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若者2

ホテルの近くにあった旅行社主催の郊外ツアーに、莫高窟で知り合った若い彼と一緒に行くことになった。

外国人の参加は想定されていない中国人向けのツアーだ。私1人だったら参加をためらったかもしれないが、若い彼の好奇心のために半ば付き合うような格好で参加することになった。行き先は玉関などのシルクロードの史跡だ。

ツアーバスの集合場所は私の泊まっているホテルの向かいだ。朝7時発にもかかわらず敦煌は時差の関係で真っ暗だ。旅行社の受付の方が声をかけてくれなければ、危うく置いていかれるところだった。

集合時刻より少し遅れて彼がやってきた。遅れてきたのは彼だけではない。この辺りはいかにも中国らしい。

マイクロバスは20人余りのお客さんでいっぱいになった。近くの席に座った男性は、新疆地区から来た鉱山技師だった。途中黒っぽい色の山を指差して「鉄鉱石が出るのではないか」と説明してくれた(実際に出ることが後で入った博物館の展示でわかった)。

同乗者の中に、若い女性の2人組がいた。運転手と話している内容から、彼女たちも大学を卒業したばかりだという。

彼と同い年だ。彼女たちもそれと気づき、元気の良い子の方が彼に話しかけてきた。お互い大学生だと知り、もう1人の子が話に加わった。彼も満更ではなさそう。

ここは年寄りが邪魔をしてはなるまい。私は同年代くらいの新疆の鉱山技師に話しかけ、それとなく距離をあけることにした。

うまくやれよ。
元気のいい方の子はたぶん君を気に入っているぞ。

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