見出し画像

意外と知らないパラジウムについて調べてみた【歯科】

パラジウムとは?

こんにちはラメポタです。かなり久々の投稿です。
 
金やパラジウムなど貴金属の価格の変化は、歯科業界に大きな影響を及ぼします。金はある程度聞いたことあるしイメージもしやすく、ある程度知ってるよという方も多いでしょう。しかし、パラジウムはどうでしょうか。材料系先攻などでなければあまり詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。ましてや理系でない方からすると聞いたこともないという方もいらっしゃるかと思います。
 
そこで、今回は(私の勉強もかねて)パラジウムについて調べてみようと思います。(まだ歯科医師どころか歯学部生としても未熟ですので間違いがあるかもしれませんがご容赦ください。)

パラジウムの基本性質・特性

私は工学部出身ですがパラジウムは座学・研究室・実業務のいずれでもしっかりと扱ったことはありません。一応、有機化学の反応とかでパラジウムが触媒利用されている例は教科書でしばしば見ましが、その時もパラジウム自体については調べなかったので、正直ほとんど何も知りません。貴金属で価格がお高そうというイメージを持っているくらいです。こんな状態ですので、まずは基本的な性質や特性を確認してみます。

【パラジウムの基本情報】
・元素番号:46
・元素記号:Pd
・11族の金属元素
・原子量:106.4
・密度:12g/cm3
・融点:1555℃
・希少金属の1つ

Wikipediaによると、耐食性と柔らかさを持ち、合金の素材として利用されるとのこと。白金族の中では耐酸性が最弱で硝酸に溶けるほか、酸化剤があると塩酸にも溶けるようです。化学反応の触媒以外の用途としてはジュエリー用貴金属としての利用や歯科治療の材料としての利用があるそうです。
 
世界の産出量ベースでみると、その大半をロシアと南アフリカ共和国で占めているようです(2007年実績ではこの2国で84%を占めている)。随分と偏っていますね。

パラジウムの価格について

(以降の価格はすべて1gあたりの価格です。)
30年前(1993年3月時点)では500~600円程度だったのが、10年前(2013年3月時点)では2200円程度に、そして2023年3月時点では7000円程度まであがっていました。ここ10年でとんでもなく高騰しています。
しかし、2024年3月時点では5000~6000円程度、今(2024年8月)は5000円前後と、最近では価格がやや落ち着いてきているようです。
ロシアのウクライナ侵攻直後はパラジウムの価格高騰の懸念もあったようですが、今は価格が少し落ち着いたことからひとまずは杞憂に終わったと言ったところでしょうか。まあ、まだまだ要注視ですが…

歯科におけるパラジウム

ここまではパラジウムの全般的な話をしてきましたが、ここからは実際の歯科におけるパラジウムにフォーカスをあてます。パラジウムは金属製のクラウンやブリッジなどの補綴物(※)に使われる材料として非常に有用です。
(※「補綴物」は「ほてつぶつ」と読みます。歯科用語は難しいものが多いですね。)
それでは早速、歯科におけるパラジウムの特徴を見ていきます。
 
【1. 耐食性】
パラジウムは化学的に安定しているため、口腔内でも腐食しにくいという特徴があります。ゆえに補綴物を長期使用しても劣化しにくい点がGoodです。
 
【2. 生体適合性】
パラジウムは生体適合性が高く、アレルギーを引き起こしにくい金属です。補綴物などは直接口腔内で使用するため生体適合性は重要なファクターの1つですね。生体適合性が高いので多くの患者に安全に使用することができる点がメリットになります。生体適合性が高い金属としてはほかにチタンなどもありますね。
 
【3. 硬度・強度】
パラジウムには適度な硬度があり、十分な強度を有する補綴物として使用できます。特に、ブリッジなど大きな負荷がかかる補綴物でも、形状を保てます。壊れにくく長期間使用できるというのは、大きな長所ですね。
 
【4. 加工性】
パラジウムは他の金属と混ぜやすく、加工も比較的容易です。そのため、歯科での精密な補綴物の製作に適しています。これもアドバンテージになりますね。
 
【5. コスト】
パラジウムは金など他の貴金属と比べると比較的安価なため、コストを抑えつつも高品質な補綴物を作製できる点もメリットの1つです。
 
以上を見ていくと、パラジウムが歯科治療で広く利用されるのも納得ですね。
しかし、一部の患者での金属アレルギーの懸念もあるため、最近ではメタルフリーの素材(セラミックなど)への移行も見られるようです。パラジウム自体は生体適合性が高いものの、万人に適合するとは限りませんし、また、実際に使用する際は合金として使用することから、他の金属の影響で金属アレルギーが出る場合もあるでしょう。
 
事前に患者さんにヒアリングするとか、パッチテストを実施するなどして、アレルギーの有無を判断し、適切な治療法を選べるような歯科医師になりたいものです。

以上、今回はここまでです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?