Blue Drag

「ブルー・ブラァグ Blue Drag」は、ジョー・マイローJoe Myrowによって1932年に書かれたジャズ・ナンバー。ダンス・ナンバーでその名が指し示すように「ブルージー」な曲調で「引きずる」ような曲調。トラッドジャズとマヌーシュ・ジャズの大スタンダード。

インストで演奏される印象があるが歌詞もあって、歌ありの録音も多い。数あるダンス指南曲の一つとも言えそうで歌詞の中には「足を引っ張って。地面をこするようにする。」とある。またこうしたダンス指南曲に特徴的な「ダンスの新しさ」という点も強調されている。多くの録音があり、いずれにせよスローのスイングとして演奏される場合とアップテンポで演奏される場合の両方がある。

録音

Earl Hines And His Orchestra (New York, July 14, 1932)
Earl Hines (Piano); Omer Simeon (Clarinet); Darnell Howard (Alto Saxophone); Quinn Wilson (Bass); Cecil Irwin (Tenor Saxophone); Wallace Bishop (Drums); Lawrence Dixon (Guitar); Louis Taylor (Trombone); William Franklin (Trombone); Charlie Allen (Trumpet); George Dixon (Trumpet); Walter Fuller (Trumpet)
まさにドラァグの録音。30年代初期のアール・ハインズ楽団。素晴らしい。

Quintette du Hot Club de France (Ultraphone, Paris April 1935)
Stéphane Grappelli (Violin); Django Reinhardt (Guitar); Roger Chaput (Guitar); Joseph Reinhardt (Guitar); Louis Vola (Bass)
この曲のその後の演奏のされ方を決定づけたような録音の一つ。こういったマイナーの曲のジャンゴは本当にすさまじい。

The Wiyos (Harrisonburg, VA 2003)
Parrish Ellis (Guitar), Vocal); Michael Farkas (Vocals, Kazoo, Washboard); Joseph "Joebass" DeJarnette (Bass, Vocal)
ボブ・ディランのツアーにも参加したジャグ・バンドのワイヨーズ。歯切れのよいスイングを展開。

Swing 41 (Copenhagen 2008)
Peter Williams (Bass); Jørgen Martinsen (Violin); Martin Walker (Guitar); Flemming Honig (Guitar)
ピーター・ウィリアムズが主導しデンマークで活動していたマヌーシュジャズ・バンド。ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』のサントラにも参加した実力派。

The Blue Viper of Brooklyn (Brooklyn 2011)
Billy Nemec (Guitar, Vocal); Chris Pistorino (Bass, Vocal); David Langlois (Washboard, Vocal); Sam Hoyt (Trumpet); Tom Abbott (Clarinet)
現在でもブルックリンで活動しているトラッドジャズ・バンドのブルーヴァイパーの録音。わりと速いテンポの録音。

Swing De Gitanes (Israel 2016)
Ori Ben-Zvi (Guitar); Yaakov Hoter (Guitar); Oren Sagi (Double Bass); Daniel Weltlinger (Violin);
スイング・デ・ギタンズの録音。イスラエルで活躍していた。ダニエル・ウェルトリンガーはゲストで参加。

Ben Fox-Trot Orchestra (New Orleans 2017)
Cleveland Donald (trumpet); Jon Ramm (trombone); Jason Danti (clarinet); James Evans (c melody sax); Trenton O'Neil (drums); Ben Fox (bass, vocals); Alex Belhaj (guitar)
ニューオーリンズ・ジャズのベースの雄、ベン・フォックスのバンドの録音。アンサンブルとソロの両方に感動する。ギターのアレックス・ベルハージはジャンゴ・スタイルをお手本にしている。

Soggy Po’ Boys (Dover, New Hampshire 2017)
Stu Dias (Vocals, Guitar); Eric Klaxton (Clarinet); Josh Gagnon (Trombone); Nick Mainella (Tenor Sax); Mike Effenberger (Piano); Brian Waterhouse (Drums); Scott Kiefner (Bass)
ニューハンプシャーのトラッドジャズ/スイング・バンドのソギー・ポ・ボーイズの録音。ここではビッグバンドのアレンジをどうやってスモール・グループに落とし込むのかということに志向して演奏されている。

Tcha-Badjo & Les Poissons Voyageurs (Montreal 2018)
Damien Levasseur (Guitar); Charles Fréchette (Guitar); Coline Coline (Violin); Jean Russell (Bass, Vocal); Jean François Leclerc (Accordion, Vocal)
モントリオール出身のチャー・バジョの録音。これまでのマヌーシュ・ジャズのスタイルでの演奏とは違い、速いテンポで演奏された録音。さらに歌あり。

The Hot Toddies Jazz Band (New York March 06, 2019)
Gabe Terracciano (Violin); Jon Seiger (trumpet); Dan Levinson (Saxophone); Gordon Webster (Piano); Justin Poindexter (Guitar); Ian Hutchison (Bass); Patrick Soluri (Drums)
タートル・アイランド・ストリング・カルテットのメンバーのギャビ・テラシアーノが率いるトラッドジャズ・バンド。これが収録されているアルバムは2023年に出たんだけど2023年の年間ナンバーワンなくらい素晴らしかった。メンバーは現在のニューヨークのトラッドジャズ・シーンを支えているメンバーが集まっている。QHCFの録音を下敷きにしている。バイオリンのソロは息を呑む美しさ。

Adrien Chevalier (New York City 2022)
Adrien Chevalier (Violin); Roberto Gervasi (accordion); Dennis Pol (lead guitar); Brad Brose (rhythm guitar); Julian Smith (bass)
アヴァロン・ジャズにも参加しているエイドリアン・チェヴァリエの録音。ジャンゴたちの録音を下敷きにしている。チェヴァリエのバイオリンがかっこよすぎて耳を引いて聴いているとどんどんバンドが作る世界に引き込まれる。