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血清・細胞培養・慰霊祭

一般にはあまり知られていませんが、研究で細胞を培養する場合、牛の胎児の血清を使います。

この血清はウシ胎児血清(Fetal Bivoine Serum; FBS)と呼ばれています。ウシ胎児血清という名前が分かりにくいですが、誤解を恐れずに言い換えると、メスの牛のおなかの中にいる状態の牛の赤ちゃん(胎児)の血液のことです。

今回はこのウシ胎児血清FBSのサプライチェーンについて、Youtubeに動画があったので、要点をまとめた備忘録を共有します。

参考動画1
Fetal Bovine Serum Value chain - How it's produced ?
参考動画2
Foetal Bovine Serum Manufacturing Process

ステップ1
妊娠したメスの牛を処分場へ運搬する
*参考動画1では乳牛としての役目を終えたメスの牛が処分場に着いたときにたまたま妊娠していることがある、と述べられていますが、参考動画2では胎児血清を得るために処分場へ送る前に人工授精させていると述べられています。

ステップ2
胎児を取り出し、血液を採取する。

ステップ3
血液を特殊なフィルターで3回ろ過して、血清を取り出す(終了)。

*血清とは、血液の一部で白血球や赤血球などの細胞成分を含まない部分のことです。

ブラジル産やオランダ産、オーストラリア産があり、価格は500mLが39,800円になっています(経験的には500mLが4万円弱なのは安い方で、別のブランドのものだと5万円ほどする感覚です)。

細胞を培養する過程の中で、最もランニングコストが高いの血清です。最近話題の培養肉に関しても、培養コストの高さ(主な要因は血清)が課題になっており、無血清培地の開発や増殖効率の向上が培養肉分野での短期目標になっているそうです。

ちなみに、宗教的に上述したような血清の採取が許容されるのかどうかは分かりませんが、基本的にキリスト教仏教も肉食を許容しています。従って、動物を殺すこと自体にはキリスト教も仏教も抵抗を示していません。よく間違われますが、宗教を信仰していることヴィ―ガン(菜食主義)は必ずしも同一ではないので、注意が必要です。

また、日本においては、動物を扱う大学や研究所では、ほとんどの場合、実験動物用の共同墓地があり、毎年慰霊祭を行うのが慣例となっています。海外においても、日本のような異例性が行われています。例えばアメリカのNIH(国立衛生研究所)では、2016年から慰霊祭(Tribute Ceremony)がおこなれていますし、YouTubeには台湾の海洋研究所が中国式の慰霊祭を行っている動画があります。

知らないところでヒトのために使われている他の命に、これからも感謝の心を持ちながら毎日を生きていきたいです。

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