrow B}}$$を作図する。

  3. 作図した$${\overrightarrow{v}_{A\rightarrow B}}$$となるにはどのような演算なるべきかを考える。


一方、物体を投げたり落としたりした後、物体は鉛直下向きに重力を受けて運動します。この記事ではこの運動を重力運動と呼ぶことにします。常に重力$${mg}$$を鉛直方向に受けるため、鉛直方向の運動は必ず等加速度運動になります。そのような物体が2つあったとして、その相対速度を考えてみましょう。



問題1 自由落下する物体と投げ上げた物体について

高さ$${h}$$の建物から物体Aを落下させる。それと同時に物体Bを地上から(物体Aの真下から)初速度$${v_0}$$で上方に投げ上げる。Aに対するBの相対速度を求めよ。

※問題設定上$${x}$$軸は不要です

物体Aが落下し始めた時刻を$${t=0}$$とした時、時刻$${t}$$における物体Aと物体Bの速度の関数をそれぞれ$${v_A,v_B}$$とするとこれらはそれぞれ

$$
\begin{align*}
v_A &=-gt\\
v_B &=v_0 -gt
\end{align*}
$$

となるので、Aに対するBの相対速度$${v_{A\rightarrow B} (=v_B-v_A)}$$は、$${v_{A\rightarrow B} =v_0}$$となりますね!
以上より、物体Bは速度$${v_0}$$の等速直線運動で近づいているということが分かりました。

二つの運動に共通している$${-gt}$$の項がキャンセルされていることがわかるでしょう。このように、相対運動は速度に変化を与える項がキャンセルされるため等速直線運動となります。

実は相対運動が絡んだ問題は『2物体の共通している部分を除いた差の部分だけ』で議論すると、スッキリいくことが多いです。
この事実を知っていると、いろんなシチュエーションで応用が効きます。
次の例でそれを確認してみましょう!


問題2 等速で上昇する気球から投げ上げた物体の相対速度

等速度$${V}$$で上昇する気球から、気球に対して初速度$${v_0}$$で物体を上方に投げ上げた。次に気球と物体がすれ違うまでの時刻$${t}$$を求めよ。

地上からみた立場と、気球から見た立場で立式の仕方が違います。それぞれの立場で立式してみましょう。

■地上からみた場合

さてこの時、気球と物体がすれ違う条件は$${h_A=h_B}$$であるから、

$$
\begin{align*}
V t &= (v_0 + V)t -\dfrac{1}{2}gt^2\\
&(v_0 - \dfrac{1}{2}gt)t =0 \\
\therefore t &=0, \dfrac{2v_0}{g}
\end{align*}
$$

となります。さて、ここで$${t=0}$$は投げ上げた瞬間($${h_A=h_B=0}$$)を表しており、次にすれ違う時刻は$${t=\dfrac{2v_0}{g}}$$であり、これが答えとなります!

■気球からみた場合

以上より、

$$
\begin{align*}
-v_0 &=v_0-gt\\
\therefore t &=\cfrac{2v_0}{g}
\end{align*}
$$

となり、非常にシンプルに解くことができました。この場合、共通の運動である気球の速度$${V}$$を除いた議論でした。


問題3 モンキーハンティング・改

原点Oから水平右向きに$${x}$$軸、鉛直上向きに$${y}$$軸をとり、物体Aを原点から初速度$${\overrightarrow{v_0}=(v_0\cos{\alpha}, v_0\sin{\alpha})}$$で斜方投射する。
それと同時に物体Bを、座標$${(a, b)}$$から初速度$${\overrightarrow{V_0}=(V_0\cos{\beta}, V_0\sin{\beta})}$$で斜方投射する。
この時$${\tan{\theta}=a/b}$$とする時、物体Aが物体Bに衝突する条件を求めよ。

有名なモンキーハンティングの問題は、$${\beta=-90^{\circ}}$$, $${V_0=0}$$の時です。今回はそれをさらに一般化した条件で考えてみましょう。まずは状況の設定を確認します。

次に、時刻$${t}$$における、物体A、Bの速度$${\overrightarrow{v_A}(t)}$$、$${\overrightarrow{v_B}(t)}$$は

$$
A: \overrightarrow{v_A}(t) = (v_0\cos\alpha, v_0\sin\alpha - gt)\\
B: \overrightarrow{v_B}(t) = (V_0\cos\beta, V_0\sin\beta - gt)\\
$$

であるため、物体BからみたAの相対速度$${\overrightarrow{v}_{B \rightarrow A}}$$は、

$$
\begin{align*}
\overrightarrow{v}_{B \rightarrow A} &= \vec{v_A}(t) - \vec{v_B}(t)\\
&= (v_0\cos\alpha - V_0\cos\beta, v_0\sin\alpha - V_0\sin\beta)
\end{align*}
$$

となります!
この結果から、物体BからAの運動をみると、$${\overrightarrow{v}_{B \rightarrow A} (= \vec{v_A}(t) - \vec{v_B}(t)) = (v_0\cos\alpha - V_0\cos\beta, v_0\sin\alpha - V_0\sin\beta)}$$の、等速直線運動をしているように見えるはずです。
このことから、物体Aが物体Bに衝突する条件は、その相対速度の方向ベクトルが$${(a, b)}$$になっていればよい、ということなので

$$
\begin{align*}
\dfrac{v_0\sin\alpha - V_0\sin\beta}{v_0\cos\alpha - V_0\cos\beta} &=  \dfrac{a}{b} (= \tan \theta)\\
\end{align*}
$$

が衝突の条件だと分かりました!

■ モンキーハンティング問題の条件で確かめてみる

$${\beta=-90^{\circ}}$$, $${V_0=0}$$であるときが、モンキーハンティングの条件です。これらを代入すると

$$
\dfrac{\sin{\alpha}}{\cos\alpha}=\tan\alpha = \tan\theta
$$

となります。この時、つまりサル(物体B)に向かって物体を投げると絶対にあたるという有名な結論を得ることが分かりますね!


というわけで、この記事の目標を振り返ります。

💡この記事の目標
① 重力を受けて運動する2物体A・Bについて、AからみたBの運動(相対運動)が等速直線運動になることを理解する。
② いくつかのシチュエーションで①を確かめる。
③ 相対運動では『2物体の共通している部分を除いた差の部分だけ』で考えると楽に議論できることを理解する。

相対運動は、想像がしずらいですが、コツさえつかめば見通しをもって物理現象を眺めることができます。ぜひものにしてくださいね!

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