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Don't Blame Me

「ドント・ブレイム・ミー Don't Blame Me」は1933年にジミー・マクヒュー Jimmy McHugh が作曲し、ドロシー・フィールズ Dorothy Fields が作詞したポピュラー・ソング。『クラウン・イン・クローヴァー Clowns in Clover』にて歌われたが、このショー自体は流行らず翌年に公開された映画『晩餐八時 Dinner at Eight』に挿入されヒットしたスウィートな曲。トラッド・ジャズのみならずさまざまなスタイルで演奏はされるジャズ・スタンダード。

理由なき恋の曲

「あなたに恋に落ちてしまったのは、あなたが素敵だから。月明かりにそうさせられたの。だからわたしを責めないで」という切ない内容。そんなわけでバラードで演奏されることが多い。

また、韻の踏み方もおしゃれで、次のような感じで踏まれる (Furia, 1990)。

I'm under your spell, but
how can I help it

ここでは /el bət/ と /el pɪt/が綺麗に韻を踏んでいる。/p/と/b/はどちらも両唇破裂音。つまり上唇と下唇を閉じて一気に呼気を出すことによって作られる音。違いは声帯を震わせるか震わせないかしかないから、韻を踏んでいるように聴こえるわけである。つまり母音だけではなく子音レベルでも上手に考えられた韻ということができるだろう。

ちなみにテイラー・スウィフトも同名の曲を出しており、そちらの方はなかなか歌詞がえぐい。

録音

Teddy Wilson (NYC, November 12, 1937)
Teddy Wilson (Piano)
テディ・ウィルソンのソロ・ピアノ。クラシカルな雰囲気もまとったバラードとして演奏している。

Nat King Cole Trio (Hollywood, January 30, 1939)
Nat Cole (Piano); Oscar Moore (Guitar); Wesley Prince (Bass)
ナット・コール・トリオのラジオのセッションから。インストでよりナット・コールのピアノを堪能することができる。オスカー・ムーアのソロも絶品!

The Ben Webster Quintet (NYC, February 8, 1944)
Ben Webster (Tenor Saxophone); Hot Lips Page (Trumpet); Clyde Hart (Piano); Charlie Drayton (Bass); Denzil Best (Drums);
ベン・ウェブスターの録音。クインテットの録音でスローなスウィングとして演奏されている。前小節3拍目裏から豪快に入るフレーズがかっこいい!

Nat King Cole Trio (Hollywood, Early August 1944)
Nat Cole (Vocal, Piano); Oscar Moore (Guitar); Johnny Miller (Bass)
ナット・コールの歌声がブルージーなトリオの録音。オスカー・ムーアのギターが炸裂している。もっとも好きな歌物の録音の一つ。

The Slim Gaillard Quartet (Los Angeles, California, 1945)
Slim Gaillard (Vocal, Guitar); Thomas "Bam" Brown (Bass); Dodo Marmarosa (Piano); Zutty Singleton (Drums)
よりブルージーになって兵役から帰ってきたスリム・ゲイラードの録音。ヴォーカリストとして色気が増しており、ノヴェルティなジャイヴ感は薄まっている。

The Roy Eldridge Quintet (LA, December 10, 1953)
Roy Eldridge (Trumpet); Oscar Peterson (Piano); Herb Ellis (Guitar); Ray Brown (Bass); Alvin Stoller (Drums);
ロイ・エルドリッジのヴァーヴのセッション。かなりスモーキーなトランペットが非常にかっこいい。とにかくロイ・エルドリッジの渋さが全開の録音。

Slim Gaillard (NYC, November 1958)
Slim Gaillard (Vocal, Guitar); Unknown (Bass); Unknown (Piano); Unknown (Drums)
スリム・ゲイラードのヴァーヴでの録音。だれが参加したのかはわかっていないが、かつてのジャイヴさを取り返したようなヴァーカル・ワークを楽しめる。またギターがかなりかっこいいところもポイント。

Sammy Price (Bern, Switzerland, May 25, 1975)
Sammy Price (Piano); J.C. Heard (Drums)
サミー・プライスの録音。レイドバックしたスウィングで、さらにバレルハウスでの演奏のよう。ブルージーさも素敵。

Yoshihiro Arita (Newton, MA July September and December 1990)
Cyd Smith (Vocal); Yoshihiro Arita (Guitar); John McGann (Guitar); Jim Guttmann (Bass); Matt Glaser (Violin);
マエストロ有田さんの録音。歌モノのマヌーシュ・ジャズ好きならば絶対好きになるだろう録音。

参考文献

Furia, Philip. (1990). The poets of Tin Pan Alley: A History of America's Great Lyricists. Oxford: Oxford University Press.


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