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Across the Alley from the Alamo

「アクロス・ザ・アレイ・フロム・ザ・アラモ Across the Alley from the Alamo」は、ジョー・グリーン(Joe Greene)が作曲したジャズ・ナンバー。戦前からある曲かと思っていたら1947年に発表された曲。ジャズだけではなく、コーラス・グループ、ウェスタン・スイングでも演奏される。またタイトルにある”the Alamo”とはテキサス州サン・アントニオのアラモ伝道所のこと。タイトルを日本語にするとそのまま「アラモの路地向かい」となる。

陽気なメロディと悲しい歌詞の対比

親しみやすいメロディが特徴的な曲の一方で、歌詞は少しエキセントリックかつ物悲しい。前半のAメロは、アラモの路地向かいにいるネイティブアメリカンの人物が通り過ぎる人に歌いかけたり、飼っているポニーがハエを飛ばしたりと牧歌的に描かれる。だが、Bメロで、二人は線路の上を歩いて、散歩に出掛けてしまい、もう戻ってはこなかった。つまり、二人は、列車に轢かれてしまったのだ。最後のA’では、ポニーと遊んだハエが、いつかのナバホ族の人とポニーがしたように、通行人に歌いかけるのだった、ということが描かれる。ここが一番もの悲しい。

夢から着想を得た曲

夢で見た光景や夢で聴いたメロディを曲にするという逸話をたびたび耳にすることがある。たとえばポール・マッカートニー作曲のイエスタデイがそうだ。この曲もそうで、ジョー・グリーンが夢で見た光景がもとになっている。

当時ジョー・グリーンはナット・キング・コールに曲を書くために悩んでいた。しかも不幸が重なり骨折してしまう。夜中に目が覚めて、半分起きてるのか、寝ているのかわからないような状況の中で突然目の前にアラモ伝道所の前にネイティブアメリカンがいる光景が現れた。連れ合いを起こして、いま見た光景をもとに曲をスラスラと20分で書いてしまったらしい。

さらに、この曲はメル・トーメがまずデモとして吹き込む。そのあとミルズ・ブラザーズが録音することになり、録音前に10分程度でヴァースを書き足してしまったらしい。すごい速書きの人だ…。

サン・アントニオのアラモ伝道所。余談だが、ジョー・グリーンは一度もサン・アントニオに住んだことがなく、ワシントン州スポーカン出身で当時は西海岸に住んでいた。にもかかわらず、これだけリアルな光景を見せてくれるのだから、強烈な夢だったのだろう。

録音

冒頭で述べたようにジャズだけではなく、ウェスタン・スイングでも録音される。おそらくだが、アラモ伝道所がモチーフとなっているからだろう。少しだけ録音を挙げておく。
Mills Brothers (Los Angeles, California, 1947)
Herbert Mills (Vocal); Harry Mills (Vocal); Donald Mills (Vocal); Norman Brown (Guitar)
大好きミルズ・ブラザーズ。ノーマン・ブラウンのギターもスイングしていてかっこいいですな。バーバーショップ・コーラスの流れを組むグループで、ハーモニーも絶品ですね。

Bob Wills and his Text Playboys (San Francisco, California, August, 18, 1947)
Bob Wills (Fiddle, Comment); Tommy Duncan (Vocal); Millard Kelso (Piano); Lester Barnard (Electric Guitar); Johnny Cuviello (Drums); Billy Jack Wills or Luke Wills (Bass)
ウェスタン・スイングではもっとも早い録音。ダンカンの歌も牧歌的にいいし、ボブ・ウィルズの掛け声も素敵。もしかしたらフィドルはボブ・ウィルズじゃなくてジョー・ホリーかもしれない。ちょっと哀愁があって好き。

The Quebe Sisters (Hendersonville, Tennessee, November 2006)
Joey McKenzie (Guitar, Arrangement); Drew Phelps (Bass); Grace Quebe (Fiddle, Vocals); Hulda Quebe (Fiddle, Vocals); Sophia Quebe (Fiddle, Vocals)
これも素敵なウェスタン・スイングの録音。クエビー・シスターズの録音。3人のフィドラーがボズウェル・シスターズみたいなコーラスもして、ジャンゴ・スタイルから影響受けたギターとスインギンなベースが鳴っていて最高。とっても好きな録音。

ほかにもエラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)の録音もスタン・ケントン(Stan Kenton)の録音も素敵。ケントンの録音はもっと豪華なスイング。Asleep at the Wheelはボブ・ウィルズのマナーに沿ったウェスタン・スイングを録音している。これもよきよき。

参考文献

Buttsy (2014-04-01). "Almost Remembering the Alamo". Retrieved 2024-1-13

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