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(When It's) Darkness on the Delta

「ダークネス・オン・ザ・デルタ Darkness on the Delta」は1932年にジェリー・リヴィングストン Jerry Livingstonが作曲し、アル・ニールバーグAl J. Neiburg と マーティ・サイムス Marty Symes が作詞したポピュラーソング。ジャズでもカントリー/ブルーグラスでも演奏される名曲。

ミシシッピの代表曲で、アメフトの試合ではデルタ州立大学のマーチングバンドが必ず演奏したり、ミシシッピの葬式で演奏されたりと、とりわけ市民との関わりの強い曲。1932年にこの曲が発表されたとき、ミシシッピは大恐慌、ミシシッピ川の防波堤の建設、そして1927年に起きた洪水 の大洪水の影響で文字通り「暗闇」だった。そんな中でミルドレッド・ベイリーが歌ったこの曲は市民にとっての癒しとなった。が、よくあることではあるが、この曲の作者たちはミシシッピ出身でもゆかりがあるわけでもない。

歌詞はまさに人々に休息を与えるような内容。「デルタの暗闇の時、私の心は明るい。デルタの暗闇のとき、夜の庇護の中で私はのんびりしていよう。」とはじまる。「綿花畑で、黒人たちが甘く低く歌う。主よ、ミシシッピの濁流が流れる場所で、あなたが私を見つけてくれて幸運です。」と続くのだが、ここでは「ダーキー Darkie」という表現が「黒人」の意味で使われている。かなり差別的な表現なのでまあ日常会話では絶対に使用しない方がよいだろう。それでも歌詞が描写するミシシッピ川の光景が長閑で牧歌的な様相をもたらしている。

録音

Lizzie Miles (New Orleans, 1954)
Lizzie Miles (Vocal); Joe Antoine (Trumpet); Tony Costa (Clarinet); Jack Delaney (Trombone); Nina Picone (Tenor Saxophone); Sam DeKemel (Bugle); Frankie Frederico (Guitar); Freddy Neumann (Piano); Joe Loyacano (Bass); Johnny Castaing (Drums)
わたしはこの曲はわりとスロー気味の録音が好きなのだが、女性ヴォーカルでとくに好きなのは、このリジー・マイルズの録音。ニューオーリンズの永遠の歌姫。迫力満点。

George Lewis (New Orleans, April 6, 1954)
George Lewis (Clarinet); Alton Purnell (Piano); Lawrence Marrero (Banjo); Alcide Pavageau (Bass); Joe Watkins (Drums)
いくつか録音があるんだけどこれはテンポが速めの録音。大好きジョージ・ルイスの録音。アルトン・パーネルがボーカルをとっている。

Kenny Baker & Bobby Hicks (Nashville, TN, 1980)
Bobby Hicks (Fiddle); Kenny Baker (Fiddle); Allen Shelton (Banjo); Buck White (Mandolin); Benny Williams (Guitar); Roy Huskey Jr. (Bass)
ボビー・ヒックスとケニー・ベイカーの美しいフィドル・デュオ。心が洗われるような名演。泣ける。

Cathy Fink (Springfield, VA; January, 1982)
Cathy Fink (Vocals, Guitar); Michael Stein (Fiddle); Steve Abshire (Electric Guitar); Mike Auldridge (Dobro); Bryan Smith (Bass); Robbie McGruder (Drums);
キャシー・フィンクのソロ・アルバムから。ストリング・バンドの編成でかなりブルージーなブルーグラス/カントリーの録音になっている。マイク・オールドリッジのドブロがとんでもなくかっこよく、マイケル・ステインのフィドルが泣ける。

Tim Laughlin (New Orleans, 1992)
Tim Laughlin (Clarinet); Connie Jones (Cornet); Al Barthlow (Trombone); Tom Fischer (Tenor Saxophone); Hank Mackie (Acoustic Guitar); Jim Black (Bass); Hal Smith (Drums); John Royen (Piano);
ティム・ラフリンの録音。基本的にはラフリン一人の独壇場。クラリネットの音色がブルージーでアレンジもかっこいい。とても好き。

Eden Brent (Mississippi, 2006)
Eden Brent (Piano, Vocal)
ミシシッピで活動しているブルース・シンガーのエデン・ブレントの録音。すごく雄弁でかっこいい。

Barry & Holly Tashian (Nashville, 2008)
Barry Tashian (Guitar); Holly Tashian (Vocal, Guitar); Mike Compton (Mandolin); Matt Combs (Fiddle); Mike Henderson (Slide guitar); Ross Sermons (Bass); Kenny Malone (Percussion)
バリーとホリーのタシアン夫妻の録音。ベテランらしく余裕のある録音。ブルーグラス。

Bumper Jacksons (Washington DC, 2014)
Jess Eliot Myhre (Vocal, Clarinet); Dr. C. Philip Ousley(Guitar); Alex Lacquement (Bass); Brian Priebe (Trombone); Dave Hadley (Pedal steel); Dan Cohan (Drums)
ボルティモアとワシントンDCで活動しているバンパー・ジャクソンズの録音。ダイナミックがはんぱない!ソロが終わったあとの後半の高揚感とか非常に素敵。

参考文献
Lawton, Jack. (January 16, 2014). The Story Behind Darkness On The Delta. https://www.hottytoddy.com/2014/01/16/darkness-on-the-delta/


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