見出し画像

I Can't Believe That You're in Love with Me

「アイ・キャント・ビリーブ・ザット・ユー・アー・イン・ラブ・ウィズ・ミー I Can't Believe That You're in Love with Me」は1926年にジミー・マクヒュー Jimmy McHughが作曲し、クラレンス・ガスキルClarence Gaskillが作詞したポピュラーソング。一応、「恋のためいき」という日本語のタイトルがあるらしいがエディ・ヒギンスのアルバムくらいでしか使われているところを見たことがない。

コットンクラブのショーで使用された曲で、マクヒューがドロシー・フィールズとタッグを組む前の作品。マクヒューのほかの名曲に隠れている感じがあるが、これも素敵な楽曲。私が好きなジャズの名曲のトップ3に入る。

幸せな心情を吐露した曲

憧れの大好きな人と恋人同士になれた気持ちがストレートに描かれている。「君の青い瞳や君のキスになにができるのか僕は知らなかったよ。君が僕に恋しているなんて信じられないよ」とはじまり、「君はみんなにどこに行っても、僕が君のことを考え惚けているって言うんだ。君が僕に恋しているなんてみんな信じられないんだ。」と続く。極め付けは「君は手が届かない僕の憧れなんだ。僕のことを好きだなんてとても想像もできないよ」というところ。ここがとても好き。「やっぱり僕は幸運な人なんだ。君が僕に恋しているなんて信じられないよ。」と締められる。女性目線でも男性目線でもどちらでもロマンチックな曲だと思う。

録音

Louis Armstrong and His Orchestra (NYC, April 5, 1930)
Louis Armstrong (trumpet, vocal); Ed Anderson (trumpet); Henry Hicks (trombone); Bobby Holmes (clarinet, alto saxophone); Theodore McCord (alto saxophone); Castor McCord (tenor saxophone); Joe Turner (piano); Bernard Addison (guitar); Lavert Hutchinson (tuba); Willie Lynch (drums)
ビッグバンド期のルイ・アームストロングの録音。後述するようにグラッペリに強い影響を与えた録音。2回トランペットのソロがあるんだけどどちらもとてもかっこいい!

Eddie South (Paris, November 23, 1937)
Eddie South (Violin); Django Reinhardt (Guitar); Paul Cordonnier (Bass)
エディ・サウスとジャンゴの録音。ほかのスターに比べると少し認知度が劣るけどもこの録音はすごい。前編エディ・サウスが弾きまくっている。これを聴いていると本当にエディ・サウスはクラシック出身のヴァイオリニストだったのだと確認することができる。素敵な録音。

Teddy Wilson Orchestra (NYC, December 17, 1937)
Hot Lips Page (Trumpet); Pee Wee Russell (Clarinet); Chu Berry (Tenor Saxophone); Teddy Wilson (Piano); Allen Reuss (Guitar); unknown (Bass), unknown (Drums)
インストのテディ・ウィルソンの録音なんだけど一度録音されたあとリジェクトされて未発表になっていたもの。それでもここで聴けるテディ・ウィルソンのピアノは美しいし、軽快なアラン・リュースのギターもかっこいい!

Teddy Wilson Orchestra (NYC, January 6, 1938)
Buck Clayton (Trumpet); Benny Morton (Trombone); Lester Young (Tenor Saxophone); Teddy Wilson (Piano); Freddie Green (Guitar); Walter Page (Bass); Jo Jones (Drums); Billie Holiday (Vocal)
1937年のセッションよりもゆっくりになった録音。全体的によりブルージーになっている。

