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The Dixieland Band

「ディキシーランド・バンド 」は1935年にバーニー・ハニゲンBernie Hanighenが作曲し、ジョニー・マーサー Johnny Mercerが作詞したポピュラー・ソング。そこまで録音が多いわけではないが、明るいメロディが特徴的。とくにシカゴ・スタルのジャズにおいてしばしば演奏されている。

物語仕立ての歌詞

ジョニー・マーサーの歌詞らしく南部のジャズやラグタイムに言及している曲で、物語のようになっている。「ディキシーランドのバンドの話を聞いたことがあるかい?」とはじまり、このバンドには「ピアノとクラリネット」がいる。だが、「2番目のコルネットが必要で」「これがディキシーランド・バンドの破滅につながった」。ここで歌われるのは、そうした悲劇的な結末を迎えるバンドだ。

このバンドが「メイプル・リーフ・ラグを演奏しているとき」「とてもスウィングするんだけど、トランペットがもたってしまう」。「いい演奏をするから首にはしたくない。だからもたらないように「ディキシーランド・バンドのリズムを刻む者」が必要になった。

しかしある土曜日の夜、バンドが演奏していたらそのトランペット奏者が「コードから外れた音を」出してしまった。あまりに酷い演奏だったからバンドメンバーは死んでしまった。

天国にいる彼らはやっと幸せな気分になった。なぜならガブリエルと名乗る本当に吹けるトランペット奏者を見つけたからだった。

「最後の審判」の日も恐れることはないんだ!ガブリエルさんがAの音を吹いてるだけだから。

大天使ガブリエル

さて、バンドメンバーが天国で出会ったガブリエル。英語ではゲイブリエルと呼ばれることの方が多いだろう。このガブリエルはキリスト教の大天使ガブリエルを指している。

ガブリエルは、キリスト教では一般的に人々に神のことばを伝える大天使である。もっとも有名なのは『ルカによる福音書』1.26 - 39 にあるような「受胎告知 Annunciation」であるだろう。『黙示録』においてヨハネに対し神の言葉を告げるのもこのガブリエルであるとされている。そんなガブリエルは「最後の審判」のときにホーンを鳴らし、死者を甦らせる役割を担っている。だからこそ歌詞のなかでガブリエルはトランペット奏者として登場している。

レオナルド・ダ・ヴィンチ (製作年 1472年 - 1475年頃)。ガブリエル(左)がキリスト受胎を告げるために聖母マリア(右)のもとを訪れた場面が描かれている。

ちなみにガブリエルはしばしば楽曲のモチーフになっている。エンニオ・モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」やジャズ・ナンバー「アイ・ホープ・ガブリエル・ライクス・マイ・ミュージックI Hope Gabriel Likes My Music」などが有名である。

録音

Benny Goodman and His Orchestra (NYC, January 15, 1935)
Benny Goodman (Director, Clarinet); Pee Wee Erwin (Trumpet); Ralph Muzillo (Trumpet); Jerry Neary (Trumpet); Jack Lacey (Trombone); Red Ballard (Trombone); Hymie Schertzer (Saxophone); Toots Mondello (Saxophone); Dick Clark (Saxophone); Adrian Rollini (Saxophone); Frank Froeba (Piano); George Van Eps (Guitar); Harry Goodman (String Bass); Gene Krupa (Drums)
記念すべき初録音。ニューヨークのスウィングの花形というべき演奏で非常にかっこいい!

Kay Star with Novelty Orchestra (Hollywood, CA, May 1945)
Kay Starr(Vocal); Joe Venuti (Violin); Tommy Todd (Piano); Les Paul (Guitar); Cal Gooden (Guitar); Clint Nordquist (Bass)
トランペットが登場する歌詞だがこれにはトランペットが入っていない。それでもとても良い録音。楽しく明るい。

John Sheridan (Bradenton, Florida, January 19-20, 2002)
John Sheridan (Piano); Rebecca Kilgore (Vocals); Randy Reinhart (Cornet, Trumpet, Trombone); Ron Hockett (Clarinet, Alto Saxophone); Brian Ogilvie (Tenor Saxophone, Alto Saxophone); Dan Barrett (Trombone, Cornet); Reuben Ristrom (Guitar); Phil Flanigan (Bass); Ed Metz Jr. (Drums)
レベッカ・キルゴアが歌ったジョン・シェリダンの録音。やはりシカゴ・スタイル大御所たちが集まっており、アレンジもソロもかっこいい!


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