Stéphane Grappelli Et Son Sextette (Paris, May 16, 1955)
Stéphane Grappelli (Violin); Michel Hauser (Vibraphone); Maurice Vander (Piano); René Duchaussoir (Guitar); Benoit Quersin (Bass); Jean-Louis Viale (Drums)
グラッペリの録音。少なくとももう一つこの曲のスタジオ録音があるはずなんだけど詳細がわからなかった。この録音も素敵。バルマーが執筆したグラッペリ伝記によればグラッペリはとくに上述したルイ・アームストロングのこの曲に感銘を受けたらしい (Balmer, 2008, p. 256)。ルイ・アームストロングの録音のとくにヴォーカルに衝撃を受けた。グラッペリの影響はヴァイオリンだけではなくヴォーカルやほかの楽器にもあるようだ。

Jabbo Smith (NYC, October 15 1961)
Jabbo Smith (Trumpet, Trombone); Fred (Chace); Mike Mckendrick (Guitar); Marty Grosz (Guitar); White Mitchell (Bass)
伝説のトランペッター、ジャボ・スミスの60年代のセッションの録音。マイク・マケンドリックのギターはまさにシカゴの伝統を紡いでいるよう。すげえかっこいい録音。

Stephane Grappelli (London, November 5, 1973)
Stephane Grappelli (Violin); Denny Wright (Guitar); Diz Disley (Guitar); Len Skeat (Bass)
グラッペリの名演。素晴らしい…。グラッペリはソロもかっこいんだけどテーマのアレンジも素敵。ソロに入るときなんて鳥肌もの。そして本当にアドリブなのか(アドリブなんだけど)と疑うくらい美しいソロを展開している。1回目も2回目のソロもどっちも最高!グラッペリの録音のなかでもかなり好きな録音。

Orphan Newsboys (NYC 1989)
Marty Grosz (Guitar); Bobby Gordon (Vocal, Clarinet); Peter Ecklund (Cornet); Greg Cohen (Bass)
マーティ・グロスのバンド、オーファン・ニュースボーイズの録音。めずらしくボビー・ゴードンがボーカルを担当している。この曲ではもっとも好きな録音の一つ。

Doc Cheatham (New Orleans 1994)
Bill Huntington (Bass); Brian O'Connell (Clarinet); Les Muscutt (Banjo); Butch Thompson (Piano); Doc Cheatham (Trumpet)
枯れた音色の美しいドク・チータムの録音。とても88歳の演奏には聴こえない。ニューオーリンズ流なんだけどシカゴ・スタイルに寄っている。とても素敵!

Bob Schulz And His Chicago Rhythm Kings (Atlanta April 16 2000)
Mike Karoub (Bass); Tom Fischer (Clarinet); Bob Schulz (Cornet, Vocals); Hal Smith (Drums); Marty Grosz (Guitar); Mark Shane (Piano); Bob Havens (Trombone)
ボブ・シュッツのシカゴ・スタイルの録音。最初のテーマはスロー・スウィングで演奏していて、途中から速くなる。トム・フィッシャーのクラリネットがよきよき。歌詞をちょくちょく変えておりもっとも特徴的なのは最後のAメロで”I can’t believe that I’m love with you”に変えているところ。そのあとのボブ・ヘイヴンスのトロンボーンからマーク・シェインのソロがとても好き。マーティ・グロスのギターがかっこいいのは言わずもがな。

Tim Kliphuis (Kent, 9–10, 2005)
Tim Kliphuis (Violin); Len Skeat (Bass); Mitch Dalton (Guitar)
ティム・クリップハウスの録音。中期グラッペリのような演奏。トリオなのもまた素敵。グラッペリのトリビュートなんだけどコピーとかそういうのではない。73年のグラッペリの録音でも参加したレン・スキートのベース・ソロもとても美しく全体的に上品な録音になっている。

Hot Club Sandwich (Olympia, WA, 2007)
Dan Hicks (Vocal); James Schneider (Bass); Greg Ruby (Guitar), Kevin Connor (Guitar and vocal); Ray Wood (Guitar); Matt Sircely (Mandolin); Tim Wetmiller (Violin);
ホット・クラブ・サンドウィッチの録音。イントロからかっこいい!ここではダン・ヒックスがボーカルを担当している。まさにアコースティック・スゥイングな録音。

Hot Club of Cowtown (Austin Texas, May 10, 11, 12, 2008)
Elana James (Fiddle, Vocal); Whit Smith (Guitar, Vocal); Jake Erwin (Bass)
HCCTの落ち着いた感じの録音。ちょっとブルージーな感じに気だるく歌っている。

Miss Rose & Her Rhythm Percolators (Seattle 2008[?])
Sunge Rose (Vocal); Dayton Allemann (Piano); Mark Bentz (Cornet); Ericka Kendall (Bass)
ミス・ローズのバンドの録音。落ち着いた演奏。ヴァースから入るのは結構珍しい。クラシカルな1920年代のポピュラーソングとして録音している。

Connie Evingson And The John Jorgenson Quintet (Minneapolis, MN, 2014)
Connie Evingson (Vocal); John Jorgenson (Guitar); Doug Martin (Guitar); Simon Planting (Bass); Rick Reed (Drums); Jason Anick (Violin)
コニー・エビンソンのマヌーシュ・ジャズ作品第二弾。素晴らしい!コニー・エヴィンソンの歌声とジョン・ジョーゲンソンのバンドの相性がほんとによくてソロを楽しむっていうよりも全体のアンサンブルを楽しむような録音。

New Orleans Jazz Vipers (New Orleans 2015)
Joe Braun (Alto Saxophone); Kevin Louis (Trumpet); Craig Klein (Trombone); Oliver Bonie (Bari Saxophone); Molly Reeves (Guitar); Joshua Gouzy (Bass)
ジャズ・ヴァイパーズの録音。モーリー・リーヴスのギターが気持ちよいですな。クレイグ・クレインのトロンボーンが聴きどころ。

Jonathan Stout and His Campus Five (Sarasota 2017)
Jonathan Stout (guitar); Hilary Alexander (vocals); Albert Alva (tenor saxophone); Jim Ziegler (trumpet); Christopher Dawson (piano); Wally Hersom (bass); Josh Collazo (drums)
ジョナサン・スタウトのファンとしては推したい録音。録音はジャズのレコーディング、テレビや映画などのスタジオ録音に長く携わっているディック・ハミルトンによるもの。シカゴ・スタイルとニューヨーク・スタイルのおいしいところを取ったような素敵な録音。

Jelly Roll Sweet Band (Montpellier, France, 2018)
Rachel Floricourt (Vocal, washboard); Fred Clavel (Bass); Pierlo Chamielec (Trombone); Eric Thiercy (Trumpet); Gilles Yvanez (Guitar); Maximiliano Zecchin (Tenor Saxophone)
フランスのモンペリエで活動していたジェリー・ロール・スウィート・バンドの録音。フラッパーなボーカルとパンキッシュなギターが特徴的。さらにリード楽器がスウィング・バンドのアレンジを踏襲している。

Alapar (Córdoba, Argentina May 2022)
Mariana Laura Piatti (Vocal); Rodrigo Fernández (Guitar); Guillermo Delfino (Bass); Jorge Gornik (Clarinet, Tenor Saxophone);
アルゼンチンのバンド、アラパーの録音。この曲はスローのスウィングでもかっこいい!

The Jonathan Stout Quartet (Los Angels, 2024, Released in 2024)
Jonathan Stout (Guitar); Nate Ketner (Clarinet); Riley Baker (Bass); Josh Collazo (Drums)
ジョナサン・スタウトのカルテットの録音。ライブがバラしになったためスタウトの自宅で撮られた録音。カスケードのFatheadというリボンマイクで撮られており、とても臨場感がある。演奏ももちろん最高で、スタウトのギターもたっぷり堪能できる。素敵!

参考文献

Balmer, Paul. (2008). Stephane Grappelli: A Life in Jazz. London: Bobcat Books.


投げ銭箱。頂いたサポートは活動費に使用させていただきます。